音楽専門誌『ぴあMUSIC COMPLEX』連動企画

【PMCライブレポート】BABYMETALが広がるメタトモの輪。「メタラジ!FES」で新しい学校のリーダーズ、マキシマム ザ ホルモンと共演!

PMC編集部

第256回

BABYMETAL

正直、どんな内容になるのかまったく想像がつかなかった。3月29日に東京・東京ガーデンシアターにて開催された「TOKYO FM開局55周年記念 BABYMETALのメタラジ!FES」(以下、「メタラジ!FES」)の話である。同フェスは、BABYMETALの初冠ラジオ番組『BABYMETALのメタラジ!』(TOKYO FM、以下、『メタラジ!』)をきっかけに開催。番組では、毎回ゲストを招き、メタル愛を語るという内容でメタトモ(メタル友だち)の輪を広げてきた。

先日公開したBABYMETALのプロデューサーKOBAMETALのインタビューでは、「メタラジ!FES」のことを「リアルなオフ会」と表現していたが、3月28日の最終回放送後のお祭りとして、番組初回のゲストである新しい学校のリーダーズ(以下、リーダーズ)、3週連続出演となったマキシマム ザ ホルモン(以下、ホルモン)、そしてBABYMETALという3組のイベントが用意された......最初は想像がつかなかったが、ふたを開けてみると、ステージ、フロア問わず、そこには穏やかで温かな連帯があった(もちろん、サウンドは別として)。結成15年を越えたBABYMETALにとっても新たに開けた扉だったのではないだろうか。

とはいえ、観客にとってこの日のイベントは未知数。先陣を切った新しい学校のリーダーズは、一体どんなバトンをどうやってマキシマム ザ ホルモンに渡すのか。3組とも唯一無二の明確なカラーをもち、そのスタイルをまったく曲げることなく世界で闘い、結果を残しているという大きな共通点がある。サウンドこそ異なるが、己を貫き通す精神性と、互いを認め合うというポジティブなアティチュードがこのイベントを素晴らしいものにした。

学校のチャイムに合わせてフロアに一礼してから展開していった新しい学校のリーダーズのステージは、実に気迫あふれるものとなった。歌唱はSUZUKAによる肝の据わったソウルフルなボーカルが中心となって構成され、規律があり、ダイナミックかつキャッチーなダンスがパフォーマンス全体に緊張感を加えるのだが、その様が見ていてとても心地よい。これは、彼女たちの並外れた体幹が可能しているのだろう。「オトナブルー」では、観客全員の首が左右に揺れた。

実際にライブを観ると明白だが、リーダーズのライブはとにかく音作りが緻密。特に、「Tokyo Calling」のブラスサウンドは鳥肌が立つくらい迫力がある。視覚、聴覚ともにリーダーズ独自の没入感が生まれていた。

これらのすべての要素が合わさることによって繰り出される「Pineapple Kryptonite」~「Pineapple Kryptonite Remix」がヤバかった。SUZUKAは客席に飛び込むし、がっつり音ハメしたダンスがドラッギーに脳を刺激してくる。

ラストは「One Heart」でコールアンドレスポンスを繰り広げ、「みんな、最高!」という幸福な絶叫で締めくくられた。トップバッターの役目は間違いなく果たされた。

続いて、マキシマム ザ ホルモン。彼らにとって異種格闘技戦は慣れたものである。相手のジャンルにかかわらず、自分たちの持ち味を1ミリも損なうことなくがっつりと組み合い、ときに相手の土俵にも上がりしっかり爪痕を残すスタイルは、誰にも真似はできない。

(Photo:浜野カズシ)

「殺意vs殺意」からはじまったステージは、ありとあらゆる凶暴性を煮詰めたような獰猛なサウンドと幼い子どもすら笑わせるような諧謔心にあふれていた。「1人残らず頭振れー!」とあおられる前からヘドバンをはじめていた観客は大いに暴れ狂った。

普段はラウド系のフェスなどで彼らのライブを観ることが多いが、こういった異種格闘技的な場でこの音を浴びると、その特異性に改めて驚かされる。BABYMETALのような積極的な海外展開は行っていないが、本気になれば名実ともに世界のトップに立つバンドだ。「maximum the hormone II〜これからの麺カタコッテリの話をしよう~」に「What's up, people?!」に、どうやってこの複雑怪奇なアンサンブルが成り立っているのか、凡人の脳みそではとても答えを導き出せない。日本の宝だと心底思った。

(Photo:浜野カズシ)

「恋のメガラバ」ではあまりの大団円っぷりに自然とアンコールの声が上がり、「勝手に終わった気になってアンコールしないでください」とナヲ(ドラムと女声と姉)が笑った。その後、登場したのがリーダーズの4人。「あなたの汗で東京ガーデンシアターの床にシミを残しタマエー!!」というSUZUKAの願いとともに、「シミfeat.新しい学校のリーダーズ」をプレイ。ナヲのパートをリーダーズのSUZUKA、KANONと歌い継ぎ、RINがキレのあるラップをスピット。そして、MIZYUが三味線を弾くというカオスに場内が熱狂した。最後は「恋のスペルマ」でフロアのあちこちにサークルピットを生み出し、特濃の40分を終えたのだった。

(Photo:浜野カズシ)

このリーダーズとホルモンのライブはBABYMETALの3人にも影響を与えた。彼らから受け取ったバトンの熱量をしっかり感じとったということだろう。

一見するといつもと変わらぬパフォーマンスだが、1曲目の「BABYMETAL DEATH」ではすでにMOAMETALが笑みを浮かべていたり、いい意味でのリラックス感があるように見えた。ここまでの流れを受けての勘違いかとも思ったが、そうでないことがライブが進むに連れて明らかになっていく。フロアの雰囲気は相変わらず温かく、「from me to u (feat.Poppy)」ではイントロが鳴るとすぐにクラップが起こったり、常にポジティブなムードが漂っていた。

