ワッツ・オン・ブロードウェイ?~B’wayミュージカル非公式ガイド
ワッツ・オン・ブロードウェイ?~B’wayミュージカル非公式ガイド【2026年冬号】
年4回更新
第10回
ブロードウェイの開幕ラッシュは毎年3~4月。前年12月にはあらかたの新作情報が出揃っているのが通例で、昨年と一昨年の当連載冬号を振り返ってみても、「これから始まる作品」欄に10作以上が並んでいる。ところが2025-26シーズンは、次のページで示す通りの寂しさ。情報が出るのが遅いだけなのか、それとも2026年のトニー賞は非常に少ない候補作で争われることになるのか……。分からないが、2024年のオフの話題を独占し、筆者自身観たくて観たくてたまらなかったのに叶わなかった超新演出版『キャッツ』のオン進出がついに正式に発表されたので、とりあえず3月にはブロードウェイに行く予定だ。
その暁には今シーズンの新作のミニレポートをお届けできようが、昨シーズンの作品に関しては既に観たものすべてレポートし終えてしまったため、今号では2025年夏にロンドンで観てきた、ブロードウェイで「も」上演中の2作を取り上げる。同じ作品のレプリカ公演であっても、ブロードウェイとロンドンでは雰囲気が異なることも多いなか、ブロードウェイ連載でロンドン公演を取り上げるのはどうなのだろうという気もするのだが、それを言い出したら1回1回少しずつ異なるのが生の舞台の常ということでご容赦を。また、ブロードウェイでは年越しが鬼門のようで、年末に急にクローズが発表され、その数日後にバタバタと、年明けを待たずに終わってしまう公演が例年少なくない。今回取り上げる2作も、当記事がアップされる頃には終わっている可能性がなくもないのだが、それは年始更新連載の宿命ということで、こちらもご容赦いただきたい。という言い訳をした上で、いざ。
■高度な英語力が求められる『オペレーション・ミンスミート』

第二次世界大戦中のイギリス軍の“奇策”をミュージカルに、しかもコメディにしてしまうという発想が非常に筆者好みで、このロンドン旅行の目玉と位置付けて楽しみにしていたのだが……残念ながら、筆者の英語力ではまるで歯が立たなかった。まず戦争用語とコメディ英語がちりばめられた台詞が抜群に難しく、ビジュアルの力を借りようにも、たった5人の出演者が様々な役を性別関係なしに、衣裳はほぼそのままに小道具を変えるだけで演じ分ける趣向と、大きな転換をしないシンプルなセットという、いかにもイギリス発らしい演劇的な演出がそうはさせてくれない。そんなこともあろうかと、珍しく映画版のストーリーを予習の上で臨んでいたのだが、同じ題材を扱っているだけで映画が原作というわけではないため、全くその通りには進まない。結果、こんな話をミュージカルコメディにしたってすごいよね!という、観なくても分かる感想しか抱けずに終わったのだった。
それでも新規性の高いミュージカルであることはきっと間違いないので、英語力に自信があればぜひ観劇を。ちなみに本作、脚本と作詞作曲を手掛けた4人のうち3人が出演もする形でイギリスで初演され、ウエストエンドで高い評価を獲得したのちにブロードウェイに進出。その際オリジナルキャストが続投したため、作者3人は現在、筆者が観たウエストエンド公演ではなくブロードウェイ公演に登板している。どちらが“本家”か分からない、言い換えればどちらも“本家”と言える状態にあるため、しつこいようだが英語力さえあれば、オリヴィエ賞受賞の底力はどちらで観ても味わえるだろう。
■日本版キャスティング妄想が捗る『グレート・ギャツビー』

たびたび映像化・舞台化されているアメリカの超有名小説を原作に、韓国のプロデューサーが、日本でもお馴染みの作曲家ジェイソン・ハウランドらと共にアメリカで初演した新版『ギャツビー』。絢爛豪華な装置と衣裳は見応えがあり、装置と映像の境目を分からなくするような見せ方も面白かったが、全体としては、新作なのにまるで往年の名作のオーセンティックなリバイバルを観ているような気分になる舞台だった。
とはいえ『ギャツビー』は、宝塚歌劇団で繰り返し上演されていたり井上芳雄主演版が製作されたことがあったり、本作もブロードウェイではジェレミー・ジョーダンが主演していたりすることが示す通り、主演俳優のスター性が物を言う物語。ロンドン公演主演のジェイミー・ムスカトは、実力は申し分ないがスター性という点ではやや物足りず、作品が鮮烈に見えなかったのはそのためもあるのかもしれない。そういう意味では、日本版キャスティング妄想が非常に捗る作品。韓国と日本ミュージカル界の近さを考えると、日本版の実現可能性は十分にあると思われ、個人的には京本大我ギャツビーで観てみたいのだがどうだろうか。
【2025-26シーズンの新作】
*情報は2025年12月22日時点のもの
■既に上演されている作品
『ビートルジュース』2026年1月3日まで
ジェシー主演の日本版も好評を博した作品の2度目のカムバック。ラストチャンス!
https://beetlejuicebroadway.com/
『チェス』2026年5月3日まで
日本でも何度か上演された80年代の名作が豪華キャストでリバイバル。M・メイヤー演出。
https://chessbroadway.com/
『マンマ・ミーア!』2026年2月1日まで
日本でもお馴染みの作品の、BWには珍しいリバイバル(別演出)ではなくカムバック。
https://mammamiabway.com/
『ラグタイム』2026年6月14日まで
2023年に日本初演された作品の、BWでは2度目のリバイバル。評判上々。
https://www.lct.org/shows/ragtime/
『two strangers(carry a cake across new york)』
イギリス発の恋愛コメディ。本作がミュージカルデビューのコンビが作詞作曲している。
https://twostrangersmusical.com/
■これから始まる作品
『キャッツ:ザ・ジェリクル・ボール』2026年3月18日プレビュー開始予定
2024年のオフBWで大きな話題を呼んだボールルーム版キャッツがついにオンに登場!
