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音楽専門誌『ぴあMUSIC COMPLEX』連動企画

THE YELLOW MONKEY、1.5万字超えのインタビューを掲載。“復活ののろし”となるアルバム『Sparkle X』を語る【前編】

PMC編集部

第165回

4月27日東京ドーム「THE YELLOW MONKEY SUPER BIG EGG 2024 "SHINE ON"」 撮影:横山マサト

5月29日にリリースしたTHE YELLOW MONKEY10枚目のオリジナルアルバム『Sparkle X』。同作のLISTENING PARTYが、5月10日東京都内にて開催された。同日行われたメディアの合同取材に登壇した吉井和哉(Vo)、菊地英昭(G)、廣瀬洋一(B)、菊地英二(Dr)の4人。ラジオDJの落合健太郎を聞き手に行われたインタビューを1.5万字超えで掲載する。前編は東京ドーム公演のライブにはじまり、アルバム『Sparkle X』の各楽曲についての制作ストーリーを届ける。

後編:メディアによるQ&Aはこちら

なお、現在好評発売中の『ぴあMUSIC COMPLEX(PMC)Vol.32』では、「THE YELLOW MONKEY SUPER BIG EGG 2024 "SHINE ON"」(4.27東京・東京ドーム)のライブレポートを掲載中。そちらもぜひチェックを!

10枚目のオリジナルアルバム『Sparkle X』合同取材

――まず、4月27日に東京ドームで開催された「THE YELLOW MONKEY SUPER BIG EGG 2024 "SHINE ON"」の話から伺えますか。

HEESEY(廣瀬) メディアでもたくさんネタになっていましたが、ライブ前日、本当に寝られなくて。寝ずにやったライブだったことも含め、本当に思い出に残りましたし、THE YELLOW MONKEYの歴史の1ページに刻まれるようなライブになってよかったなと思っております。

吉井 なんかあれでしょ? HEESEYは終わったあとも興奮して、のべ40時間くらい寝てないとか。何時に寝たの?

HEESEY 夜中の3時とか?

EMMA(菊地英昭) 5時って言ってなかった?

HEESEY いやいや、まあ、変なスイッチが入りましたね。

4月27日東京ドーム「THE YELLOW MONKEY SUPER BIG EGG 2024 "SHINE ON"」

――吉井さんも東京ドーム公演では「アドレナリンが出たー!」とおっしゃっていました。

吉井 自分は、病気後初のフルステージで、しかも、いきなり東京ドームというのは、正直、プレッシャーも不安もすごくありました。でも、ステージ袖にスタンバった時点で、「ここでひるんでてもしょうがない」とスイッチが入りました。どこまで声が持つかはわからなかったですが、なんとか完走できました。課題はたくさん残りつつも、そういう切羽詰まった状態というのは、ロックには必要なんだなと。HEESEYの睡眠不足もそうだけど。

HEESEY 確かに(笑)。

吉井 これからはね、どんどん切羽詰まった人生になっていくと思うし、いい勉強になりました。

4月27日東京ドーム「THE YELLOW MONKEY SUPER BIG EGG 2024 "SHINE ON"」上から吉井和哉(Vo)、廣瀬洋一(B)

ANNIE(菊地英二) HEESEYもLOVIN(吉井)もいろんな状況で切羽詰まっていたかと思いますが、僕自身は、今回の東京ドームが今までで1番楽しめたんですよね。LOVINの声以外、バンド的には全く不安要素がなかったし、こういうドーム公演は初めてかなと。僕らは東京ドームでのライブは5回やらせていただいているんですね。他にアリーナとか球場でもライブの経験はありますけど、自分たちのカラーに染めることができていたという自負があるんですよ。ただ、東京ドームだけは、自分たちの色に染められなかったと思っている場所で。でも、今回は、2階席の奥まで、ちゃんとTHE YELLOW MONKEYのエネルギーで満たすことができた感覚がありました。東京ドームという会場を自分たちの音・エネルギーで埋め尽くことができたような感じがしています。それは、バンド冥利に尽きるというか。すごく充実した東京ドームでした。

