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音楽専門誌『ぴあMUSIC COMPLEX』連動企画

WEST.からBRING ME THE HORIZONまで。BABYMETALのゲスト出演も話題となった「SUMMER SONIC 2024」レポートDAY2【写真8点】

PMC編集部

第179回

BRING ME THE HORIZON (C)SUMMER SONIC All Copyrights Reserved

8月17〜18日、国内外のアーティストが集結する音楽フェスティバル「SUMMER SONIC 2024」(以下、サマソニ)が東京・大阪の2ヶ所で同時開催された。

昨年に続き、東京・大阪両会場全券種のチケットが完売。東京会場各日6万2500人の12万5000人、大阪会場は各日4万5000人の9万人、さらにサマソニ前夜のオールナイトフェス「SONICMANIA」(千葉・幕張メッセ)では2万5000人を動員。合計24万人という盛況ぶりだった。

8月18日、東京会場(千葉・ZOZOマリンスタジアム、幕張メッセ)。サマソニ2日目、MARINE STAGE(ZOZOマリンスタジアム)のトップバッター、WEST.は絶対に頭から観たかった。今年4月、CDデビュー10周年を迎え、現在、デビュー10周年ツアーのラストを飾るドームツアー「WEST. DOME TOUR AWARD ~10th Anniversary~」真っ只中の彼ら。サマソニは、昨年に続き、異例の2年連続出演となるが、周囲の評判がよかったし、チケットがなかなか手に入らないアイドルグループのライブに立ち会えるのは貴重だからだ。

WEST.

結果として、とてもいいものを観た。ひとことで言うなら、魂のぶつかりあい。小細工なしの真剣勝負。アイドルらしい万人を虜にする笑顔というより、その先にいる1人1人の心を撃ち抜く眼差しで勝負しているというか、とても人間臭いのである。自分にとって、それは、とにかく初めての感覚だった。SUPER BEAVERやハルカミライといったロックバンドと近いベクトルの熱量を感じる。実際、この日も披露した「つばさ」と「ハート」はSUPER BEAVERの柳沢亮太が提供した楽曲だ。

こうしてライブで聴いていると、「ホルモン〜関西に伝わりしダイアモンド〜」のようなトンチキな曲もトンチキには聴こえない。その理由は重岡大毅がMCで教えてくれた。「一番得意なことは、一生懸命歌うことでした!」ということ。どんなこともどんな曲も必死に取り組んでいるとカッコよく観えるもの。ライブの流れや緩急で手を抜くことがなく、ラスト曲「証拠」まで、WEST.は1曲1曲全力で、それを体現。彼らは持ち時間40分の間、ずっと振り切っていた。そのパフォーマンスには勢いと魅力に満ちていた。

WEST.の7人がやりきった表情でステージを去るのを見届けたあと、急いで幕張メッセへ向かった。目的はPACIFIC STAGEのBODYSLAM。結成20年を超えるタイ出身のベテランハードロックバンドだが、この春、BABYMETALとF.HEROとのコラボシングル「LEAVE IT ALL BEHIND」で日本でもその存在を知らしめた。ミッドテンポの大きくゆったりとしたグルーブが特徴的で、叙情的で味のあるメロディを重心の安定した演奏で聴かせる。今の日本にはあまりいないタイプのバンドだ。

「LEAVE IT ALL BEHIND」では気づかなかったが、どことなく漂う哀愁にBABYMETALとの共通点を感じた。あれは起こるべくして起こったコラボだったのか。そんなBABYMETALは事前の予告どおり、ライブ中盤にステージに現れ、両者で「LEAVE IT ALL BEHIND」を披露した。もう一組のコラボ相手、F.HEROはスクリーンに映し出される形で登場。不思議と安心感を覚えた。改めていい曲だと感じた。

BODYSLAM(ゲスト:BABYMETAL)

