その内容に業界激震!
『岬の兄妹』緊急特集


映画のプロ&一般映画ファンが選んだ
この1本が3月1日劇場公開に!

若手映像クリエイターの発掘・育成を目的に、これまで多くの映像作家支援事業を展開してきた「SKIPシティ 彩の国ビジュアルプラザ」。開設15周年を迎えた同施設が、新たな試みとして挑んだのが<“最速・最短”全国劇場公開プロジェクト>だ。

本プロジェクトは、昨年開催された《SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2018》のコンペティション部門に入選した日本映画(長編)の中から1作品を選出し、配給・宣伝から全国規模での劇場公開まで一貫サポートするという、インディペンデントの若手映像作家にとっては夢のような支援企画。選考には、映画ビジネスの最前線に立つプロたちとともに、「ぴあ映画生活」の一般映画ファン代表10名も加わり、当たった。

その映画のプロと一般の観客の厳しい目を経て、今回見事全国劇場公開の切符を手にしたのが片山慎三監督の『岬の兄妹』だ。選考では“劇場でみたい”と公開が熱望され、ポン・ジュノ監督をはじめ香川照之、高良健吾ら映画人から絶賛のコメントが続々到着。今年の日本映画界に何かを起こしそうな気鋭監督の初長編映画に注目を!

「なんてイカれた監督だ! 」
ポン・ジュノ監督も絶賛
『岬の兄妹』コメント予告編映像

その内容に業界激震!
各界著名人からもコメント続々

ポン・ジュノ(映画監督)

慎三、君はなんてイカれた映画監督だ!力強く美しい、ここまで大胆な作品が生まれるとは…衝撃を受けたよ。多くの論争を巻き起こす見事な傑作だ。おめでとう。


山下敦弘(映画監督)

『岬の兄妹』は噛みついて来る映画だ。例えばノンフィクション、またはドキュメンタリーといった格式のある正当性に。あるいは我々の中にある偽善や倫理観に。噛みつかれれば怒る人もいれば泣く人もいると思う。自分はこの映画を観ながら笑ってしまいました。そしてつくづく弱い人間だと気付かされました。皆さんもこの映画を観て自分が何者かを知ってください。


香川照之(俳優)

暴力の行方、性的描写、観念の飛躍、全てが片山監督の根幹にあるポン・ジュノのカットの積み重ねを見ているようだ。ラストの岬の終焉の仕方にも大いに頷いた。処女作としては百点満点を付与する。 


尾崎世界観(クリープハイプ)

自分が必死で隠してるダメな部分を煮こごりにしたような、そんな良夫が愛しくてしょうがない。良夫が今日もどこかで生きているなら、自分も頑張ろうと思える。たとえ物語に救いがなくても、人間の肉っぽさがとても温かい。 

そのほかのコメントはこちら

賛否を呼ぶ問題作『岬の兄妹』
劇場公開の切符を手にした
片山慎三監督を直撃!

今回、<“最速・最短”全国劇場公開プロジェクト>で公開の運びとなった『岬の兄妹』は、片山慎三監督が自主制作で作り上げた1作。昨年のSKIPシティ国際Dシネマ映画祭の国内コンペティション部門で作品賞に輝くと同時に観客賞も受賞し、つい先日にはスウェーデンのヨーテボリ国際映画祭に出品されるなど、国内外で高い評価を受けている。その物語は、障がいをもつ兄妹が売春によって生活費を稼ぐという一見すると眉をひそめるもの。ただ、日本社会の負の現実を包み隠さず描きながらも、どこか悲壮感とは無縁の人間の逞しい生命力を見つめた作品は不思議な魅力を放つ。手掛けた片山慎三監督に話を訊いた。

――まず、やはりストーリーがいろいろな問題提起を含み、賛否ある題材だと思うのですが?

貧困、障がい、性、犯罪、暴力など、できれば目を背けたい、でも見過ごせない、日本に厳然とある現実を妥協なく描きたいと思いました。「社会の底辺で生きる人間をこんな描き方をするとは不謹慎」という意見もあるかもしれない。ただ、自分としては「弱者」を「弱者」と決めつけてしまうのもどうかと。ネガティブな視点とは、また別の視点から見てみる。そのことでまったく違う景色が見えてくるかもしれない。それで、世間にある常識や価値観をある意味、覆させれればなと思いました。

――主人公の足に障がいのある兄の良夫と、知的障がいのある妹の真理子はすでに両親はおらず、近くに身寄りもいない。そんな折、良夫が仕事を解雇。生活がたちいかなくなったとき、良夫は妹に売春をさせて生計を立てようとする。確かに、兄が妹に売春させるのは不謹慎で許されるものではない。でも、そうせざるをえない状況が現実にある。

