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BOYSぴあSelection 第62回 西垣匠

西垣匠「僕のお芝居で、誰かが元気になるきっかけになれば」

全2回

PART1

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カメラを射抜く視線に、男の色気が迸る。

2021年に俳優デビュー。以降、着々と出演作を重ねてきた西垣匠も今年で25歳になる。積み上げてきた経験は、湿度をまとった色気となって醸成し、今までとはまた違う美しさを宿らせる。

次世代を担う若手俳優の一人として飛躍が期待される西垣は、どんな想いを胸に作品に挑み続けているのか。決して自分に自信があるわけではないという彼が、それでもカメラの前に立ち続ける理由に迫った。

冬の二度寝ほど幸せな時間はないです

── 自身初のカレンダー「西垣匠2024年カレンダー Sho Nishigaki Calendar 2024」が発売中です。今回は西垣さんご自身のリクエストで、沖縄での撮影も実現したのだとか。

春・夏は沖縄、秋・冬は東京で撮らせてもらいまして。沖縄は人生初だったんですけど、ずっと行きたかったので、すごく楽しかったですね。僕が絶対行きたかったのは、美ら海水族館! 水族館が好きなんですよ。美ら海水族館はジンベエザメが目玉の一つで、大きな水槽の中で泳ぐジンベエザメは迫力がありました。

東京での撮影は、よみうりランドのイルミネーションが良かったですね。おかげで冬らしい温かい感じに仕上がりました!

── きっとファンのみなさんも西垣さんと一緒に四季を過ごせるのがうれしいと思います。西垣さんは春夏秋冬でどれがいちばん好きですか。

冬ですね。二度寝が好きなんですよ。寒い朝、1回起きて、その後もう1回布団にくるまって寝るときほど幸せな時間はないです。なんだったら二度寝できるようにあえてアラームを早めに設定してるくらいです(笑)。

── 暑いのと寒いのだと、どっちが得意ですか。

どっちも苦手ですけど、まだ寒い方が大丈夫かもしれない。寒いのは、着込めばなんとかなるので。寝るときも、いつも靴下を履いて寝てます。あとは、おでんとか辛いラーメンとか、寒い季節だからこそ楽しめる料理があるのもいいですよね。

── また、ファッション&カルチャー雑誌・NYLON JAPANの20周年プロジェクトとして映画『みーんな、宇宙人。』が公開されます。

モジャという未知の生き物からわかる通り、不思議な世界観のお話で。衣装もNYLONさんという感じなんですね。だから僕自身も演じるにあたって、このちょっと変わった世界観から外れないようにしようというのは意識していました。

── ちょっと実際の世界よりも浮いているような。

本当にいたら浮いちゃうけど、モジャにはそこが刺さったというイメージでした。この『みーんな、宇宙人。』というタイトルも、宇宙人なのはモジャだけじゃなくて、登場人物側もなんだろうなと僕は勝手に解釈していて。つい僕たちの視点で考えてしまうけど、モジャから見たら僕らも宇宙人。普段の会話でもちょっと変わってる人のことを「宇宙人」という言い方をすることってあるじゃないですか。そういうのも含めて『みーんな、宇宙人。』なんだろうなと思って。本当にいたらちょっと不思議ちゃんと言われるような、少し変わった、でもそこが愛らしいキャラクターとして演じられたらいいなと。

── お芝居って、作品のカラーによってトーンも調整しないといけないじゃないですか。必ずしもリアルな演技が正解じゃない。そこを掴むのって大変だろうなと、はた目で見ていて思います。

でもそこが醍醐味でもあるんですよね。まずは1回台本を読んで、こういう感じなんだと作品の世界をイメージする。あとはそこに自分がどれだけ近づいていけるか。作品ごとに求められるものが違うからこそ、毎回考えるし楽しいです。

『鹿楓堂よついろ日和』で気持ちが動くことを知った

── 西垣さんは2021年、テレビドラマ『夢中さ、きみに。』で俳優デビュー。そこからコンスタトに出演作を重ねていますが、演技についてはどんなふうに勉強をしていったんですか。

