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音楽専門誌『ぴあMUSIC COMPLEX』連動企画

ライブ制作チームが語るKing Gnu初の東京ドーム公演【前編】

PMC編集部

第60回

撮影:伊藤滉祐 / KOSUKE ITO

3月31日(金)、Prime VideoにてKing Gnu初のワンマン東京ドーム公演「King Gnu Live at TOKYO DOME」(2022.11.20開催分)の独占配信がスタート。今回は、同配信に合わせ、『PMC Vol.25』に掲載したKing Gnuライブ制作チームの座談会より未公開部分も含む再編集版として2回にわたって公開する。

(後編はこちら

▼「King Gnu Live at TOKYO DOME」とは?

・King Gnu初の東京ドーム公演2DAYS
・2022年4月27日に開催を発表。この4月27日は、Srv.Vinci(サーバ・ヴィンチ)からKing Gnuに改名して初めてのミュージックビデオ「Tokyo Rendez-vous」を公開した日。そこから5年で史上最大の公演を発表。
・2022年11月19・11月20日東京ドームにて開催し、全席SOLD OUT。2日間で約10万人を動員した。
・2023年3月31日よりPrime Videoにて配信スタート
https://www.amazon.co.jp/dp/B0B8P4GJHG

・このドーム公演を経て、2023年5・6月にかけてスタジアムツアー「King Gnu Stadium Live Tour 2023 CLOSING CEREMONY」も決定

撮影:伊藤滉祐 / KOSUKE ITO

座談会に登場するのは、ドーム公演ライブ制作の永田真太郎、澤田賢人(以上、ホットスタッフプロモーション)、楽器チームの今利光、中屋怜、八木健介、足立友一、音響の圓山満司、映像チームの栗山裕次郎、下山貴弘、大橋正尚、照明の平山和裕、トランポの阿部徹。2022年11月に実施。4人だけのステージを音とビジュアルのリッチなクリエイティブにより支えたスタッフが語る「King Gnu Live at TOKYO DOME」。結成当初のエピソードまで話してくれた。

ーーKing Gnuの現場歴が一番長い、今さんはメンバーとどんな出会いを?

 ソニーの知り合いから「下北沢のANDY'S STUDIOに行ってくれ」と指令を受けたのが最初でした。スタジオにはメンバーしかいなくて、僕のミッションはメンバーがやりたい音を楽器周り含め、どうライブで形にするかということで。リハーサルを見て、メンバーのやりたいことを聞いたんですけど、今まで会ったことのないスタイルのバンドで。音楽教育を受けてるってところも違うけど、なにもかも根底から違うなって強烈な印象がありました。何か起きるかもなと思いながら……何度かリハを重ねて、最初のライブ仕事になった新宿MARZ(2017年1月)のとき「あれ、こいつらいくかもな」って思ったんですよね。その後、ハイエースで一緒にツアーを回ったりする時期があったんですけど、バンドって小さいライブハウスから徐々に大きくなっていくとかってあるけど、はっきり言ってそういうの関係なく、いけるところまでいったほうがいいって、みんなで話した記憶があります。そのときからドームなのかスタジアムなのか「日本を軽く制覇できるんじゃないか」とは思っていたかな。

ーーライブ制作を担当する永田さんは?

永田 僕はちょうど5年前の2017年ですね。「Tokyo Rendez-Vous」のミュージックビデオを観てすぐソニーさんに「ご一緒させてもらえないか」と連絡して。そのときはWWWのワンマン(2018年1月)を発表して、すでに完売していたり、すごく可能性を感じました。僕もメンバーに初めて会ったのはANDY'S STUDIOでしたが、すごくオーラがあって生意気そうな感じで、「(King Gnuのために)何やってくれる人ですか?」って聞かれたことはすごく覚えています(笑)。

阿部 基本みんな礼儀正しいんだけど、人見知りでシャイですよね。それもあってちょっと生意気に見えたりするけど、その生意気さもかっこよさにつながっていたりして。令和なんだけど昭和のロックスターの雰囲気もあるなと思っているんですけど。

