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リュックと添い寝ごはん/PIA SONAR MUSIC FRIDAYインタビュー

新世代バンド・リュックと添い寝ごはん。“リュクソ”サウンドの核心にある“あたたかさ”の正体とは?

特集連載

第23回

松本ユウ(Vo.&Gt.)

その時に“やりたい音楽”が1枚のアルバム『neo neo』になったという感じ

── 昨年12月にリリースした1stアルバム『neo neo』をつくったことで見えたものはありましたか?

松本 求められているものだけじゃなくていいんだというのは、あの作品を通じて感じられたことですね。自分のやりたい音楽というのをこれからも思いきりやれたらいいなと思いました。

── アルバムを通じて自分たちの音楽性を突き詰めるということを意識したわけですね。

松本 そうですね。その前にリリースした1stミニアルバム『青春日記』とは、また違うテイストの曲にチャレンジしたので。

── そのチャレンジというか変化というのは自然なものだったんですか?

松本 やっぱり聴く曲が変わったりっていう、普段生きていく中での自然な変化ですね。その時に“やりたい音楽”が1枚のアルバム『neo neo』になったという感じです。

── もともと高校の軽音楽部で出会われてバンドを結成したわけですけど、その時点での自分たちのやりたい音楽とはどういうものだったんですか?

松本 高校の頃は、自分たちのやりたい音楽というよりも、自分たちの聴きたい音楽をつくろうというポリシーでやっていました。

── 聴きたいものからやりたいものへ変化していくきっかけとしては、何かあったりするんですか?

松本 コロナの自粛期間というのが結構大きくて、インプットする量が単純に増えたことでやりたいことというのが見えてきたという感じです。

── つくり方に変化はありましたか?

松本 そこは高校生の時から変わらず。基本的に僕が弾き語りしたものにバンドで肉付けしていくというやり方ですね。

── 『青春日記』は3ピースのど真ん中というか、わりと自分たちの音楽への衝動みたいなものを鳴らしているという感じがしますが、『neo neo』ではより日常に溶け込む音楽へと深まっていますね。

松本 そうですね。最初はストレートに「青春」というのがテーマでした。でもその頃から「日常」というのを意識はしていました。好んで聴いている曲も日常に寄り添う音楽が多かったので。その部分を『neo neo』でようやくというか、ひとつ形にすることはできたなという実感はあります。

〈東京少女〉は具体的な誰かではなく、概念として捉えてもらったらわかりやすいかも

松本ユウ(Vo.&Gt.)

── 7月に初のタイアップ楽曲となった「くだらないまま」は書き下ろしでしたが、今回の「東京少女」はどのタイミングでできた曲なんですか?

松本 これは18歳の頃につくった曲です。

── 歌詞もですか?

松本 そうですね。ただ、サウンドもアレンジでガラリと変えたし、展開も違うし、歌詞も書き直した部分もあるし、18歳と20歳の両方を織り交ぜたような感じですね。

── 今回「東京少女」をリリースしようと思ったのはなぜですか?

松本 僕が20歳になるタイミングというのが大きいんですけど、この曲を出すなら今しかないなと思いました。18歳から見た20歳への憧れや不安といったものがテーマだったので、自分が18歳の頃に書いた曲を20歳でリリースするというのは意味のあることだなと思いました。

── 例えば「東京ソング」というジャンルがあるとして、「東京少女」はすごく新しいタイプの東京ソングだなと感じました。外から来た人、もともと中にいた人、東京の切り取り方はいろいろあると思うんですけど、共通しているのは東京という街やそこへの想いを描くことだと思うんです。でも「東京少女」は具体的に東京を描いているわけではないんですよね。そこは意識しましたか?