この作品でよく言われることのひとつが「なぜ、彼らのような人に手を差しのべるはずの福祉関係者が登場しないんだ」という意見。ただ、現実として、そういった社会のセーフティーネットからこぼれ落ちてしまう人がいっぱいいる。僕は、そこにこそ目を向けるべきではないかなと。

ただ、そうは言っても受け入れてもらえるかは別の話で。初お披露目となった昨年の<SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2018>での上映では、厳しい意見が出ることを覚悟していました。でも、実際は好意的な意見がほとんど。それは、あくまで自分の分析でしかないんですけど、こういう兄妹がいてもおかしくないと、みなさんどこか肌で現実社会に感じているからじゃないかなと。実際、たとえば介護が必要な人間を身内に抱えた際、行政や福祉に頼るよりも、まずは家族がめんどうをみなければならないという意識が日本人にはあるような気がする。家族ですべてを抱え込んでしまう。そういった現状を感じられている方が多いからこそ、思いのほか受け入れられたのかなと。あと、ひとつ加えておくと、この物語は、障がい者の犯罪についての統計などをまとめた本があるのですが、そこからヒントを得ています。ですから、描かれていることは絵空事ではない。まったくの架空ではないんです。そのあたりも感じ取ってくれる方が多かったのかなと思っています。

――ここまでの話だとバリバリの社会派映画と思われるのですが、実はちょっと違って。あくまで題材は重いんですけど、兄妹をみていると愛しくてほほえましくなる。不思議と笑えて笑顔になれる作品になっています。

そうですね。あまり悲壮感は出したくなかったというか。どん底からどうにかしてはいあがっていく、この兄妹の人間としての生命力や逞しさを描きたいと思いました。あと、裏テーマとして、「生」と「死」があります。お母さんはすでに死去していますけど、真理子はそれを理解していない。でも、ある時、理解する。一方で、自らも生命を感じる瞬間にも会う。今の時代に「生」と「死」を実感できる作品になればとの思いがどこかにありました。

――良夫役を演じた松浦裕也さん、真理子役の和田光沙さん、ともに素晴らしい演技を見せてくれています。

松浦さんはこの作品の構想を練り始めた最初の段階から意気投合してくれて、良夫はほぼあてがきです。確か最初の出会いは助監督を務めていた山下敦弘監督の『マイ・バック・ページ』。そこから交流が始まり、こういうクセのある役は絶対に似合うと思っていました。良夫を変にキャラクター化しないで、現実の世界にいるよくいる人物、ある種の匿名性をもった人物にしてくれました。そういえば先日、新宿を歩いていたら、良夫にそっくりな人物がいて。やっぱり現実にこういう人いるんだと自分でもうれしくなって、思わず後をつけてしまったんですけど、よく見たら松浦さんでした(笑)。

――和田さんは?瀬々敬久監督の『菊とギロチン』での女力士役も印象的でしたが、真理子役でも体当たりの演技を見せてくれています。

オーディションでお会いしてお願いすることにしました。真理子はすごく人物像を作るのに苦労したんです。ドキュメンタリー映画の『ちづる』を参考にしたり、実際にボランティアで障がい者施設を取材させていただいたりして徐々に作っていったんですけど、果たして、この難役を演じ切れる人がいるのかなと。ただ、オーディションで和田さんに出会ったとき、彼女で行こうと思いました。オーディションでは、映画の冒頭にある真理子が兄の良夫に責められるシーンをやってもらったんですけど、和田さんが演じるとパッと明るくなるというか。見ていてすごく面白くて、笑えたんです。そもそも和田さん自体が明るくて前向きでめげない。そこが真理子に1番求めていたことで。実際、真理子の自由な精神を、和田さんは体現してくれたと思います。

――おふたりともに数々の作品に出演していますけど、『岬の兄妹』でさらに広く知られる俳優さんになると思います。

そうなったらうれしいですね。気づいたら「大河に出てた」なんて風になってくれたら最高です(笑)。

――それからカメラワークもよく考えられているし、構図もすばらしい。緻密な計算のもと作られたのかなと思ったのですが……。

それが意外と行き当たりばったりでして(笑)。ある程度の構想はあるんですけど、基本的にはその場で考えてやっていく。実は、脚本もあるようでなくて。俳優には直前にセリフを渡すような感じでした。せっかく自費で自由にやれるわけだから、映画作りのルーティーンに当て込んで作りたくなかったんですよね。たとえばこういう段取りを組んで、きっちりこう撮ろうというよりかは、現場のライブ感、その場に立って出てくることを大切にしたかった。そのほうが意外なことが起きるんじゃないかと。役者の演技も一緒で、話がわかっているとどこかそこにむかって集約していくようなものになりがち。それは避けたくて、その場に立ってみて感じて、わきあがってくる感情をダイレクトにありのままで出してほしかった。なので、脚本は直前まで見せない。実は物語がどこで終わるかも決めていませんでした。スタッフもキャストも直前まで手探りで、常に不安が強いられたと思います。振り返っても、よく信じてついてきてくれたなと。松浦さん、和田さん、そして撮影の池田(直矢)さんにはそうとう苦労をかけたと思います。

――片山監督は、今回の『岬の兄妹』が長編映画デビュー作。ただ、助監督の経験は豊富で、ポン・ジュノ、山下敦弘などそうそうたる監督の現場を経験されています。ちなみに、ポン・ジュノ監督の作品に参加することになったきっかけは?