はじめは演技の先生に見てもらって、そこでこういうふうなお芝居をしていこうという方向性は決まったんですけど、あとはもう現場に行って、その都度自分で考えて、思いついたことをチャレンジしていってという感じで。正直、最初の頃はなかなか自分の感情が追いついていなかったです。練習したことを現場で一生懸命やるだけで、楽しいと思える余裕もなく、ただただがむしゃらだった。お芝居が楽しいと思えるようになったのは、ある程度自分の中で余裕が出てきてからですね。

── 役を生きるという感覚を最初に理解できたのはいつですか。

『鹿楓堂よついろ日和』というドラマですね。僕が演じたのが、千利くんという、戸次(重幸)さん演じるオーナーシェフのもとで働く見習いシェフで。ある日、オーナーから「もう店に来なくていい」と言われるんです。実はそれはオーナーが千利くんに気を遣って言ったことだったんですけど、それを知らない千利くんは悩みながらも「一生懸命頑張るから、これからも働かせてください」と頭を下げる…というシーンで。台本には何も書かれていなかったんですけど、ドライ(リハーサル)のときに僕が泣いちゃったんですね。僕自身も泣くつもりなんてなかったからびっくりして。そこで泣いたら本番でも泣かないといけないじゃないですか(笑)。

── 2回目って難しいですよね(笑)。

だから、泣いちゃったな…と思ったんですけど、僕はそのときまで台本に「泣く」と書いてあるから泣く気持ちにならなきゃいけないとずっと思っていて。でも、勝手に涙が出るという経験をしたときに、これが気持ちが動くってことなのかなって、ちょっとわかったような気がしました。

── そのときのシーンは今までの他のお芝居と何か違ったところがあったんでしょうか。

それが全然わからないんです。もちろん戸次さんのお芝居が素晴らしいものだったというのはあると思うんですけど、自分としては本当に今まで通りやったつもりだったから。自分の予想もしていなかったものが現場で生まれた、というのはあのときが初めてでした。

── ちなみに本番ではうまく泣けましたか。

何回かやらせてもらいました(笑)。やっぱり泣こうとすると泣けないんですよね。たぶん自然に涙が出るのは、相手の台詞をちゃんと聞いてるとき。どうやって泣くかとか言われたら、結局それでしかなくて。相手の台詞を聞くことしか答えが出てこないです。

怒るってエネルギーを使うから、人に怒ることはあまりないです

── そもそも普段から喜怒哀楽は激しい方ですか。

いや、ないですね。僕、わりと感情死に人間なんで(笑)。

── パワーワードが出た(笑)。

本当に感情が表に出ないんですよ。だから、サプライズがめっちゃ苦手。自分の中でマックスでうれしいのに、リアクション薄いねと言われることがよくあります(笑)。

── じゃあ、あまり人に怒ることもない?

ないです。たとえば友達と喧嘩になりそうになったり、どっちかの機嫌が悪くなったら、その前に1回シャットダウンします。で、一晩寝たらなんともなくなるから、次の日にはもう何もなかったかのように普通に接します。

── それは怒ってる自分を他人に見せるのが嫌だから?

怒るのってエネルギーがいるじゃないですか。それがちょっと…(笑)。そういう意味では怒らないのって、冷たい人間なんだと思います。あとは、怒るのってどっちもいい思いをしないので。怒ると、自分の言いたいことにプラスで相手を攻撃しようという感情も乗ってきちゃうから、そういうのってよくないなと。言いたくないことまで言っちゃいそうになるのは嫌なんです。だから、1回落ち着いて、それでも自分が言いたいことがあれば、それは相手に言うようにしています。

── すごく大人だし、ある意味では低燃費でいきたいタイプなのかもしれない。

そうかもしれないですね(笑)。

── なぜこの話を聞いたかというと、俳優は感情表現が仕事じゃないですか。普段、あまり感情を表に出さない西垣さんからすると、自分では到達したことのない気持ちを表現するのって、すごく大変なんじゃないかなと思って。

自分で経験したことはないけど、今まで観てきたドラマや映画を参考にして、こういう気持ちなんだろうなと想像することはできるので、まずはそこから気持ちをつくっていきます。僕が台本を読んだときに考えるのは葛藤の度合いで。

── 葛藤の度合い?