松本 そうですね。東京の曲というよりは、20歳の曲という方が大きいかもしれないですね。「東京」をテーマにした曲をつくりたいなってずっと思っていたんですけど、歌詞の中では東京を描くよりも18歳や20歳といった年齢を描いた方がリアルな感じがしたんですよね。

── 振り返ることも先を見据えることも大事なことではあるけど、今いるここで何を感じているのかっていうものがあぶり出されていますよね。それは「東京少女」に限らず松本さんの書く歌詞の特徴のひとつだなと思います。

松本 それはやっぱり自分に歌っているからっていうのが大きいかもしれないです。それこそ「東京少女」の歌詞の中にも出てくる〈ゆっくりいこうよ〉っていうフレーズも、どこか生き急いでいる自分に向けても歌っているなって思いますね。

── なるほど。そのリアルさが先ほどおっしゃった「日常」と共鳴しますね。

松本 そうですね。

── 歌詞は書き直した部分もあるとおっしゃいましたが、どのあたりを直したんですか?

松本 書き直した部分は結構多いんですけど、サビはそのまま18歳の時に書いたものですね。ざっくり言うと、1番は18歳の頃に書いたもので、2番からが20歳になって書き直したものですね。

── 最後の〈僕は東京少女さ〉というフレーズのインパクトがすごく強いんですけど、そこは新しく書いた部分にあたるわけですね。

松本 はい。最初に書いた歌詞では〈君〉という言葉がたくさん入ってたんです。でも〈君〉っていうのは、あなたではなく未来の自分のことで。だからそれをはっきりさせるためにも最後は〈僕〉という言葉を入れたかったんです。

── 〈僕〉にすることで、聴いた人が自分の物語にできるという効果がありますもんね。

松本 だから〈東京少女〉というのは具体的な誰かではなく、概念として捉えてもらったらわかりやすいかもしれません。

── そう考えると場所や性別なども超えていけますよね。

松本 そういう匿名性というのはすごく意識しました。

── 他の曲でも匿名性というのは意識されていましたか?

松本 いえ。それは「東京少女」だけと言ってもいいかもしれないです。他の曲はどちらかというと描かれている情景が浮かびやすいものが多いですね。

── 今回、匿名性というものを意識したのは、18歳と20歳という時差が作用したというところはありますか?

松本 確かに、それは大きいかもしれません。

具体的ではないにしても、もうちょっと風景を感じられるようにしたかった

松本ユウ(Vo.&Gt.)

── サウンドに関してはどのようなアプローチをしていったんですか?

松本 構成がガラッと変わったのでそこに合わせてという部分が大きいんですけど、よりあたたかみのある感じを増やしたいと思いました。

── 構成はどのように変わったんですか?

松本 単純に2番以降が今の形になったんですけど、最初の形は2番も1番の繰り返しみたいな形だったんです。具体的ではないにしても、もうちょっと風景を感じられるようにしたかったので。

── 特に間奏のところなんかはそうですね。

松本 そこに街の雑踏を入れたり。

── ああ、そうですね。あたたかみという点においてサウンドで意識されたのはどんなところですか?

松本 リヴァーブ感ですかね。間奏だったり、ソロ前のバッキングでの僕のギターのリヴァーブ感だったりは結構こだわりました。

東京生まれだからこその東京の曲をつくりたいと思っている

── MVについても伺いたいのですが、イメージに関しては結構ディスカッションされたんですか?

松本 監督さんに、この曲のここではこういうところを伝えたくて、みたいな感じですごくやり取りをさせていただきました。

── 映像において一番大切にしたかったものは何ですか?

松本 やっぱり匿名性ですね。そこが何より大事にしたいところでした。ジャケットもそうなんですけど、MVの中に出てくる人物も全員顔が見えないようにして、誰でもないけれど誰にでも当てはまるという感じにしました。やっぱり東京に出てきた人たちって、最初は不安もあると思うんですよね。そういう人たちにとってこの曲が故郷みたいなあたたかいものになってくれたらいいなと思うし、実家に帰ってきた時のような安心感を与えられたらいいなと思います。少しでも勇気づけられる曲になってくれたらと思ってつくりました。

── リスナーの背中を押してあげるというのは、音楽をやる上で大切にされていることですか?

松本ユウ(Vo.&Gt.)

松本 そうですね。でもそれをストレートに言わないようにはしています。「がんばれ」とかはやっぱり書けないなと思っちゃうんです。その前に自分ががんばらなきゃってなるので(笑)。でも僕たちの曲を聴いてくれる人には元気になってほしいし、安心してほしいと思うので、ストレートには言わないけど、少しでもそうなれるようにと思って曲をつくっています。

── すごい今更なんですけど(笑)。松本さんは東京のご出身ですか?

