音楽専門誌『ぴあMUSIC COMPLEX』連動企画
Number_i、RIIZE、GLAYからヘッドライナーのマネスキンまで。「SUMMER SONIC 2024」レポートDAY1【写真11点】
PMC編集部
第178回
マネスキン (C)SUMMER SONIC All Copyrights Reserved
8月17〜18日、国内外のアーティストが集結する音楽フェスティバル「SUMMER SONIC 2024」(以下、サマソニ)が東京・大阪の2ヶ所で同時開催された。
昨年に続き、東京・大阪両会場全券種のチケットが完売。東京会場各日6万2500人の12万5000人、大阪会場は各日4万5000人の9万人、さらにサマソニ前夜のオールナイトフェス「SONICMANIA」(千葉・幕張メッセ)では2万5000人を動員。合計24万人という盛況ぶりだった。
8月17日、東京会場(千葉・ZOZOマリンスタジアム、幕張メッセ)。筆者はMARINE STAGE(ZOZOマリンスタジアム)に登場したNumber_iから観た。平野紫耀、神宮寺勇太、岸優太からなるダンスボーカルグループだが、この春、米・最大級の音楽フェスティバル「コーチェラ」にて、「88rising Futures」のステージにも立ち、この夏は、日本を代表するサマソニのステージに初めて立つというわけだ。アリーナはもちろん、3階のスタンド席まで、ヘッドライナー級に観客を集め、東京会場初日のトップバッターとして、その人気と注目度の高さを見せつける。
「海浜幕張の駅は、電車の扉が開いた瞬間、海の匂いがする」と千葉出身の神宮寺。「結構地元で。このステージは初めてですが、野球を観にきていたので、みなさん側には来たことがある!」とうれしそうに伝える。時折り、テレビのバラエティ番組などでも見られる、平野のゆるいキャラクターも垣間見せつつ、スタンド席・アリーナ席の観客をあおる。
コーチェラでも披露した「GOAT」をはじめ、チルい「Banana(Take It Lazy)」、R&B調の「Blow Your Cover」、さらに、「イナズマ ズマ ズマ」というフレーズが頭に残る新曲「INZM」の披露ほか、振り幅のある楽曲群と迫力のダンスで魅了していった。今年からMARINE STAGEに新設されたメインステージから中央に長く伸びる花道を駆け、エネルギッシュなパフォーマンスを披露し、大型フェスでの新曲披露からのミュージックビデオ「INZM」公開と、サマソニを起点に、自身の活動に弾みをつける。「SUMMER SONIC 2024」2日間の幕開けとしても、お祭り的盛り上がりのスタートとなった。
幕張メッセへ移動すると、MOUNTAIN STAGEで(sic)boyがライブ中だった。ヒップホップアクトなのだろうが、オルタナティブ、エモ、ラウドロックなどの要素を含み、カテゴライズが意味をなさず、彼のメロディとその歌心に一気に引き込まれた。ゲストラッパー陣の迫力、そして、影絵の映像などライブ全体の世界観もいい。ヒット曲「君がいない世界 with JUBEE」も最高にエモーショナルだった。このステージで気になった人も多いと思うが、11月から初の(sic)boy単独ツアーがスタートするとのことだ。
続いて同ステージに登場したのはK-POPアクトのRIIZEである。現在、日本にて、1ヶ月間にわたる全国ホールツアー中だが、チケットは入手困難を極めた中でのMOUNTAIN STAGEへの出演である。そのステージへの期待にはじまる前から会場の熱気がすごかったが、1曲目「Impossible」から大きな掛け声があがり、続いて、新曲「Lucky」を披露。筆者は、「2023 MAMA AWARDS」、テレビ朝日開局65周年記念フェス「The Performance」にてRIIZEのパフォーマンスを観たことがあるが、リリースとツアーを重ね、数ヶ月で驚くほど進化していた。
ショウタロウは「幼いころからあこがれのサマソニ! 盛り上がっていきましょう!」と語っていたが、途中、マイクが入らない事態が起き、ショウタロウ抜きの韓国人メンバーのみで自然と日本語を交えつつ、場をうまくつないでいたのも、たくさんのステージを重ねている成果なのだろう。デビュー曲「Get A Guitar」から、韓国1stミニアルバムより「Boom Boom Bass」まで、40分の持ち時間で、多彩な魅力が伝わる。今後のより大きなステージでの活躍が目に浮かんだ。
再び、MARINE STAGEへ。真昼間の暑さにはまいったが、SUPER BEAVER、NCT DREAMが灼熱の中、圧倒するステージを繰り広げていた。主催サイドが暑さ対策にも例年以上に気を遣っており、移動中や開演待ちのスタンド席では日傘の使用がOKになっていたのは、とても助かった。
