『沓掛時次郎・遊侠一匹』(5/22〜25)
ラピュタ阿佐ヶ谷
「錦之助映画祭り」(3/24〜5/25)で上映
時代劇全盛時代の終焉が間近く、任侠路線が始まろうとしていた1966年(『人生劇場 新・飛車角』が作られた)の股旅映画 『沓掛時次郎・遊侠一匹』。任侠路線に反発、既に東映を去ることを決めていた錦ちゃんが扮した“沓掛時次郎”が言う。
「あっしは旅にんでござんす。一宿一飯の恩があるので、恨みもつらみもねぇお前さんに敵対する信州沓掛の時次郎というくだらねぇ者でござんす」。
共に東映時代劇を支えあった東千代之介の敵対する相手(六ツ田の三蔵)に、この長谷川伸屈指の名セリフを発するときの錦ちゃんの心情は、どのようなものであっただろうか。彼自身の青春のすべてであった東映時代劇の黄昏、そこを去る哀しみを思うと泣けてくる。
『沓掛時次郎』は数えきれないほど舞台化、映像化されていて、映画では大河内傳次郎、島田正吾、林長二郎(後の長谷川一夫)、市川雷蔵らが時次郎を演じている。それぞれの良さはあるだろうが、団塊の世代にとってのそれは中村錦之助に尽きる。『瞼の母』の忠太郎、『関の弥太ッぺ』の弥太郎もしかりだ。おきぬに扮した池内淳子の美しさ儚さは比類ない。