EMMA 僕は、過去一、お客さんと一体になれた東京ドームだったなと思っていて。LOVINの喉のこともあったから、守ってくれている感じがすごくあって。「一緒に楽しもう」というオーディエンスの気持ちがすごく伝わってきた。それが1番でした。

吉井 願いとか祈りのパワーをすごく感じましたね。そういうの力ってやっぱりあるんだね。

4月27日東京ドーム「THE YELLOW MONKEY SUPER BIG EGG 2024 "SHINE ON"」上から菊地英二(Dr)、菊地英昭(G)

――ライブがはじまる前にカウントダウンの数字がスクリーンに映し出され、1分前、30秒前くらいから、お客さんの声がうわーっと上がっていく。その後、吉井さんからこの数年間を振り返るようなMCがありました。そして、「バラ色の日々」が、東京ドームに集まっていたお客さんの歌声からはじまるという。そのオーディエンスの大合唱は、メンバーのみなさんにどのように届いていましたか。

EMMA いや、もう……イヤモニは、のっけから外していましたよね。それは聴かないと、はじめられないなと思って。すごかったです、やっぱり。

HEESEY あの声を聴いて、本当のスイッチが入ったというか。「もうこれ、絶対いいライブになるな」というのを、そこで確信したというか。

吉井 確かに僕から見ても、ほかの3人がキレキレでしたね。HEESEYは毎回寝ないほうがいいんじゃない?

ANNIE それ、すごく思いました。

HEESEY 験担ぎでね……いやいや(笑)。

吉井 ANNIEのドラムソロもすごくよかったですね。そういう今までやったことがないことも、いい緊張感になったと思います。

▼2020年11月3日に開催された東京ドーム公演では、コロナ禍のコンサートにおける収容人数や歓声の制限があり、「バラ色の日々」の歌声・歓声は、事前に「Sing Loud!」企画でファンから送られた音声を使用した

――東京ドーム公演では、ニューアルバム『Sparkle X』からの曲も披露していました。このアルバムは10枚目の作品となりますが、まずタイトルの『Sparkle X』について伺わせてください。

10枚目のアルバム『Sparkle X』初回生産限定盤

吉井 まず、今回のアルバムは、一つの目標として、東京ドーム公演というのがありまして。ドーム公演のタイトルに、「SHINE ON」というワードがすでについていたので、そこと連動していた部分があります。「もう1回輝こう」というキーワードがあるなかで、「輝くといえば?」みたいな。あまりひねりはないですけど、<Sparkle>とか、そういうワードが出てきたりしていました。そして、Xには、10のほかに未確認・未知のという意味があって。これから我々は、また未知のものに向かって進んでいくということで、なんかいいなと。

▼「SHINE ON」Teaser

――1曲目「SHINE ON」は、本当にロックンロールのアルバムの幕開けのようなスタートですね。

吉井 古くさいですよね?

――このサウンドが、今、逆に新しく響くなと思います。

吉井 オチケン(落合健太郎)は若いアーティストの曲をたくさん聴く仕事をしているから。「今これ!?」って思ったでしょ?

――いやいや。これができるのは、THE YELLOW MONKEYしかいないと思いながら聴いていました。正直、かっこいいと思いました。

吉井 <ぐでんぐでん>ですよ?

――歌詞にね、そう出てきますけど(笑)。歌詞の中に、<Sparkle>とか<イエロー>と<猿>などのワードが散りばめられていますね。

吉井 <肌はイエロー 志はブラック>という歌詞は、最初に思いついたとき、日本人という意味で<肌はイエロー ちょんまげはブラック>でしたが、さすがに笑いをとってどうすんだとやめてよかったです。