ここでリラックスしたのか、最後の2曲はより堂々としたパフォーマンスを見せた。「LEAVE IT ALL BEHIND」と同様に、女性ボーカリスト(Siriporn Ampaipong)をフィーチャーした「คิดฮอด」は、Deep Forestを思わせる民族音楽的な節回しにひきつけられた。やはり、その国や地域独自の節回しやメロディラインにはグッとくるものがある。

ボーカルのアーティワラー・コンマーライは、“So excited!”や“It means a lot to us!”と初めて見る日本の観客に何度も興奮と感謝を伝え、名残惜しそうにステージをあとにした。なお、BABYMETALは、8月24・25日にタイ・バンコクで初開催となる「SUMMER SONIC BANGKOK」の24日公演へのBODYSLAMのステージにスペシャルゲスト出演することが決まっている。F.HEROも含む完全体の「LEAVE IT ALL BEHIND」に期待が高まるステージだった。

汗でびしょびしょになったTシャツをPACIFIC STAGE近くのトイレで着替え、外に出てみると、先ほどとはまるで異なる光景が広がっていた。BOYNEXTDOORの登場を待つ女性客であふれていたのだ。自分はK-POPには明るくないが、名前を知っていたので観ることにした。爽やかなビジュアルと同様に、ロックやポップスをベースにした生っぽいサウンドも多く、自然体なパフォーマンスが印象的。圧巻だったのは、ビート感が強くない曲にもかかわらず、ふんわりと弾むような振り付けを全体でバシバシにそろえてきたところ。楽曲の幅の広さに加え、K-POP自体の幅の広さを感じるには十分な時間だった。

BOYNEXTDOOR

続いて、PACIFIC STAGE隣のSpotify REDAR: Early Noise Stageへ。今年メジャーデビューしたばかりの女性3人組バンド、サバシスターが観たかったのだ。彼女たちが前回サマソニに出演したのは2年前。当時のライブは観ていないが、彼女たちにとってこの2年の間に起こった変化はかなり大きなものだったはず。ライブはキャリアのわりに落ち着いていて、実直で、真摯で、硬派。しっかりとフロアを見つめながらのパフォーマンスは非常に好感が持てるものだった。あれから数日がたった今も、ふとしたときに「サバシスター's THEME」を口ずさんでいる自分がいる。

サバシスター

サバシスターを観終わり、さすがに腹が減ったので焼きそばを食べる。この暑さの中では水分補給だけでなく適度な食事も重要。ほどほどに腹が膨れたところで、新しい学校のリーダーズを観たかったことを思い出し、MOUNTAIN STAGEの真横にあるエスカレーターを下ろうとした……のだけど、混雑でなかなか前に進まない。

そして、ようやくフロアに辿り着こうとしたとき、あちこちから「え、ヤバくない……?」というざわめきが聞こえてきた。確かに、ヤバかった。2万人規模の広大なMOUNTAINのフロアが人で埋め尽くされていたのだ。ライブを観て納得。若い客層との親和性も高かったのだろうが、4人のパフォーマンス力の高さよ。SUZUKAの声量や歌唱力を筆頭に、各メンバーのリズム感や統率の取れたダンスは遠目でもわかるぐらいすごかった。

新しい学校のリーダーズ

それを支えるのがサウンドのよさ。あの広大なスペースで耳にする「TOKYO CALLING」の音圧、特にブラス系の音の迫力にはぶっ飛ばされた。海外公演で研ぎ澄まされたパフォーマンスは、唯一無二なんて言葉では表現しきれないぐらいの衝撃だった。

NIA ARCHIVESは今回最も楽しみにしていたアクトの一つ。“Jungle is the sexiest music”というサンプリングボイスからはじまったステージは、彼女のジャングル/ドラムンベース愛に満ちあふれたものとなった。ジャングル黎明期の90年代と思しき映像や、当時のシーンからの影響を色濃く感じさせる「Off Wiv Ya Headz」からガツンとヤラれた。あのころ、強くあこがれながらも決して体験できなかった本場のレイブシーンの片鱗を味わえたような気がして、なんとも言えぬ喜びが体中を駆け巡った。MOUNTAIN STAGEという広大なフロアがその興奮を増幅した。楽しさよりも感謝が勝る時間だった。