知り合いに韓国人の助監督がいて、彼が『TOKYO!』のポン・ジュノ監督のパートに呼ばれたんです。その時、彼が僕がポン・ジュノ監督の『殺人の追憶』が好きだと話していたことを覚えていてくれた。それで一緒にやらないかと。その『TOKYO!』からの流れで『母なる証明』へも参加することになりました。ポン・ジュノ監督の現場の経験は、僕の映画作りのひとつのお手本になっています。それぐらい、学ぶことが多かった。

――『岬の兄妹』に熱いメッセージを寄せていますね?

ちょっと怖くもあったんですけど、見てほしいと連絡を入れました。ワンコメントでもいいので感想をもらえたらなと思ったら、がっつりとしたレビューを送ってきてくれて、しかも、気に入ってくれたようで、ひと安心というかうれしかったですね。あまりにいい言葉が並んでいたので、本人にお願いしてコメントとして使わせてもらうことにしました。ありがたいことです。

――今回、<“最速・最短”全国劇場公開プロジェクト>に選ばれた時は、どんな気持ちでしたか?

<SKIPシティ国際Dシネマ映画祭>での上映が決まったときは、視野にも入っていませんでした。でも、観客賞をいただいたところで「もしかしたら可能性あり」という、期待はどこかしている自分がいまして(笑)。選ばれた時は、純粋にうれしかったです。自費で作った作品で、ひとりでも多くの人に届けたい気持ちはありましたけど、劇場公開、ましてや全国規模での公開なんて夢にも思っていなかった。それが叶ってしまったわけですから、うれしいのはもちろんですけど、ちょっとびっくりもしています。

――そして、劇場公開を迎える今の心境は?

正直言うと、心配でしょうがないです(苦笑)。劇場にみなさん足を運んでくれるのかなと。ここまできたらひとりでも多くの方にみてほしいというのが本音です。



本プロジェクトについて語る
「デジタルSKIPステーション」の井西政彦氏

若手映像作家に
最も望まれているサポート
それが全国での劇場公開展開でした

私共「埼玉県/SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ」では、若手映像クリエイターの発掘・育成を目指して、これまでさまざまなサポート事業を展開してきました。その一環で、若手のクリエイターさんたちに間口を開いたシェアド・オフィスもありまして。たとえば、いまや時の人になっていらっしゃいますけど、『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督や、『岬の兄妹』と同時期に公開されます『君がまた走り出すとき』の中泉裕矢監督などがそこに入っていらっしゃいます。

ということで、若手のクリエイターの方々と日々接し、よりよいサポート体制を考えてきた経緯があるのですが、対話を重ねる中で、よく話に出るのが劇場公開の難しさなんですね。これはインディペンデントの作家さんは共通していると思うんですけど、制作サイドの人脈はそれなりにある。でも、そのあとの配給・宣伝の人脈はみなさん持ち合わせていない。そこまで考えられないし、劇場に個人でかけあったとしてもそうそううまくはいかない。劇場公開にこぎつけるのは至難の業なんです。そこで今回、15周年の記念ということもありまして、この<“最速・最短”全国劇場公開プロジェクト>を実施しようという運びになりました。

今回選ばれた『岬の兄妹』は、観客目線として「ぴあ映画生活」さんのユーザー=一般審査でも過半数以上の方が支持されていたのですが、プロジェクトの特色でもある、映画ビジネスのメインプレイヤー的な人たち、映画配給の 株式会社プレシディオ長谷川裕介さん、興行のイオンエンターテイメント株式会社井上 篤さん、放送の株式会社WOWOW映画プロデューサー大瀧 亮さん、パッケージ発売の㈱Vap行実 良さん、映画宣伝のNEWCONの田部井 悟さんというプロ目線においても選考会でも満場一致で支持されました。

選考を通じて、わたくしがうれしかったのは、みなさん、観客に届けたい作品、これからの活躍を期待したい才能という点を重んじて選んでくださったこと。けっしてビジネスだけの視点ではなく、いままさに劇場にかけて多くの人にみてほしい映画、そして才能として『岬の兄妹』を選んでくださった。選考会はそのことを実感できる時間でした。

今は全国のいろいろな方にこの作品が届いて、この公開を経ることで片山慎三監督が新た次のステージに立ってくれることを願っています。