ANNIE よかったです。

吉井 大人になりました。

ANNIE なかなかロックのアルバムにちょんまげって出てこないですからね。

――あえて<イエロー>とか<猿>などの言葉を入れたのは、10枚目のアルバムであるということもありましたか。

吉井 そうですね……今までやっていそうでやっていないベタなロックンロールを「あえて」やってみようかなというのはあって。それは、僕が声を出せない状態が結構長く続いたこともあって。その中で、東京ドーム公演の日程はすでに決まっていて、ドームに紐づいたアルバムのリリースをすることも決まっていて。レコーディングを中断する意識もなかったから、「この声で曲を作らなきゃ」という状態で、実験作を作っている場合じゃないぞと。得意なものしか出せないというか、ベタなロックンロールにすがった部分はあって。あとは、メンバーの演奏で華やかにしてもらえばいいかなという意識と、10枚目ということももちろんありました。

――演奏面では、どの曲もそうですが、すごく楽しそうに演奏されていますね。音が跳ねているというか。「これだよな」という感じがありました。

ANNIE 跳ねてるのわかります? やっぱりTHE YELLOW MONKEYって跳ねだなって最近すごく思っているんです。例えば、2000年代当初、デジタルの音楽が出てきたときで、THE YELLOW MONKEYもそういう方向を考えた時期があったんですけど、今、完全に開き直っていて。自分たちのグルーブってやっぱり跳ねだよねというところに帰着していて。16ビートみたいなことをやっても、実は跳ねているんですね。最近、SNSで流れてくるんですが、ヴァン・ヘイレンとかもスローにして聴くと、全部跳ねていて。僕たちの好きな音楽って、全部跳ねてるんだなと思ったし、一周して、「自分たちはこれなんだ」っていう、諦めもついたし、これしかできない。でもそれは、最強の武器であると認識できた。

吉井 というより、老化の跳ねも入ってきていたりして。

HEESEY 今、2人が言ったことをまとめると、2024年にドーム公演をやって出すアルバムというのが自ずとインプットされていて、その上での原点回帰みたいなところもすごくあったと思うんですね。曲調しかり、跳ねしかり。どの曲を聴いても、ありそうでなかったところがあって、新しさもあるし、新しさの中にTHE YELLOW MONKEYっぽいねというものもあって、集大成でもあるというか。そういう作品に仕上がったなって思います。

吉井 ロックって、2000年代からいろんな音楽とまざった“ミクスチャー”になって、いろんな形に変化してきましたけど、ロックのフォーマットをもう1回見つめ直したというのもありますね。我々もいろんなチャレンジをして、通過した中で、もう一度、ロックのフォーマットでやろうと。だから、今回は、メロディもわりと大きいし、ラップの要素は一切ないし、ロックの原点にかえったような気もします。

▼「ホテルニュートリノ」(Official Music Video)

――1曲目「SHINE ON」、2曲目「罠」とストレートなロックチューンが続いたあとの「ホテルニュートリノ」ですが、新しい部分で言うとスカのリズムを取り入れたりしていますね。

吉井 とはいえ、78年くらいのスペシャルズ、マッドネスあたりのスカで……新しいつもりでは全くやっていないんです。今作はむしろ「やってなかった」シリーズのほうが多い。「やっていそうで、これやってなかった」みたいなアーカイブを探したかもしれません。その中で、「ホテルニュートリノ」は新しいTHE YELLOW MONKEYの表情があって。再生回数なんかも伸びていましたし。「こういう曲好きなんだ」という参考になりました。

EMMA この曲は、アルバムを作る第1弾で、メンバーと合わせた曲だったので、「新しいステージに行ける」というスタート地点ならではの意気込みもありました。新鮮さももちろんあったし、この曲のおかげで、「ここからまた10枚目のアルバムを作るんだな」っていう気持ちにもなりました。

――「ホテルニュートリノ」を含む、アルバムの前半は最初のほうにできたんですか。

吉井 ですね。わりと作った順に近のかな?