SU-METALのボーカルは「ド・キ・ド・キ♡モーニング」や「メタり!!(feat. Tom Morello)」のようなキュート寄りな場面で特に映えていた。15年近く前に発表された前者では、楽曲のカワイイ世界観とリリース当時の彼女自身の若さを表現し、後者では祭りのやんちゃさをイメージさせるが、この日の雰囲気に当てられてか、SU-METALの声はより弾んでいるように聴こえた。「メタり!! (feat. Tom Morello)」は、「もともと違う方言が入ってたんですけど、私は広島弁のほうが歌いやすいので広島の方言に変えてもらいました」と過去のインタビューでも話していた曲。それもあってか、曲の中盤で彼女は「もう疲れたとは言わせんけんねっ!」と初めて故郷の言葉であおった。あまりに珍しい出来事に驚きと歓喜が入り混じった歓声が起こるフロア。これは、多くのBABYMETALファンにとってこの日のハイライトの一つだったはず。これも「メタラジ!FES」だからこそ生まれた名場面だ。

楽曲の中盤で観客にスマホライトを掲げさせるのが定番になっている「Monochrome」も、普段は平和への祈りを捧げるような厳かさや切実さをその光から感じることが多いが、ここには7500人による温かな連帯があった。それはこの楽曲に対する新たな解釈を与え、モノクロームからカラフルへと展開する演出と同様に、頭の中にさらなる「Monochrome」像を描いたのだった。

BABYMETALの新たなパーティーチューン「RATATATA(BABYMETAL × Electric Callboy)」では、冒頭からフロアで肩を組む大量の観客がサークルを作っていた。ジャンルなんて関係ない、ただそうしたくなったからそうする。その光景は実にピュアで、まさに“BEYOND HEAVEY METAL”だった。もしかしたら、彼女たちが次に目指すものはこういった世界なのかもしれない。続く「PA PA YA!! (feat.F.HERO)」が、フロアもスタンドもタオルぶん回しのお祭り騒ぎだったことは言うまでもないだろう。

こんな流れがあったからこそ、傷つきながらも道なき道をひた走ってきたBABYMETALを象徴する曲「Road of Resistance」にも違う響きがあった。真っ暗なステージの中央でたった一つのスポットライトに照らされるSU-METALが両手を水平に掲げ、いつも以上にゆっくりと左右に広げてウォールオブデスをうながす姿は荘厳ですらあった。そこから一気に駆け抜ける5分以上に及ぶ物語はまるで勝利の凱旋歌のようで、ラストのシンガロングでは3人はこれまでに見たことがないくらい満面の笑みを浮かべ、観客の声を受け止めるのだった――と、本来ならここで終わってもよかったのだが、そうはならないのが「メタラジ!FES」の醍醐味だ。つかの間のインターバルのあと、通常よりもロングイントロの「ギミチョコ!!」がスタート。そして、「「メタラジ!FES」、最高だね! 今日は来てくれてありがとう! ここでスペシャルゲストを紹介しまーす! みんなで一緒に歌うよ!」というSU-METALの弾んだ声に導かれ、リーダーズの4人とナヲがセーラー服姿で登場。SU-METALとともにボーカルをとるSUZUKA、セーラー服姿で完璧に踊るナヲなど、この日の楽しさを一気に凝縮したようなパフォーマンスで正真正銘の大団円を迎えた。

これがただのイベントだったとは思わない。「メタラジ!FES」の成功は、全出演者の胸に何か大きなものを残す一夜になったのではないだろうか。特に、現代メタルシーンの最前線に立つBABYMETALにとって、仲間たちとがっちり肩を組み、燃え上がったメタルの炎は、今後も日本におけるメタルの未来にポジティブな影響を与えるに違いない。現に、最新アルバム『METAL FORTH』、『メタラジ!』で広げてきたメタトモの輪は、8月に開催される「SUMMER SONIC 2026」において、一つのステージをまるごとキュレーションする「SONIC "METAL" STAGE ‒ Curated by BABYMETAL」のステージにもつながっていくはずだ。

取材・文=阿刀大志

「TOKYO FM開局55周年記念 BABYMETALのメタラジ!FES」

3月29日東京・東京ガーデンシアター

セットリスト

新しい学校のリーダーズ
01. Toryanse
02. Tokyo Calling
03. オトナブルー
04. Arigato
05. CANDY
06. Pineapple Kryptonite
07. Pineapple Kryptonite Remix
08. Fly High
09. Change
10. One Heart

マキシマム ザ ホルモン
01. 殺意vs殺意
02. ぶっ生き返す!!
03. maximum the hormone II〜これからの麺カタコッテリの話をしよう~
04. What’s up, people?!
05. 恋のメガラバ
06. シミ feat.新しい学校のリーダーズ
07. 恋のスペルマ

BABYMETAL
01. BABYMETAL DEATH
02. from me to u (feat. Poppy)
03. ド・キ・ド・キ☆モーニング
04. Song 3(BABYMETAL × Slaughter to Prevail)
05. メタり!! (feat. Tom Morello)
06. Monochrome
07. RATATATA(BABYMETAL × Electric Callboy)
08. PA PA YA!! (feat.F.HERO)
09. Road of Resistance
10. ギミチョコ!!

「SUMMER SONIC 2026」

BABYMETAL「SONIC "METAL" STAGE ‒ Curated by BABYMETAL」は、8月14日(大阪会場)、8月16日(東京会場)
https://www.summersonic.com/