とはいえ、じっとしていても汗だくになる勢いだったが、ライブがはじまると、アリーナのお客さんをはじめ、アーティストらの気合いがすごい。NCT DREAMは、浮遊感ある「Broken Melodies」が暑さの中とてもよかったが、実にストイックなパフォーマンスで魅了していた。
「Spotify RADAR:Rarly Noise Stage」では、離婚伝説を観た。PMCでは、彼らの1stワンマンライブ以前にインタビューをしたことがあったが、メジャーデビューを果たし、さらなる注目を集めているそのわけは、このライブではないだろうか。同会場の後ろのほうまでオーディエンスを集めていたが、「goot times〜愛が一層メロウ」では合唱が起き、サマソニの会場に歌謡バラード(「萌」)が響いているのはとても新鮮で、オーディエンスも聴き入っていた。
ボーカル松田歩の歌の強さとソウルセンスとカリスマ性、別府純のギタープレイも存在感があり、ユニットとして、それぞれの個性が立っている。海外でも人気を得ている日本発シティポップ系の新世代として、新たなムーブメントを期待したい。
この日の幕張メッセ会場、PACIFIC STAGEでは、日本のガールズバンドBAND-MAIDが海外ツアーでも人気を拡大している、その実力を示していたし、韓国の兄妹ポップスデュオAKMUなど、個性際立つアーティストが多く出演していた。また、MOUNTAIN STAGEではイギリスのロックバンドNOTHING BUT THIEVES、SONIC STAGEではアメリカ発のBLEACHERSが歌と演奏の力で大いに会場を盛り上げていた。
MARINE STAGEに再び戻ると、星野源のライブを観ることができたのだが、スタジアムという大規模な会場に、大ヒット曲が突き抜けていく。「恋」「Week End」「Hello Song」と会場の空気感が素晴らしかったし、長い花道を駆けて、ステージをやりきった星野源の表情が実に晴れやかで、こちらまで気持ちよくなる。「健康に過ごして、また会いましょう!」と名残惜しそうに、ステージを去った。
大ヒット曲の威力というのは、GLAYも同じくだった。筆者は、ヘッドライナーのマネスキンを観るために、MARINE STAGEにステイし、MOUNTAIN STAGEのGLAYのステージは、WOWOWのライブ配信でチェックしたのだが、これがまたよかった。大ヒット曲「HOWEVER」で完全にもっていった。ことあるごとに、「SUMMER SONIC」と口にするなど、そのサービス精神が心を打つ。
GLAYといえば、20万人規模の単独フェスをやったモンスターバンドだが、「夏フェスといえば、自分たちで開催することが多いため、お邪魔させてもらうのは初めてで、オーディエンスが半分くらいしかいないのかなって不安だった」と謙虚すぎるTERU。アーティストがこういった音楽フェスティバルに出演するという意味の一つには、新たなオーディエンスとの出会いがあるが、この日のMOUNTAIN STAGEを大いに盛り上げていたようだ。
いよいよ、ヘッドライナーのマネスキンである。イタリア出身で、メンバーはまだ20代前半である。2022年にもサマソニには出演していたが、関連イベントの単独公演も含め、日本での人気を拡大。2023年12月にもワールドツアーで来日し、主催のクリエイティブマンと関係性を築いた中で、今回、ヘッドライナーへ抜擢されたというわけだ。世界の音楽フェスシーンをリードするような抜擢であるし、ヘッドライナーはやや早いようにも思えるかもしれないが、いやいや……アリーナはもちろん、スタンド席も埋め尽くす中、彼らは見事なまでにヘッドライナーのステージをやってのけた。
昨年12月、東京ガーデンシアターでのライブも観たが、その後、大きな成長をとげたのか、ここぞというときの勝負強さなのか、オープニング「DON’T WANNA SLEEP」から「SUPERMODEL」ほか、ストイックにその音に引きずり込む感じ。バンドの音の説得力が半端なく、ボーカルのダミアーノのたたずまいもベース・ビクトリアとギター・トーマスのバトルも、ドラム・イーサンも超強力。この4人で、スタジアムというデカい会場を制していた。花道も大いに活用しつつ、客席降りも客上げも、アンコールで2度目の「I WANNA BE YOUR SLAVE」を終えるまでやり切った。このマネスキンのステージが大成功したことは、「SUMMER SONIC 2024」にとって、エポックな出来事になったのではないだろうか。
この日マネスキンのステージ後にあがった花火、そして、MOUNTAIN STAGEトリのメジャー・レイザーが流していたアメリカのラッパー、ミーガン・ジー・スタリオンが客演に千葉雄喜を迎えた新曲「MAMUSHI feat. YUKI CHIBA」からのケンドリック・ラマー「Not Like Us」のくだりで、2024年の夏を強烈に感じながら、サマソニ1日目を終えた。
取材・文:PMC編集部
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