圓井義典「天象 アパリシオン」

PGIでは10月15日より、圓井義典のPGIでは4年ぶり4回目となる個展を開催する。同展では新作となるシリーズ「天象（アパリシオン）」から約20点を展示。
圓井義典は東京芸術大学美術学部デザイン科在学中より写真作品の制作を始めた。
初期作、「地図」（2003年）や「海岸線を歩く」（2008年）では、知覚できる世界についての新しい発見、つまり知覚世界についてより一層想像力を膨らませるきっかけを、眼前の事物の細部描写に見出していた。
それまでの旅で見た光を主題とした「光をあつめる」（2011年）の頃から、写真術と事物とのかかわりそのものを考えることが、より直接的に知覚できる世界について想像を膨らませるきっかけになる、と考えるようになる。
そうやって考えてきた一つの結果として前作「点−閃光」（2016年）があり、そこから派生した別の結果が今回の「天象（アパリシオン）」である。
「天象（アパリシオン）」は、元々は天体の現象を表す言葉である。
ドイツの哲学者テオドール・W・アドルノは「現象としての芸術作品にもっとも近いものに、天における星の出現を意味する天象がある。」と語っている。
同作で圓井はスナップとフォトグラムの二つの手法をミックスして用いている。
事物があり、そこに写真で関わるという点で、スナップショットとフォトグラムによって得られる画像は共通している。圓井は「画像が生まれる様は、あたかも網膜上に事物の姿が結像されるようでもあり、ひいては、私たちの五感による知覚の様相そのものともよく似ている」と語っている。
事物と作者の関わりの結果としての画像の羅列、一般的な意味に交換できないスナップショットの連なりに、見ている私たちは知らず識らずそこから一つの意味を見出そうとするはずだ。
同作は、意味や物語の対極に写真を置くことで、私たちが生まれながらにして持ち合わせている、意味を見出そうとする性質そのものに注目し、そのことを通して、その限界の可能性とその先にある可能性を考える試みである。