ANNIE 若干、入れ替えているけど。

吉井 うん。でも、そういう傾向はあるかもしれない。

――「ホテルニュートリノ」では、歌詞に<人生の7割は予告編で 残りの命 数えた時に本編が始まる>とありますが、東京ドームのライブでも感じましたが、ここに吉井さんの思いが込められている気がしました。

吉井 確かに。個人的な話ですが、自分の喉の病気は、一般的に言う、生きるか死ぬかみたいな病気だったので、「いつまでも命ってあるもんじゃない」と痛感しました。それと同時に、すごく背筋が伸びて。40代を超えてくると、切羽詰まった危機感とかロックスピリッツをキープするのが難しいというか。結構、惰性でやってしまう部分もありますが、たぶん聴いてくださる人の中にも同じような状況の人もいると思うので、ここでできるロックってなんだろうと考えて。これまでは、ベタなことを真正面から歌ってこなかったんですけど、改めて本来の命とか生きることについて考えたし、必然的にいろんな曲の歌詞にそういう要素が入ってきました。だから今回歌詞についてはあまり悩まなかったです。例えば、僕は、デヴィット・ボウイが大好きですが、彼がガンになって死を宣告されてからの作品がすごくクリエイティブになったんですね。人ってそうやって余命のことを考えたときに、新しいアートができるような気がして。僕自身も、一つの作品として意味があったと思いますね。

――メンバーのみなさんは、そういう吉井さんの変化について、肌で感じたところはありましたか。

HEESEY 僕らも1番身近にいて、紆余曲折をずっとそばで見ていて、共有してたところもあります。それは作風にも出ているんじゃないかと。デモを作って、それをメンバーで共有する、その時点ですごく感じていましたから。まず、「ホテルニュートリノ」ができて、間があいて1曲きたのが「罠」で。それ以降出てくる曲がやっぱりすごく、経験に基づいたもので、彼の心情を曲から読みとったところもありました。

ANNIE 今までの感じだとね、LOVINってオブラートに包んでくるのかなと思っていたんだけど、詞ができてきたときに、こんなストレートに来るんだと思って。最初に「ホテルニュートリノ」が来たときに、心境の変化を実感しましたね。オブラートに包まない。

吉井 オブラートに包まず、ビブラートをかけながら。

EMMA ちょっと湿っぽくなると、こういうの入れてくるんです(笑)。メンバーの1人がこういうことになると、やっぱり時間は大切だなと思いました。再集結したけど、時間は限られていると再認識させられたし、そこでもバンドのパワーが強くなった気はします。

――確かに。すごく4人の絆というか、そういったものが強くなった。

ANNIE そうじゃないかと。それに、単純に音を出せて楽しかったですよね。バンドが続けられるかどうかもわからない状況だったわけじゃないですか。それがまたレコーディングができるということで。そういう喜びの音をすごく感じました。

――5曲目の「Exhaust」はEMMAさんが作曲された曲ですが、歌い出しが<崖っぷちを流してる 4シートのカブリオレ>です。車に乗っているシーンですね。アルバムの話とは、ちょっと逸れるかもしれませんが、例えば、メンバー4人がこのカブリオレに乗っているとしたら、運転手、助手席、後部座席は、それぞれどういう位置ですか?

吉井 まず、車はどこの?

EMMA ヨーロッパ車かな。

ANNIE ドイツ? イタリア?

EMMA 迷うね。ドイツかな。ドイツのほうが風の巻き込みが少ない。

吉井 でも俺がイメージしていたのはイタリアよ。

ANNIE やんちゃな感じだもんね。

吉井 助手席は弟(ANNIE)じゃない?

