リー・キット「僕らはもっと繊細だった。」
18/9/16(日)~18/12/24(月)
原美術館
現在は台北を活動拠点にするリー・キット(李傑/Lee Kit)は、中国への返還(1997 年)を経て変貌 していく故郷・香港でアーティスト活動をスタートした。
初期作品のうち、布に絵具で格子柄などを描いた絵画シリーズは、色と柄のある“抽象”絵画でもあれば、日用品としての機能をもった布(=テーブルクロスやカーテン等)という姿・形を備えた“具象”であると も言え、絵画の概念を広げる革新的な作品群だった。そして 2013 年、ヴェネチアビエンナーレ香港館の屋内外に展開した自在なインスタレーションは、ウォールストリートジャーナル紙が「必見の展示ベスト5」に挙げるなど、国際的な注目を集めていった。近年は、絵画やドローイング、プロジェクターの光や映像、さらには家具や日用品等を配置し、展示空間全体を淡い色調の絵画のように仕上げたインスタレーションに力を入れ、欧米アジア各地で発表を続けている。
独特の歴史的背景を持って揺れ動く街・香港を出自とするリー・キットは、アートという開かれた表現を通して自身のあり方を問い、自分が今を生きる世界と向かい合おうとしている。そして、展覧会を開催する場合、その街、その場所の空気や感情に静かに寄り添い、サイトスペシフィックな作品(=特定の 場所に存在するために制作すること)を創り上げるのも大きな特徴。近年の東京での個展(資生堂ギ ャラリー、シュウゴアーツ) で発表した作品も、東京の空気や人々から感じ取ったものが根底にある。したがって、元は原家の私邸であり、第二次世界大戦を乗り越え、GHQ から返還された後に美術館として40年の時を経ようとしている原美術館は、そのようなリーにとって、これ以上ない時空間であると考えている。リーがここで何を感じ、どのような“絵画”を描くのか、本展はリーの魅力が遺憾なく発揮される機会となる。