https://catsthejellicleball.com/
『ロッキー・ホラー・ショー』2026年3月26日プレビュー開始予定
映画版がカルト的人気を誇り、日本でも何度か上演歴のある70年代初演作のリバイバル。
https://www.roundabouttheatre.org/get-tickets/2025-2026-season/rocky-horror
『Titanique』2026年3月26日プレビュー開始予定
セリーヌ・ディオンの楽曲で綴る映画『タイタニック』のパロディ。世界各地でヒット中。
https://titaniquebroadway.com/
『ロストボーイ』2026年3月27日プレビュー開始予定
1987年公開のホラー映画をトニー賞2度受賞のM・アーデン演出でミュージカル化。
https://www.lostboysmusical.com/
『Beaches(フォエバー・フレンズ)』2026年3月27日プレビュー開始予定
1988年に映画化もされたベストセラー小説の舞台化。30年に及ぶ友情と愛の物語。
https://beachesthemusical.com/
『シュミガドーン!』2026年4月4日プレビュー開始予定
『ブリガドーン』をパロディ化した米ドラマをミュージカル化するコメディ。
https://schmigadoonbroadway.com/
【2024-25シーズンの準新作】
『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』
キューバ音楽のアルバムのジュークボックス。トニー賞振付・編曲・音響・助演女優賞。
https://buenavistamusical.com/
『永遠に美しく…』
メリル・ストリープ主演映画をC・ガテリの演出・振付で舞台化。トニー賞衣裳賞。
https://deathbecomesher.com/
『ジャスト・イン・タイム』
J・グロフが米歌手ボビー・ダーリンに扮する新作。トニー賞6部門ノミネートも無冠。
https://justintimebroadway.com/
『メイビー、ハッピーエンディング』
韓国発の作品がトニー賞を席巻。作品・演出・脚本・楽曲・装置・主演男優賞の6冠を達成した。
https://www.maybehappyending.com/
→2025年春号(https://lp.p.pia.jp/article/series/352541/415384/index.html)でレポート済
『オペレーション・ミンスミート』
第二次大戦中の英国軍の“奇策”を描くロンドンのヒット作だが、トニー賞では奮わず1冠。
https://operationbroadway.com/
【ロングラン作品】
■日本で既に上演された/されている作品
『アラジン』
ディズニーアニメが舞台ならではの手法で表現された秀作。魔法の絨毯は本当に魔法。
https://www.aladdinthemusical.com/
『シカゴ』
1996年から続く最長ロングラン作。1月11日までトニー賞俳優A・ニューウェルが出演中。
https://chicagothemusical.com/
『ムーラン・ルージュ!』
2021年のトニー賞受賞作。日本版とはやはりだいぶ様相が異なるので観比べ全力推奨。
https://moulinrougemusical.com/
『SIX: The Musical』
ヘンリー8世の6人の妻たちが暴れ回る痛快作。日本版が上演された今こそ観比べたい。
https://sixonbroadway.com/
『ライオンキング』
『シカゴ』に次ぐロングラン第2位を安定飛行中の大名作。相変わらず満席を誇る。
https://www.lionking.com/
『ウィキッド』
定期的に観たい傑作。待望の映画版後編『永遠の約束』は3月6日ロードショー。
https://wickedthemusical.com/
■日本未上演の作品
『&ジュリエット』
ロミジュリの後日譚をマックス・マーティンの大ヒット曲で綴るロンドン発の傑作。
https://andjulietbroadway.com/
『ヘイディズタウン』
『グレコメ』の演出家が現代的に描くギリシャ神話。2019年のトニー賞で8冠を達成。
https://www.hadestown.com/
『ハミルトン』
2016年のトニー賞総なめ作。最近ようやく、入場率が100%を超えない回も出てきた。
https://hamiltonmusical.com/
『ヘルズ・キッチン』
アリシア・キーズのジュークボックス。演出はM・グライフ。2024年トニー賞で2冠。
https://www.hellskitchen.com/
→2025年秋号(https://lp.p.pia.jp/article/series/352541/437911/index.html)でレポート済
『MJ The Musical』
M・ジャクソンの伝記系ジュークボックス。各国で上演され始めており、日本でも…?
https://mjthemusical.com/
『ブック・オブ・モルモン』
2011年のトニー賞を制した、もはや古典の領域の傑作。1周回って日本語版を妄想中。
https://bookofmormonbroadway.com/
『グレート・ギャツビー』
宝塚版でもよく知られる名作小説をJ・ハウランドの音楽で。2024年トニー賞衣裳賞。
https://broadwaygatsby.com/
『アウトサイダー』
原作は同名小説および巨匠コッポラ監督による映画版。2024年トニー賞で作品賞含む4冠。
https://outsidersmusical.com/
→2025年秋号(https://lp.p.pia.jp/article/series/352541/437911/index.html)でレポート済
プロフィール
町田麻子(まちだ・あさこ)
1980年ロンドン生まれ、横浜育ちのミュージカル文筆家。2002年早大一文演劇専修、2022年東京藝大楽理科卒。公演パンフレット、演劇誌、WEB等で主にミュージカルの解説文、インタビューやレポート記事を執筆。10代からブロードウェイ観劇旅行を毎年続けるミュージカルおたく。趣味は翻訳版の妄想キャスティング。
町田麻子ウェブサイト
https://www.rodsputs.com/