ANNIE 絵的にはLOVINの方がいいんだけど、リアルにナビゲートするんだったら俺の方がいいかもしれない。

HEESEY 俺は絶対後ろでしょ。

EMMA 後ろの方がね。風の巻き込みはひどいですよ。

HEESEY カブリオレだけに。

――余談でしたけど、気になってしまい。

吉井 でも、そこを気づいていただいてうれしいです。

HEESEY 4人が乗っているっていう、ね。

――そうですね。4人がやっぱりそこにいて、レッドゾーンに向かっていく1曲です。今回のレコーディングでは、この方も欠かせないんじゃないかなというのが、キーボードの三国義貴さんですね。

吉井 2016年の再集結のときは、我々も久しぶりだったこともあるし、まずバンド4人だけでちゃんとまとめるということもあったので、お休みしていただいたんですが、ずっといつかまた参加してもらいたいとは思っていて。まさにこのタイミングでね。普段、変なことばっかり言ってるんですけど、不思議な安心感を与えてくれる人なので。

吉井和哉(Vo)

ANNIE そうなんですよね。

吉井 不思議な、年上の包容力があるというか。すごいモテるんだけど、「ここがモテるとこだな」って思うんだよね。

ANNIE 言わせておくみたいなことがすごくできるよね。できる社長ってそうじゃない。

吉井 確かに。

ANNIE 散々言わせて、「君たちがよければそれでいいよ」みたいな空気を持っているから。

吉井 絶対威張らないしね。ただ、(地元の)北海道に行ったときだけ威張る(笑)。でも、久しぶりにレコーディングに来ていただいたときは、ほんと、いぶし銀のプレイで、全然衰えていなくて。タイム感がバラついたりすることも全くなく。そこはすごい。海外のミュージシャンのような、不思議な粘着力というか、不思議なおおらかさがあった。

HEESEY 人間性もしかり、そのプレイも然り、独特の魔力を持っていて。音が重なっていくごとに、90年代のTHE YELLOW MONKEYにあって、再集結後になかったものの一つとして、「これだったんだね」と気づくところもあったよね。

吉井 僕は真ん中で歌っていると、THE YELLOW MONKEYの3人のサウンドって、ちょっと変わった隙間が起きるんです。そこを三国さんが定食の納豆のようにねばりついて、つなぎ止めてくれて、ここで納豆を入れる喜びという……あの感じです。

――粘りという意味では「ドライフルーツ」でのEMMAさんのギターソロも。

EMMA 僕はアルバムの中で多分1番好きなテイクで。

吉井 オチケン鋭いね。

――ありがとうございます。あれはどういうイメージで?

EMMA 曲調から、今までのTHE YELLOW MONKEYにはなかったソロを弾きたくて、チャレンジした感じですよね。THE YELLOW MONKEYサウンドの中では、アームを使うこともほとんどなかったんで、それを入れてみたり。

――HEESEYさんのベースの存在感もね。

HEESEY ありがとうございます。今までと同じようで、ちょっと違うパターンのレコーディングだったりして。いい意味での余裕とか、余白があって、自分の味を出すポイントがありました。短い時間の中でしたが、自分で持ち帰って、曲を聴いて出てくるフレーズみたいなものを、何通りもやってみたんですね。今までは、例えば5-6曲のレコーディングを並行してやっていたこともあったんですが、1曲ずつ録っていく形だったので、それが功を奏したところもあるのかな。ベストを尽くせたかなと思います。

廣瀬洋一(B)

――アルバムには11曲収録されていますが、その中でも、やっぱり「Beaver」そして「ラプソディ」という2曲については?

HEESEY その2曲を選びましたか。

――この2曲はちょっと質感が違うというか。

吉井 「Beaver」はわりと古くから自分の中にあった曲で。HEESEYが得意そうなベースだなあと思います。その曲に限らずですが、曲を作るスキルではない部分での制限がいろいろあったんで、例えば「罠」なんかは、HEESEYがソロでやるTHE YELLOW MONKEY感みたいな。「HEESEYはこういう曲作りそうだな」とイメージしていました。そういうのはメンバー全員にあるんですけどね。ANNIEだったら、こういうドラム叩くだろうなとか。再集結してから、「これまでのTHE YELLOW MONKEYとは違うことをやりましょう」という提案をしていたけど、今回は、もう好きなことをやろうというか。塗り絵をみんなに渡したみたいな。線は書いてある中で、楽しんでもらうというのが一つあって。「Beaver」はその最たるものかなと。逆にEMMAはあまりやることなかったかもしれない?

