
まっすぐに伸びる植物のような人だ。
ナチュラルで、穏やかで、瑞々しい。彼が放つマイナスイオンに、自然と心が浄化されたような気持ちになる。
そして、その細くしなやかな茎は、高い高い空に向けて、今も一直線に伸び続けている。それは、出演作を重ねるたびに進化を遂げる彼の姿そのものだ。
俳優・鈴木仁。ドラマ・映画と出演作が目白押し。新世代俳優の筆頭株だ。豊かな土に根を張り、眩しい陽射しを浴びて、ぐんぐん成長する彼は、これからどんな花を咲かせるだろうか。

── 現在、dTVでは、ドラマ『モトカレ←リトライ』と地上波放送版では描かれなかった、蜜(川津明日香)にリトライを仕掛けられたモトカレ・楓(鈴木仁)目線の物語を描いたオリジナルドラマ『モトカレ←リトライ ~カノジョが知らない僕たちの本音~』が配信中です。楓を演じる上で難しかったことは?
楓は、裏でいろんな感情を抱えつつ、それを表には出さないキャラクター。そこは複雑だなと思いましたけど、ここのシーンでは本音は出てこなくても大丈夫とか、ここのシーンは楓の本心が必要な要素だから、ちょっと見えるようにしてみようとか、監督と話し合いながら、ひとつひとつつくっていきました。
── 楓と鈴木さんの共通点といえば?
あんまりないですね。僕は楓みたいにいつまでも引きずったりしないので(笑)。
── じゃあ、昔の恋人との思い出の品とかも捨てられますか。
捨てられますね。うちは、母親が断捨離大好きな人なんですよ。だから、思い出のものだからというよりも、いらなくなったら捨てるという習慣が染みついていて。もちろんもらってすぐに捨てるとかはないですけど。別れてしばらく経って、それが必要のないものだったら、そこはもう…。基本的に物が少ないタイプなんです。
── では、素の鈴木さんと楓はそんなに似ていないという感じでしょうか。
あ、でも、男同士でいるときの落ち着いた感というか、ちょっと一歩引いた感は、自分の高校時代と似ているのかなと思います。今でもそうですけど、あんまりグループが得意ではなくて。それよりも、1対1で喋りたいタイプ。そこは近いのかなと。
── そこで言うと、『モトカレ←リトライ〜カノジョが知らない僕たちの本音〜』は吉田仁人さん演じる和葉とのやりとりがメイン。鈴木さんとしてはやりやすかったんじゃないですか。
そうですね。あ、でも卓球しながら喋るのは難しかったです(笑)。仁人も卓球は得意じゃないと言ってたので。球が全然違う方向に飛んだりして、なかなか続かなかったんですけど。
── 学生の頃、よくスポッチャで遊んでいたと聞きました。当時の経験が活きたのでは?
だから最初の方はずっと僕が球出しをしていました(笑)。自然にできるように練習したので、卓球のシーンは僕らのラリーにも注目してください。
── あとはサウナのシーンも多かったですね。鈴木さんはプライベートでサウナは?
好きです。毎日行きたいっていうほどじゃないですけど、行けるときに1週間に1回とか。友達とたまたまサウナに行こうよっていう話になって、そのまま一緒に行ったりということはありますね。
── じゃあ、「ととのう」もばっちり経験済み?
場所にもよりますけど。大事なのは、サウナの温度と水風呂の温度。サウナは熱めの方が好きです。理想の温度は95度くらい。熱いのが好きなので、とにかくどこでもまずはいちばん上に座ります。水風呂がぬるいのはツラいです。1回、20度くらいの水風呂に入って、ダメじゃんってなりました(笑)。好きな温度は16度くらいかな。サウナに12分入って、水風呂に90秒、外気浴5分を3セットが、僕のいつものパターンです。
『モエカレ〜』の現場では、「ジンジン」と呼ばれていました