感情が動くときって、必ず葛藤があると思うんです。まずはその大きさを知る。たとえば、自動販売機でジュースを買いたいとします。でも、その前に虫がいて、買いたいけど買えない…というような葛藤もあれば、一生の別れのような葛藤もある。その大きささえわかっていれば、自然と相手に向ける矢印の太さも決まるので。台本を読んだときに、ここはこれくらいの大きさの葛藤かなというのを理解して、あとはもう現場に行って、その場で生まれてきたものに委ねるようにしています。

── となると、完成した作品を観たときに、こういう顔をしていたんだと、今まで見たことのない自分に出会うような瞬間もありますか。

ありますし、その逆もあります。僕はここまで表現したつもりでいたけど、映像で見たらそんなに顔が動いていなかったなと思うときもあって。どちらかといえば、そっちの方が多いかもしれない。やっぱり自分の演技を振り返るときって悪いところばかり目についちゃうので。「お、今の自分は良かったな」と思えるところまでは、まだ辿り着けていないのかもしれません。

── 個人的には、『みなと商事コインランドリー2』の最終回で、砂浜で湊さんに「あんたを忘れるなんて俺はバカだ」と伝えたときの顔は、もちろんシンなんだけど、今までのシンを超越したものを感じました。

あそこも泣くつもりはなかったんですよ。けど、2日前ぐらいに「あの台詞で涙流したら最高だよね」と監督が言ってきて。そんなつもりまったくなかったんだけどなと思いながら、頑張りました。

悔しさは大事。でも、あとはもう自分との戦いです

── 『みーんな、宇宙人。』で演じたショウは、自分に自信のない男の子です。西垣さんは自分に自信はありますか。

ないと思いますよ。器用貧乏な人間なんで(笑)

── はたから見れば、すべてを持っているように見えますが…。

いや、でも100点をとったことがない人間なんです。確かになんでも人並みにはできるけど、でも人並み以上にできることは何もないみたいなイメージです。だから、突出した何かがある人を見ると羨ましくなる。そっちの方がプロだなって気がします。

── そういう自分にはないものを持っている人と一緒に仕事をすると、悔しくなったり、かなわないなと思うこともありますか。

悔しい、はあります。かなわないももちろんあるけど、大ベテランの方とかとご一緒すると、土俵が違うのは当たり前。その人を意識したとて自分の何かが変わるわけでもないので。悔しさは成長につながるから大事にします。でも、あとはもう自分との戦いです。

── 表に出る人って自分自身が商売道具です。そういう人が、自分に自信を持てないとメンタル的にもしんどくならないのかなと思うのですが。

確かに自分に自信はないですけど、僕はこの仕事をやってて楽しいし、それを見て喜んでくれるお客さんがいるからいいかなと思ってるんですよね。自分が楽しいと思うことをして、それで喜んでくれる人がいるなら、それ以外はいいかなって。自分がどうにかできる範囲を超えたことについて、あれこれ考えても仕方ないですしね。

── 遠くを見るのではなく、自分の足元を大事にするということですね。

『ドラゴン桜』の撮影が、1つ上の大学の先輩の卒業シーズンとかぶっていて。先輩の卒業式も行けなかったし、送る会みたいなこともできなかったんですね。僕はまだ経験したことがなかったけど、きっと社会人1年目って辛いことがたくさんある。だから、『ドラゴン桜』を観て、先輩たちが明日からも仕事を頑張ろうってちょっとでも思ってくれたらいいなって思ったことがあって。その気持ちは捨てちゃいけないなというのは、ずっと自分の中にあります。僕のお芝居で、誰かが元気になったり、ちょっとでも前を向くきっかけになっていたらというのが、今でも自分がこの仕事を頑張る理由の一つです。

PART2は近日公開予定です。サイン入りポラのプレゼントもあるのでお楽しみに!

撮影/映美、取材・文/横川良明、ヘアメイク/カスヤユウスケ、スタイリング/藤井エヴィ、衣装協力/・シャツ、ジャケット、ベスト、パンツ
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