EMMA ああ、カッティング? でも、ずっとストロークをやるのはTHE YELLOW MONKEYでは珍しいから。

吉井 珍しく、起きてたね。寝るじゃん?

EMMA 同じことやってると(笑)。

吉井 そういうのがありつつ……「ラプソディ」は最後まで歌詞ができなくて。1番声の調子が悪いときに思いついた曲だったから。自分で作ったデモに対して、歌のキーも、どのメロディが歌いやすいのかもわからなかったんですけど、試行錯誤しながら形になりました。もともと、サビは全然違うサビがついていたんですけど、あるとき、ジムの帰りにお茶をしていたら、小さい子がお母さんに「おっぱい、おっぱい」とせがんでいて。そこで、<オパ オパ オパ オパ オパ>という今まで自分の中になかったメロディができた。

ANNIE もうね。聴いてくださったと思うんですけど、強烈なんですよ。

吉井 デモは、おっぱいで歌っていたんですよ。でも、例えば子ども向けの曲として出すなら、それでいいんですが、さすがに平均年齢58歳のTHE YELLOW MONKEYの10枚目のアルバムですから、このままではまずいよねと、事務所とレコード会社とも話して。ずっとできなかったんですよ。最後までこの曲だけ完成していなくて。日本語で歌詞を書いたりもしていたんですけど、全然つまらなくて。それで、わりと最近、ファンクラブミーティングをやっていたんですが、名古屋の帰りの新幹線の中で、「ちょっと待って。クラリネットの童謡ってなんだっけ。オパッキャマラードじゃなかったっけ?」と。クラリネットがうまく鳴らない歌と自分の声帯のことが重なって。助かった! 感動したもん。

EMMA めちゃくちゃ自慢げに「できた、できた」ってグループLINEに貼ってきたから。

ANNIE すごかった。

EMMA めちゃくちゃうれしそうだったよ。

吉井 「どうだ」くらいには送りました(笑)。

――おっぱいからクラリネットときて。フランス語では「みんなで一緒に行こう」みたいな意味もあるそうで。

吉井 そうですね。それこそ、オッパって韓国語だとお兄さんとかいう意味もあって、いろんな逃げ道を考えましたが、それでは完全に敗北だろうと思って。ちゃんと正々堂々と言える言葉を見つけました。すごい達成感。

ANNIE このアルバムの1番最後にできたからね。

EMMA 全員がやった! となりましたよね。

――僕は最初から喉のことを歌っていたのかと思っていましたが。そのエピソードも含め、THE YELLOW MONKEYっぽいというか。

HEESEY 会心の歌詞ですよね。

▼「ソナタの暗闇」(Official Music Video)

――「ラプソディ」の次の曲は「Make Over」ですね。EMMAさんが作詞作曲されて。EMMAさんは、前作でも「Horizon」を作詞作曲していましたが、今回、この曲を作詞作曲するにあたっては?

EMMA 自分たちの活動のペースやコロナ禍ということもあって、歌詞を書かせてもらうんだったら、その間にあったいろいろなことを入れたいなと思って書きはじめたんですけど。いろんなことがありすぎて、まとめるのが大変で。コロナだったり、今は、戦争も起こっている。人間って道も踏み外すし、いろんなことがあるなと考えつつ、でも、というラテンの言葉があるんですけど。素晴らしい世界に向けて、ちょっとでもいいから歩み出そうという内容にしようかなと、落ち着いて歌詞にしました。吉井和哉が歌うことも前提として、“自分流に”というのを大前提に歌ってもらいました。

吉井 最初は、「LOVIN歌詞手伝って」みたいな話もあったんですけど、やっぱりEMMAにしか出せないこの独特の骨っぽさ、男らしさ、説得力というのがあるので。自分がちゃちゃを入れることはしない方がいいと思って。書き直してもらった部分もありましたが、自分からは絶対、出ないような言葉をやっぱり選んできて。幸い、喉のほうも直ってきた後半に録ったので、EMMAの曲を僕が歌う面白さとか楽しさが非常にありました。THE YELLOW MONKEYのEMMAにしか出せない、そのカラーが好きですね。クイーンでいうジョン・ディーコンみたいな。EMMAの曲はやっぱりこれからどんどん色気の中で確立されていくと思います。