── 現在、全国大ヒット上映中の映画『モエカレはオレンジ色』では消防士の姫野を演じています。台本上でも爽やかであることが前面に押し出されたキャラクターでした。
監督からもよく現場で「もうちょっと爽やかに」って言われました。で、オッケーだったら「爽やかオッケー」と言ってくださるんですけど(笑)。
── 「爽やかオッケー」はパワーワードですね(笑)。鈴木さんなら普通に立っているだけでも爽やかそうですが。
いやあ、どうなんですかね(照)。
── 別のインタビューで「あんまり明るい性格でもない」とおっしゃっているのを読みました。
自分ではそう思います。でも、それも最近は少し変わりはじめていて。もともと人見知りだったし、自分から喋らない方だったんですけど、この仕事を始めてから、だいぶ自分から喋るようになったし、明るくなった気がします。やっぱりどこに行っても初めましての方とお仕事をすることが多いので、いつまでも人見知りとは言っていられないんですよね。コミュニケーション能力に関しては結構成長しているんじゃないかなと思います。
── じゃあ、今回の現場でも?
今回の現場に関しては、浮所(飛貴)くんのコミュニケーション能力が高すぎて。会ってすぐ「あだ名決めるね」みたいな感じで。(上杉)柊平くんのことは「柊くん」、古川くんのことは「ゆう兄」と1日目にして呼んでいました(笑)。
── 鈴木さんのあだ名はどうなったんですか。
浮所くんが他の人がつけるようなのは嫌だからと言って、最初は「きじくん」だったんですけど。
── きじくん……?
「すずきじん」の「きじ」をとって「きじくん」だそうです。そしたら柊平くんが「絶対それ、仁、反応しないよ」ってツッコんで、確かにそれは僕もさすがに反応できないなと(笑)。それで、「ジンジン」に落ち着きました。
── いいあだ名ですね。
ただ、僕、学生時代から結構「ジンジン」と呼ばれていて。「仁」って音が言い切る感じになるから、呼ぶとちょっと怖いんですよ。「ジンジン」の方がゆるく呼べるから、わりと「ジンジン」と呼ぶ人が多くて。他の人がつけるようなのは嫌と言いながら、結局みんなと同じあだ名になったなっていう(笑)。
面白い役に挑戦できたことで、演じる楽しみが増えた

── 鈴木さんは現在22歳。同級生は、今年、新社会人という年です。
みんなとの会話の内容が結構変わりましたね。今、俺はこういう仕事に就いているんだとか、こういうのを習っているんだとか、そういう現状報告をしつつ、こき使われているんだ〜みたいな愚痴もこぼしつつという感じです。
── そういう話を聞くとワクワクするタイプですか。それとも置いていかれるような気持ちになるタイプですか。
みんながしっかり自分の仕事をしているのを見ると、多少不安にはなりますよね。もちろん自分も一生懸命お仕事をやらせていただいていますけど、また職種が違うので、ちょっと感覚が違うというか。
そういう面では一瞬不安にもなるけど、みんなの仕事の話を聞けるのは楽しいです。新しい世界を覗ける面白さというか。社会人になると、自分がイメージしていた以上に細かい仕事がいろいろあって。みんなそういう仕事をやってるんだって思いながら、その仕事ならではの話を聞けるのは、学生時代にはなかった楽しさだなって気がします。
── ちなみに鈴木さんは名刺交換ってやったことありますか。
まず自分の名刺がないですからね。友達から名刺をもらったりするんですけど、自分の名刺がないので、名刺交換自体ができないんです(笑)。
── やってみたいですか。
いや、いいです。自分の名前を残したものを相手に渡すのは怖いので、僕はもらうだけにしておきます(笑)。


