外套と短剣

「死刑執行人もまた死す」「恐怖省」に続いてＦ・ラングが三たび、反ナチをテーマに取り上げたスパイ映画。アメリカの物理学者ジェスパー教授は、同じ物理学者でファシストのために原爆の研究に従事させられているポルタ博士を救出するためにイタリアへ潜入した。博士を捜してレジスタンスの女性闘士と転々とするうち、二人は愛し合うようになるが……。この映画が作られたときには、すでに戦争は終わっていて、戦略兵器として原爆が問題になり始めていた。この映画もナチを題材にしながらも、オッペンハイマー博士やフェルミ博士ら当時の著名な学者をモデルにしているのがわかる。原爆にかかわるラストの部分はカットされた。敵はもうドイツではないという時代の雰囲気も、その奥から伝わってくる。