NIA ARCHIVES

しばしの休憩時間を挟み、一目拝みたかったTylaへ。アマピアノ、アフロビーツ、R&B、ヒップホップといったジャンルを越え、アフリカンミュージックを現代的なポップミュージックに昇華し、今年のグラミー賞では「最優秀アフリカン・ミュージック・パフォーマンス賞」を受賞した新しい時代のアイコンである。巨大なトラのオブジェをバックに妖艶にパフォーマンスする姿に釘付けになった。

Tyla

ダンサーを数名引き連れていたが、Tylaは圧倒的。彼女のような飛び抜けた存在はレアケースなのかもしれないが、アフリカの新しい音楽シーンが世界を席巻している、そのわけを感じることができた。SNSでもバズを起こした「Water」では、背中に水をかけるダンスも日そうしていたようだが、ライブ中盤、後ろ髪を引かれながらMARINE STAGEへと移動する。

この日のヘッドライナー、BRING ME THE HORIZONのステージは本当に素晴らしかった。観る者の感性をストレートに刺激するパフォーマンスやステージ演出は、メタルが好きかどうかなんて関係なく、万人が楽しめるエンターテインメントの域に達していた。ファンにはすっかりおなじみのTVゲームオマージュの演出は以前からあるものだが、今回はさらにブラッシュアップ。さらに、ほぼ1曲ごとに見どころを設け、決して飽きさせないものになっていたのには驚いた。何しろ、オープニングが初代プレステの起動画面オマージュからはじまり、そこから「ファイナルファンタジー」のオマージュへとつなげるんだから笑うしかない。TVゲーム好きのオリヴァー・サイクス(Vo)らしい演出だ。

ほかにもモッシュピットをつくるように何度もあおったり、観客同士で肩車をするように指示したり、観客を1人ステージに上げて1曲歌わせたり、ステージを降りて最前列にいるファンとムービーで自撮りをしまくったり、あらゆる方法でオーディエンスとつながろうとする姿が印象的だったし、それは多くのバンドにとって手本になるような光景だった。感動で涙を流す女性ファンがスクリーンに映し出されたとき、思わずもらい泣きしそうになった。

さらには、ゲストミュージシャンも登場。まずは、ほぼ同時間帯にSONIC STAGEでトリのパフォーマンスを控えていたAURORAが現れ、最新作『POST HUMAN: NeX GEn』から「liMOusIne」を世界初共演した。どうやら、彼女は自分の出番ギリギリにこの曲のためにMARINEまでやってきたようだ。

そして、「Kingslayer」ではもちろん、BABYMETALがゲストで登場。両者の関係性から考えて、同じ日に同じ会場に居合わせて共演しないわけがない。スクリーンには同曲を完璧な振り付けで踊るキツネ面の3人の姿が映し出され、リアルの3人とシンクロしていた。こういった演出にも彼女たちへのリスペクトが感じられる。曲の最後には、彼ら主催のフェス「NEX_FEST」で観たのと同じようにオリヴァーが3人それぞれとハグ。もはやほほえましい。新作の制作に深く関わっているDAIDAI (Paledusk)との共演もあるかと思ったが、これは実現せず。でもなんとなく、別の機会にとっておいているのでは、という気もした。

ほかにも触れたいことはあるのだけどキリがない。とにかく、名実ともにBRING ME THE HORIZONがロックシーンの頂点に立つ姿を目の当たりにした。オリヴァーは数年前、ここ何十年もロックシーンにアイコンがいないことを指摘したことがあったが、ついに自分たちが日本でもその座についたのだ。そういった意味でもサマソニのヘッドラインのステージは、非常に大きな意味をもつパフォーマンスとなった。最後、オリヴァーは「またすぐに会おう」と言っていた。彼らの場合、これってただの社交辞令ではないんだよな。本当にまたすぐに来る気がするし、来てほしい。

取材・文:阿刀大志
(C)SUMMER SONIC All Copyrights Reserved

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