── 周りも社会人になって、自分自身の仕事に対する姿勢に変化を感じるところもありますか。
僕自身の変化という意味では、もう少し前ですね。モデルがやりたくてこの業界に入ってきて、そこからお芝居もやるようになって。でも、最初の頃はお芝居っていうものがどういうものなのか何もわからなくて、どうすればいいんだろうと思いながら、いただけるお仕事をやっていくという感じだったんですけど。
『花のち晴れ〜花男 Next Season〜』のときに、自分と同世代の人たちがすごく活躍されているのを目の当たりにして、このままじゃいけないなって気づいた。そこからお芝居への向き合い方もひとつスイッチが変わって。僕にとって『花晴れ』はすごく大きかったです。
── 『花晴れ』を経て、どう変わっていったのでしょうか。
そのあとからいただける役の幅が少しずつ変わっていったんですよ。わりとカッコいい役が続いていたのが、『のぼる小寺さん』で四条という異質な役をやらせてもらって。そこで自分にはこういう方向性もあるんだというものが見えた。そこから演じる楽しみが増えて、もっといろんな役に挑戦していきたいと考えるようになりましたね。
── なるほど。今はカッコいい役よりも、面白い役がやりたいですか。
面白い役をやっているときって、やっぱり楽しいんですよ。僕は自分から変になろうとは思わない人間なので(笑)。自分の人生じゃ絶対経験できないようなことを経験できる。そうすると、演じた役からまた違う人生観をもらえて、自分の新しい部分を開拓したり発見したりするきっかけになる。それが楽しくて。その役だからこそできる行動というのが絶対にあると思うので、今はそれをもっと遊び心を持ちながら楽しんでいきたいと思っています。
韓国のダンスプラクティス動画を見るのが好きです

── では最後に、鈴木さんの日常も少し覗かせてください。よく使うスマホアプリはなんですか。
YouTubeですね。格闘技とかヒューマンビートボックスのバトルとか、あとPVを見るのが好きです。PVって映像としてオシャレだし、ショートスパンで見られる芸術作品。音楽をすごく聴くというタイプじゃないので、どのアーティストのどのPVが好きというのは特にないんですけど、ランダムで流して、それを見ているのが楽しいという感じです。あと、ダンスも好きなので、韓国のアーティストのダンスプラクティス動画をよく延々と見ています。
── 格闘技を好きという話はよくおっしゃっていますが、中でもどれが好きというのはありますか。
キックボクシングに、総合格闘技。メジャーですけど、K-1、RIZINとかは大好きですね。ハマったのはここ2、3年ぐらいの話で。自分ではできなそうだけど、やっぱり男の憧れみたいなところがあるみたいです。
── 観戦好きが高じて、いつか自分でやってみたりとか。
通ってみたいな、というのはありますね。
── もしかしたら、いつかムキムキになっていたり……?
それはないですね(笑)。学生時代は部活でずっとサッカーをやってましたが、もうここ何年もまともに運動をやらなくなったので。体を動かす一環として自分の好きなことができたらなという感じです。格闘技なら筋力も鍛えられるし、シェイプとしてもいいですし、機会があれば挑戦してみたいです。

作品紹介
dTVオリジナルドラマ「モトカレ←リトライ ~カノジョが知らない僕たちの本音~」前後編配信中
https://video.dmkt-sp.jp/ft/p0007968
Ⓒ華谷 艶・小学館/エイベックス通信放送
「モエカレはオレンジ色」 全国大ヒット上映中!
https://movies.shochiku.co.jp/moekare-movie/
©️2022「モエカレはオレンジ色」製作委員会 ©︎玉島ノン/講談社
撮影/友野雄、取材・文/横川良明、企画・構成/藤坂美樹、ヘアメイク/牧野裕大(vierge)、スタイリング/伊藤省吾(sitor)、衣装協力/ジャケット¥91,300、パンツ¥44,000/共にリトルビッグ、Tシャツ¥9,900/ニードルズ(ネペンテス)、シューズ¥23,000/クラークス オリジナルズ(クラークス ジャパン)
問い合わせ/
リトルビッグ
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