圓山 僕が音響(PA)でチームに参加したのは、2018年のWWWからなんですが、そのころはまだ危うさがある感じで、本人たちの表現もMCもヒヤヒヤでしたね。ただ、ツアーを回るようになってからかな。彼らのやりたいことが見えてきたなって思ったし、僕自身も大きなスケールが見えた感じがして。できるだけ本人たちのやりたい音を出せるように、ストイックに試行錯誤やってきた感じですね。

東京ドーム2DAYSへの道のり

常田大希(撮影:伊藤滉祐 / KOSUKE ITO)
勢喜遊(撮影:伊藤滉祐 / KOSUKE ITO)

ーードーム公演にたどり着くまで早かったと思いますが、あっという間に大きくなっていくKing Gnuをどう見ていましたか。

永田 こんなに早いとは思っていませんでしたけど、個人的にコロナがあったからドーム公演が早く実現したんじゃないかなとは思っています。2020年2月から予定していた大規模なツアーが中止となり、我々スタッフも仕事が全て止まっていた中で、11〜12月にかけて「CEREMONY」ツアーを有観客でやると彼らもソニーも決断して、そこから爆発していった印象があって。

ーーライブに対する思いが強くなった?

澤田 その「CEREMONY」ツアーでは、大阪城ホールや日本武道館、幕張メッセを含む9公演という規模感というのもあったし、2度目の緊急事態宣言が出る前にファイナルを迎えられたり、いろいろ幸運にも助けられてコロナ禍をくぐり抜けてきましたよね。全てが相乗効果となって、最終的に東京ドームにつながったのかなと。

平山 2020年の12月に幕張メッセをキャパ半分でやったときかな(当時の新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドラインに沿って開催)。ステージから間引かれた座席を見たときに、「でっかい会場を有観客のフルキャパで埋める!」っていう思いが、メンバーだけでなくスタッフ含め強くなった。大きくジャンプするために、一度、ちゃんとしゃがめて、そのおかげでポンッと上にあがれたことは大きいんじゃないかな。

ーー改めて気合いが入ったというか。

平山 4人が何より真面目なんでね。音楽に対しても、自分たちが舞台に立つということに対しても、お客に対しても真面目。そこまで全部に対して真面目なのってあまり見たことがないけど。だからといって、しばられるわけではなく、自由さと真面目さがいい具合で共存しているって、そこも跳ねる大きな要因になっていると思います。

ーー会場の規模感ですとか、劇的な進化を感じるのってどんなときですか。

阿部 僕は、2019年の「Sympa」ツアーから、基本的に楽器・機材などの郵送周りのトランスポートを担当しているんですけど、今さんがメンバーと一緒に回っていたハイエース1台では、いよいよこと足りなくなったというので、自分が担当することになりました。

ーーあの赤くペイントされたトラックですか。

阿部 そうですね。最初は小さい2トントラック1台だったんですけど、その夏のフェスに出演するってときに、永田さんが「看板入れようぜ」と。いろんな現場で「2トン車に赤い看板入れるってすごいね」と広まり、どこの現場に行っても、King Gnuの阿部さんだと言われるようになりました。

ーー「SUMMER SONIC 2022」のマリンステージの現場にも乗り入れていて、めだっていましたよ。

阿部 全ては永田さんの策略ですね(笑)。

永田 すみません。ガンガン行きたくて。

阿部 東京ドームなんて、全セクション入れると100台超えの大型車を使っているから、本当、すごいペースで成長しているので素晴らしいなと思います。ハイエース1台からの進化を考えると大変なことですよね。

東京ドーム全体に一体感を!

