
いるだけで、その場が明るくなる。言葉を交わすだけで、心が弾む。そうした力を“華”と呼ぶなら、佐野勇斗には“天性の華”がある。
連続ドラマへの立て続けの出演や、映画公開が控えるなど、俳優として躍進中の佐野。6月27日に最終回を迎える日曜劇場『ドラゴン桜』(TBS系、毎週日曜よる9時)ではキーパーソンとなる米山圭太役を演じ、確かな爪痕を残している。
佐野自身も高3のときに大学受験に挑戦したひとり。受験のときに勉強を頑張れたから今も頑張れている。そう語る佐野は、孤独な受験戦争をどんなふうに過ごしたのだろうか。

── 『ドラゴン桜』もついに最終回です。
昨日撮影したのが、大人たちが一堂に会して話し合うシーンで。僕ももうこの仕事を始めて7年になるので、そんなに人に対して緊張することとかほぼないんですけど、久しぶりにめちゃくちゃ緊張しました! 緊張しすぎて、すっと台詞が出てこなくて。これだけ錚々たるメンバーの中でお芝居をさせてもらえることは、きっと今後の財産になるだろうなと思いながら撮影していましたね。
── やっぱりあれだけキャリアのある先輩たちが並ぶと空気が違いますか?
昨日は台本20ページくらいある重めのシーンで、長台詞も多いから、みなさん集中されてるんですよ。もちろん僕も集中してやっていますけど、僕と阿部(寛)さんは台詞が少なかったので、他のみなさんの台詞を覚えなきゃという感じとはまた違って。そしたら阿部さんが「台詞ないと、しんどいよな」と話しかけてくれて。阿部さんでもしんどいと思うなら、俺がしんどいと思うのは当たり前かって、ちょっと気持ちが楽になりました(笑)。
── 他の人の長台詞の間に自分の台詞がぽんっと一言だけ入るのも緊張しますよね。
でも、長台詞があるよりは、俺はちょっとの方がまだ気が楽です(笑)。最終回は米山もすごい長台詞があるんで、撮影はこれからなんですけど、今から緊張しますね。
── 2年前に受験に失敗し、阿部さん演じる桜木の前で自殺未遂を図った米山。降りしきる雨の中、ナイフを首に当てる場面は迫真の表情でした。
実はあのシーンはライブの後に撮ったんですよ。それもあって、体力的にも大変だったので、かえってそれが良かったのかもしれない。しかも本当は雨のシーンでもなかったんです。
── そうなんですか?
僕、めちゃくちゃ雨男で。その日も大事なシーンなのにすごい雨で。監督がこのままいこうということで撮影することになって。実際に雨に濡れてほしいということを言われて、ドライからずっと雨の中で立ってたんですけど。
── 大変そう!
でも本当に死にたいときは雨なんて気にしないだろうしなと。スタッフさんから「もう中に入っていいよ」と声をかけてもらったんですけど、自分からもうちょっと外にいたいですって言って、ずっと外にいました。

── じゃあ、その雨が米山の気持ちをつくる上で役に立った部分も?
相当ありましたね。手の震えとかも、芝居とかじゃなく、リアルだったんで。時期的にも4月で、まだすごい寒かったんで、雨にも助けてもらいながらやりましたね。
── 桜木を逆恨みする米山の心情は理解できましたか?
いや、わかんないです(笑)。「そんな先生に恨み持つ?」とも思うし。必死に理解しようとはしますけど、正直わからないところもあって。難しいですよね、役者って。
── その後も、IT企業社長の坂本に近づいて、何やら不穏な動きを見せています。
最終回で米山がどう出るかを見どころのひとつとして楽しんでもらえたらうれしいですね。はじめにプロットをもらって、それを読んだ上でいろいろお芝居を組み立てているので、最後まで見たあとでまた改めてこれまでの米山に注目してもらったら面白いのかなと。
── 坂本役を演じるのは、同じ事務所の先輩の林遣都さんです。
坂本と一緒の出番が、毎話、最後の1シーンぐらいだったので。林さんとは実はまだそんなにお会いしていないんですよ。9話10話とシーンが増えてきて、そこからやっといろいろお喋りさせてもらうようになったという感じで。プライベートの話をしたり、事務所の話をしたり、仲良くさせてもらっています。
── 近くで見る林さんのお芝居はいかがですか。
やっぱりお芝居がうまいですよね。坂本は米山と同じ立場なので、キャラクターは違うにしろ、ここではどういう感じでやるんだろうというのをつい見ちゃうんですけど。林さんはその手があったかという表情だったりリアクションを毎回出してくるから、ついご本人にも「すごいですね」って毎回言っちゃってます(笑)。
僕は顔つきあんまり悪っぽくないのもあって、いかにも怪しいじゃんコイツっていう表情になりがちなんですけど。林さんは爽やかなんだけど裏で何かありそうみたいな顔がすごくうまくて。めっちゃ勉強になります。
いつか『海猿』や『ROOKIES』もやってみたい!