――この曲のANNIEさんのドラムもね。

吉井 そう! 兄貴(EMMA)の曲になると、ものすごく手腕を発揮する。僕の曲は、つまんないんだろうな(笑)。

ANNIE いや、今回1番楽しかったのは、「ソナタの暗闇」だったんですよ。何もやっていないんだけど。

吉井 ずーっと同じリズムを刻んでるんだよね。あのね、ごめんね。あれもね……。

ANNIE いや、ああいうのが楽しくなってきてるんだよね。

吉井 今思えば、もっといろんなことをやってもらってもよかったかなって思う。

ANNIE でも、東京ドームでは21曲やりましたけども、1番入り込めたのが「ソナタの暗闇」だったんです。そういう風になってきているのは、意味があるなと思います。

吉井 今度、ああいう曲を思いついたら、全部タム回しにしようかな。

HEESEY 逆にね(笑)。

ANNIE もうね、年齢的にやめましょうよ(笑)。

吉井 でも、EMMAのデモとかは、すごくドラムが複雑なんだよね。ANNIEは、基本、それを完コピするので。やっぱり菊地家(EMMA、ANNIE)の部屋の中でしか起こらないマジックが幼少のころからあるんだろうなと。独特の兄弟の世界が。

ANNIE 僕の気分的には、実はLOVINと一緒で。EMMAが提示してきたものをそのまま叩いたら面白いだろうなということでやってるんだけど。ただ、僕が叩くと、そのまま菊地家になっちゃう。

吉井 そう、だからTHE YELLOW MONKEYの中に菊地家っていうジャンルがね。

HEESEY 新しいジャンルができている。後期THE YELLOW MONKEYみたいな(笑)。

――アルバムラストは「復活の日」です。東京ドームのライブでも、LEDスクリーンに映像が流れながら初公開されましたけれども。会場ですすり泣いてる方もいました。

EMMA 多かったね。

――すごく力強いコーラスもあって、本当にまさしくここから復活していくんだなという。アルバムの1曲目でもよかったような気もしますが。

吉井 最初は1曲目のつもりでした。でも、最後にすることによって、リバースで聴いてもらってもいいし……。

――「復活の日」は、吉井さんはどう向き合って書かれたんですか。

吉井 うちのマネージメントが、「いい曲を作りそうだぞ」みたいな予感がしたんでしょうね。まだ歌詞もできてないのに、「東京ドームでこの曲を流したい」と。そういう期待を受けて。東京ドームで初めて流して初公開されるということは、変な歌詞も書けないですし。オーディエンス全員で書いているような気持ちで書いたというか。だから歌詞はすごくわかりやすい曲だとも思うし、この曲もやはり、ありそうでなかったロックアンセムになっています。ヴィンテージロックが好きな人はいろんなオマージュを感じてくれるかと。なんだろう、今までTHE YELLOW MONKEYとして音楽の形態として新しいものを探そうとした時期もあったんですけど、そうじゃなくて、シンプルにみんなとこの曲をこの場所で感じたいっていうものから生まれた、正しい順番で新しいTHE YELLOW MONKEYができたので。この曲がアルバムの最後というのは、すごく満足感高いです。

EMMA この曲、仮タイトルからもう「復活の日」だったよね。

吉井 そう。

EMMA その意志を感じて演奏しましたね。

後編に続く

文:PMC編集部 撮影:横山マサト

リリース情報

10th Album「Sparkle X」

2024年5月29日(水) リリース

(CD+DVD):4,950円、(CD):3,300円

10th Album『Sparkle X』通常盤

【CD収録曲】
M-01. SHINE ON
M-02. 罠
M-03. ホテルニュートリノ
M-04. 透明Passenger
M-05. Exhaust
M-06. ドライフルーツ
M-07. Beaver
M-08. ソナタの暗闇
M-09. ラプソディ
M-10. Make Over
M-11. 復活の日