松本 はい。僕は東京生まれ東京出身です(笑)。

── そうすると、地方から出てきた人が持っている上京にまつわるストーリーがないわけじゃないですか。そこは曲をつくる上で、羨ましい部分だったりするんですか?

松本 逆に僕は東京生まれだからこその東京の曲をつくりたいと思っているんです。東京って故郷としてイメージする人ってあまりいないと思うんですよね。故郷っていう言葉の持つ響きと東京があまりにもかけ離れているというか。でも例えば僕みたいに東京で生まれ育った人にとっては当たり前だけどそこは故郷だし、上京してきた人にとってももしかしたらそこが故郷になっていくのかもしれないし。都会ではあるけれど故郷なんだよっていう歌をつくっていきたいと思うんですよね。

── カップリングの「ふたり暮らし」もそうなんですけど、いろんな音楽がうまく溶け合って聴こえてくるんですよね。そこからは、何か特定のものに規定されたくないというバンドの意思のようなものを感じるんです。

松本 なんか……元を辿れば不安なんだと思います。たぶん。そういうものがサウンドにも出てるし、歌詞にも表現されているのかなって。僕の書く楽曲って透明だなって思うんですよね。色がないというか。そこへの不安がどうしても滲み出るのかもしれません。

── たぶんその透明性とそこへの不安が混じり合ってリュクソの描く“あたたかさ”になっているのだと思います。「ふたり暮らし」の歌詞に〈それもそれでいっか〉という言葉が出てきますよね。なんか、今のお話を聞いてその言葉がグッときちゃいました(笑)。

リュックと添い寝ごはん

松本 ありがとうございます(笑)。いつも何かで不安になったら、〈それもそれでいっか〉って思うようにしています。やっぱり肯定していきたいと思うから。だから結局は自分に歌っているんだなって思いますね。

── でもそうやって自分を通過するものでなければ自分以外には伝わらないと思いますし、そういう表現だからこそ「日常」なんでしょうね。

松本 ライブもそうなんですけど、あたたかい空間というものを、音楽をやっていく上でずっと意識していきたいです。

Text:谷岡正浩 Photo:吉田圭子

リリース情報

配信シングル「東京少女」
11月2日 (火)リリース
[収録曲]東京少女/ふたり暮らし
https://jvcmusic.lnk.to/tokyoshojo

配信シングル「home」
12月15日 (水)リリース
[収録曲]home

プロフィール

リュックと添い寝ごはん
2017年11月10日結成。東京都内を拠点に活動中、平均年齢20歳の3ピースバンド。通称・リュクソ。2019年、ティーンエイジャーから圧倒的支持を得るインディーズバンド&アーティストの音楽配信サイト「Eggs」の再生アーティストランキングで堂々1位を獲得。ロッキング・オンが主催するバンド・アーティストのオーディション「RO JACK for ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019」では優勝アーティストに選ばれ、国内最大級のロック・フェス「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019」に出場を果たすなど、今最も注目を浴びている新世代アーティスト。2020年3月、初の全国流通となる1stミニアルバム『青春日記』をタワーレコード限定でリリース、12月には1stアルバムで『neo neo』でメジャーデビュー。2021年7月に自身初のタイアップ書き下ろし楽曲「くだらないまま」、11月2日に「東京少女」を配信リリースした。

関連リンク

公式サイト:https://sleeping-rices.com/
Twitter:https://twitter.com/sleeping_rices
Instagram:https://www.instagram.com/sleeping_rices/
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCmaec75I8GbMci0_IFDq7ig

番組概要

放送局:J-WAVE(81.3FM)
番組名:PIA SONAR MUSIC FRIDAY
ナビゲーター:櫻井海音
放送日時:毎週金曜 22:30~23:00
番組HP:https://www.j-wave.co.jp/original/sonarfriday/
番組twitter:https://twitter.com/SONAR_MUSIC_813
ハッシュタグ:#sonar813
番組LINEアカウント:http://lin.ee/H8QXCjW