撮影:伊藤滉祐 / KOSUKE ITO
撮影:伊藤滉祐 / KOSUKE ITO

ーードーム公演に向けてメンバーはどんなライブにしたいと言っていましたか。

平山 照明に関しては「ストイックにしたい」と言っていましたね。とはいえ、King Gnuはど派手なのも好きだから、文字通りのストイックにはならないわけで(笑)。どこを望んでいるのかを判断するのか難しいんですよ。今回、ライブ全体の演出にOSRIN(PERIMETRON)が入って、新しいアイデアが突然湧いて出てきたりするので、それに対応するというのも大きいファクトでしたね。ステージセットのビル群も、もともと単色を予定していて、照明の色で染めようという話だったんですけど、ビルにペイントすることになって(*1)。ビルが濃い色だと照明では染まらないから薄めの色にしていたんですけど、あれだけ汚されて出てきて(笑)、「これは照明で染まるのか!?」っていうのは一番ドキドキしたところでした。

――ビルにエイジング加工が施されていましたね。普通は決定したものを作り上げるというイメージかと思いますが、やってみてそこから進化させていくわけですよね。

平山 そうですね。何がきても対応できるようにするというか。床を汚して、タイヤのあとをつけたのもドームの現場でしたよね。

ーーステージの巨大なビル群に加え、両サイドにそびえ立つLEDには驚かされました。

下山 メンバー的には、東京ドーム全体として一体感を持たせて、誰一人として置いてけぼりにしない、すべてのお客さんにちゃんと観せたいという思いが明らかにありました。LEDの大きさは映像チームでも話をして、すごくいいねと。ただ、通常、ライブのサービス映像ってメンバーの顔を見せることがメインなんですけど、あれだけ画面が大きいと観る場所によって感じ方も変わるから、前方も後方も均等に楽しめるいいラインというのは意識していました。

撮影:伊藤滉祐 / KOSUKE ITO

ーードーム2日目、メンバーがカメラを覗き込むシーンも多く、楽しかったです。

下山 今回、OSRINのアイデアで、カメラ台数も普段より圧倒的に多かったんですね。それで、カメラがメンバーの近くまで肉薄できたんです。メンバーは優しくて、ファンに対する思いも実はすごく強いから、カメラが近づいてくるとしっかりアピールしてくれて、すごくうれしかったですね。それでカメラも余計にガンガン攻めてしまうという。

大橋 本番前に「このカメラ、どセンターにいるんで」と本人たちに伝えたんですけど。和輝(B/新井和輝)くんから「カメラアピールどうやってやればいいですか」って。今回はじめて意見をもらって、低い位置のカメラに、めちゃくちゃしゃがんでアピールしてくれて。それだけステージから離れたお客さんにもアピールしたいという気持ちが強かったんだなと。

撮影:伊藤滉祐 / KOSUKE ITO

ーーアブストラクトな映像やアニメーションもはさんだり、世界観も伝わる映像もありましたが、「白日」ではモノクロの映像で、その色が普通の白黒じゃない、ニュアンスがあるモノクロというのにびっくりして。

大橋 あれは、古いブラウン管モニターをソニーCPLさんからお借りして。リアルタイムで撮っているステージ映像をブラウン管に映し出し、そのモニターをカメラで撮ることでアナログ感を出しているんです。そこから映像をとりまとめている栗山さんのほうに送るという。LEDにはリアルタイムで映し出すので、ディレイがなるべくでないように調整したりして……。

ーーものすごい手間。半端ないですね。サービスカメラと演出映像のすべてを栗山さんがまとめて、流すタイミングを調整するという流れ?

栗山 そうですね。緊張感がハンパなかったですね。演出映像も上がってくるのがライブ直前で。オープニング映像は当日の朝でした。

ーーそれはしびれるスケジュールですが、対応できるんですね。

栗山 やらなきゃいけないみたいなところはありますよね。ライブを良くしたい思いがあって、妥協せずに映像を出すために、こちらも対応できる準備はしているんですが、それでも予想外のことが起きるという。実際、2日目のエンドロールは予想外で。

下山 初日のライブでラスト「サマーレイン・ダイバー」の演奏をOSRINが観ながら、生のライブシーンにエンドロールを乗せて、スタッフのクレジットを入れることで感謝を示したいという。そういう熱い思いがベースにあるんで、がんばって栗山さんも動いていたんだと思います。