── 受験組の生徒たちとはほとんど絡みはないですよね。
そうですね。(髙橋)海人とは前から仲が良いので別ですけど、他のみなさんは一昨日の撮影が初めましてでした。今のところ「初めまして」以外の言葉は交わしていないです(笑)。
── ちょっと前までは制服を着た作品が多いですけど、少しずつ大人の役柄が増えてきました。もう制服を着ることはなさそうですか?
いや、着ますよ? 無理かな? 自分で言うのもあれですけど、まだいけると思うんですよ。
── これは個人的な願望ですが、佐野さん主演で『WATER BOYS』が観たいってずっと前から思っています(笑)。
ははは。なんでですか?
── 似合うから。
本当ですか?
── 佐野さんが制服を着られるうちに、どこかで企画してほしいなと。
やりたいですね、ああいうの。『WATER BOYS』とか『ROOKIES』とか。今回の『ドラゴン桜』もそうですけど、個人的に好きで観ていたので、チャンスがあるならやりたいですね。
── 他にやってみたい作品はありますか?
『海猿』がやりたいです! 昔からやりたくて。
── 『海猿』のどういうところが好きなんですか?
何が好きなんだろう。なんか男臭い感じですかね。昔から『海猿』とか『ROOKIES』に出たいっていう気持ちがすごくあって。恋愛とかじゃなくて男!っていう感じの作品が大好きなんですよ。
オススメの暗記術は、1回寝ること


── 『ドラゴン桜』は受験がテーマですが、佐野さんは勉強は得意でしたか?
小中は勉強ができたんですよ。学年でもずっと10番以内とかで。だから、高校もまあまあいいところに入ったんですけど、高校1年のクラスメイトと一緒にいるのがすごい楽しくて、ちょっと遊んじゃって。勉強は一旦いいやってなっちゃったんですよね。
── 佐野さんの勉強術が聞きたいです。
僕の勉強はもう暗記ですね。暗記は結構得意なんですよ。数学も公式も暗記するだけだし。暗記ってコツがあるんですよ。
── 教えてください!
これは役者の仕事をやるようになって身につけたんですけど、台本ってただ読んでも覚えられないんですね。1回寝かせるのが大事で。1回読んで、ちょっと寝て、もう1回起きてまた読むといちばん定着するんですって、脳的に。東大生とかもそうやって勉強しているらしくて。だから、台本を覚えるのにはそんなに時間がかからないんですよ。
── じゃあ、受験当時もそんなふうに勉強を?
それが受験のときはまだこの方法を知らなくて、そのときからこの方法を知ってたらな〜!って(笑)。当時はひたすらつめこんでやっていました。
あ、でも前作の『ドラゴン桜』を観ていたんで、動きながら勉強するっていうのは小中の頃からやってました。歩きながら覚えると、血流が良くなるのか集中力が上がるみたいで。部屋の中でよく歩きながら暗記をやっていました。
── では、得意科目は?
数学です。
── 暗記ものじゃないんですね。苦手なのは?
社会。
── めっちゃ暗記ものじゃないですか(笑)。
そう(笑)。だから矛盾はしているんですけど。数学は解けたら楽しいところが好きで。だから理系に進んだんですけど、物理とかは嫌いでしたね。

結果はどうであれ、頑張りぬいた自信が力になる


── 受験は楽しかったですか。
いやいやいや。こんなしんどいことはない(笑)。あれは人生で1番2番に頑張っていたなあって今でも思いますね。逆に受験があったから今も頑張れているというか。
── 個人的な話ですけど、AO入試だったのでセンター試験を受けたことがなくて。受けてみたかったなあと思っています。
うわ〜、その発言は受験生に怒られますよ(笑)。センター試験なんてもう一生受けたくない!
── 一生受けたくない(笑)。
僕もそもそもAOで大学に行くつもりだったんですよ。だから、高2まで勉強してなかったんですけど(笑)。東京の大学に行きたかったのに、通っていた高校が田舎すぎたのか、受けられる大学はないって言われて。それで、やべえこれはと思って高3の9月から猛勉強して。12時に寝て6時に起きるという生活だったんですけど、本当にご飯と睡眠以外の時間は1日ずっと勉強していました。なんであんなに頑張れたんだろうって今では思うんですけど。
── すごい。センター試験の当日は緊張しました?
めっちゃ緊張しました。それだけ頑張ったからこそ余計緊張がすごくて。何してたんだろうな。あんまり記憶にないですけど、お守りをめっちゃ持っていったのは覚えています。みんなからいっぱいもらって。でもその中から選抜して持っていくのも違うしなと思って、いいや、全部持ってっちゃえと(笑)。
── 初詣の絵馬に合格祈願を書いたりも?
書きました! 合格祈願で有名な神社に行って。ただ、神頼みって神様に本当にお願いするというよりは、心を落ち着かせるためにやるものなのかなって。そういう意味での効果はあったのかなと言おうと思ったんですけど、センター試験はめっちゃ失敗しましたね(笑)。
── 神様め!
神様は味方してくれなかったです(笑)。でも一般入試で受かったんですよ。最後の最後までE判定だったんで、無理に決まってるから記念受験で受けろよみたいな感じのことを言われてて。実際、他の滑り止めとかは全部落ちたんですよ。でも、第一志望だけ奇跡的に受かって。
── さすが本番に強い。
確かにすごい問題が解けるなと思った記憶はあったんですけど、まさかそこだけ受かるという。
── ぜひそんな佐野さんから受験を頑張っている方にメッセージをお願いします!
受験は確かに大変だけど、この先80歳とか90歳まで生きることを考えたら、長い人生の中でほんの1年。そこを頑張れなかったら今後の人生もずっと頑張れないよなと思うんですね。
受験はこれまでの人生の中で、自分の将来を左右するいちばんの岐路。周りとの勝負もあるけど、いちばん大事なのは自分との勝負だから。どれだけ自分に鞭打ってできるかだと思うんで、結果はどうあれ、たとえ落ちてもいいやと思えるぐらいまで頑張れた人は、これからどんなことがあってもそのときの自信が力になるはず。自分に嘘つかず頑張ればいいのかなと思います。
日曜劇場『ドラゴン桜』(TBS系)最終回は6月27日(日)よる9時放送

PART2は近日中に公開! サイン入りチェキのプレゼントもあります。お楽しみに!
撮影/須田卓馬、取材・文/横川良明、企画・構成/藤坂美樹、ヘア・メイク/中島愛貴、スタイリング/伊藤省吾