ツアー情報

THE YELLOW MONKEY TOUR 2024/25 〜Sparkleの惑星X〜

2024年10月15日(火) 神奈川・神奈川県民ホール 大ホール
OPEN 17:30 / START 18:30

2024年10月20日(日) 愛媛・愛媛県県民文化会館 メインホール
OPEN 16:30 / START 17:30

2024年11月1日(金) 愛知・名古屋国際会議場 センチュリーホール
OPEN 17:30 / START 18:30

2024年11月7日(木) 広島・広島文化学園HBGホール メインホール
OPEN 17:30 / START 18:30

2024年11月10日(日) 兵庫・神戸国際会館こくさいホール
OPEN 16:30 / START 17:30

2024年11月15日(金) 福岡・福岡サンパレスホテル&ホール
OPEN 17:30 / START 18:30

2024年11月21日(木) 宮城・仙台サンプラザホール
OPEN 17:30 / START 18:30

2024年11月26日(火) 栃木・宇都宮市文化会館 大ホール
OPEN 17:30 / START 18:30

2024年12月1日(日) 北海道・札幌文化芸術劇場hitaru
OPEN 16:30 / START 17:30

2024年12月7日(土) 福井・福井フェニックス・プラザ エルピス 大ホール
OPEN 16:30 / START 17:30

2024年12月9日(月) 大阪・フェスティバルホール
OPEN 16:30 / START 17:30

2024年12月13日(金) 鹿児島・川商ホール(鹿児島市民文化ホール)第1ホール
OPEN 17:30 / START 18:30

2024年12月28日(土) 東京・日本武道館
OPEN 17:00 / START 18:30

2025年1月8日(水) 愛知・名古屋国際会議場 センチュリーホール
OPEN 17:30 / START 18:30

2025年1月15日(水) 大阪・大阪城ホール
OPEN 17:30 / START 18:30

2025年1月19日(日) 宮城・仙台サンプラザホール
OPEN 16:30 / START 17:30

2025年1月24日(金) 埼玉・大宮ソニックシティ 大ホール
OPEN 17:30 / START 18:30

2025年2月7日(金) 東京・東京ガーデンシアター
OPEN 17:30 / START 18:30

2025年2月11日(火・祝) 福島・けんしん郡山文化センター 大ホール
OPEN 16:30 / START 17:30

2025年2月14日(金) 福岡・福岡サンパレスホテル&ホール
OPEN 17:30 / START 18:30

2025年2月23日(日) 岡山・倉敷市民会館
OPEN 16:30 / START 17:30

2025年3月7日(金) 熊本・熊本城ホール メインホール
OPEN 17:30 / START 18:30

2025年3月14日(金) 富山・オーバード・ホール 大ホール
OPEN 16:30 / START 17:30

2025年3月17日(月) 大阪・フェスティバルホール
OPEN 17:30 / START 18:30

2025年3月20日(木・祝) 宮城・仙台サンプラザホール
OPEN 16:30 / START 17:30

2025年3月27日(木) 香川・レクザムホール 大ホール(香川県県民ホール)
OPEN 16:30 / START 17:30

2025年4月4日(金) 福岡・福岡サンパレスホテル&ホール
OPEN 17:30 / START 18:30

2025年4月13日(日) 山形・やまぎん県民ホール大ホール
OPEN 16:30 / START 17:30

2025年4月22日(火) 愛知・愛知県芸術劇場 大ホール
OPEN 17:30 / START 18:30

2025年4月30日(水) 東京・NHKホール
OPEN 17:30 / START 18:30

【チケット】
指定席:10,000円(税込)
立見指定 ※設定ある会場のみ:10,000円(税込)
※6歳以上チケット必要(但し、6歳未満でも座席が必要な場合はチケット必要)

ツアー特設サイト:
https://theyellowmonkeysuper.jp/feature/tour2024_25