撮影:伊藤滉祐 / KOSUKE ITO

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スタッフ証言もお届け

▼小池考史(BLAZE /特殊効果、スモーク、炎の演出全般を担当)の証言
飛行艇の爆発では液体窒素を1公演240L使用しております。自身の経験上でも過去最大量でして、今回記録更新させていただきました。東京ドームはエアードームのため構造上の理由で室内の風の動きが外気温にかなり影響されます。さらに5万人のお客さんの体温が重複しますと猛烈な対流が発生するため常に風の流れを監視してスモーク操作をしています。今回は1日目と2日目が気温差があったため苦労しました。特効の炎は視覚的な演出以外に炎本来の熱量をオーディエンスに届けることができます。本番では「Stardom」の楽曲が持つ熱気と迫力とドーム公演ならではの炎の熱量が融合していました。

▼伊藤英一(舞台美術・大道具)の証言
東京ドームでの建物のオブジェ製作は、都内近郊の大道具の工場各社は、みなKing Gnuの建物の一部を造って期日までに送り出す作業でフル稼働でした。音楽、ファッション、アートはもちろん、裏方の町工場までKing Gnuの群れに巻き込み、猛烈に突進していました。大道具、美術は贅沢もので、優先順位最下位でいいと感じていますが、それをもバンドの表現としてくれているスタイルがありがたいです。伊藤の造り出したオブジェや建造物はどうしても表情が変わらない物体になりますが、各セクションの技で表情を変えてもらえる楽しさ・うれしさがあり、たまらなく心地よいです。東京ドームはメンバーの表情の見える大画面で、まるで演奏しているメンバーのすぐそばにいるようでした。その都度、表情を変える光と背景のオブジェは、シミュレーションと想像と各々の技の賜物です。現代に求められるライブのあり方なんだなと感じました。

▼松本千広 (ステージデザイン)
ステージデザインを担当しました。とにかくでかくて、めちゃくちゃかっこよくて、あったかいものを作りたいってことを真剣にやりました。Gnuなりの東京というか。その大きさにかなり頭を使いました。それに対して必要な絵は人間の手先ほど繊細なことも必要だし、逆に本当に巨人が書いたような大味な絵も雑とも言えるような大胆な塗りつぶしも必要で、そのギャップを自分自身でどうバランスとっていくか。一緒に描いてくれたリュースケもすごく悩んだんじゃないかなって思います。画面サイズいっぱいに映るメンバーの後ろには常にそれが映るものであって、最初はびびってたかも。結果、勇気の問題なところはありました。すてきなライブでした。一体感もすごかった。相当な日数、余韻が残ったライブです。

(後編はこちら

King Gnu Live at TOKYO DOME

2022.11.19 20 東京ドーム

SET LIST

01. 一途
02. 飛行艇
03. Sorrows
04. 千両役者
05. BOY
06. カメレオン
07. Hitman
08. The hole
09. NIGHT POOL
10. It’s a small world
11. 白日
12. 雨燦々
-幕間-
13. Slumberland
14. どろん
15. 破裂
16. Prayer X
17. Vinyl
18. Flash!!!
19. 逆夢
20. Stardom
ENCORE
21. McDonald Romance
22. Teenager Forever
23. Tokyo Rendez-vous
24. サマーレイン・ダイバー

CD info.
「Stardom」

11.30 release/(CD+Blu-ray)¥5,500、(CD)¥1,100/Ariola Japan

King Gnu「Stardom」

「King Gnu Stadium Live Tour 2023 CLOSING CEREMONY」

5月20日(土) 大阪・ヤンマースタジアム長居
5月21日(日) 大阪・ヤンマースタジアム長居
6月3日(土) 横浜・日産スタジアム
6月4日(日) 横浜・日産スタジアム
チケット申し込み詳細
https://clubgnu.com/closingceremony/