DEPAPEPE、最新作『Seek』に込めた15周年の“今” デビュー時から変わらないインストへの思いも明かす
20/6/6(土) 18:00
それは2005年5月のこと。「インストミュージックをポピュラーに!」を合言葉にメジャーデビューしたDEPAPEPEは、アコースティックギター2本をスタート地点に、バンドサウンドや他ジャンルへのクロスオーバーへとチャレンジを重ねながら、多くのリスナーと後続のミュージシャンに新しい音楽の喜びを伝えてきた。その集大成にしてターニングポイント、新しい未来を切り拓くのが15周年のフルアルバム『Seek』だ。これまでで最も悩んだという制作過程、会心の1曲「GUILTY」の完成まで、そして15年間の思いについて、徳岡慶也と三浦拓也にリモート取材でたっぷりと語ってもらった。(宮本英夫)
“インスト”を意識しないで聴いてほしい(三浦)
ーー15周年、おめでとうございます。長く感じるか、短く感じるか、実感としてはどうですか。
徳岡慶也(以下、徳岡):どっちもですね。長くもあるし短くもあるし、ただデビューして5年ぐらいは本当に大変で、活動のペースについていくのに5年ぐらいかかったという思い出は、いまだに残っています。それ以降は早かったなという気はします。
三浦拓也(以下、三浦):僕はけっこう、あっという間でしたね。活動が止まることなく、毎年コンスタントに夏に野外ライブをやってとか、1年の中でルーティンが決まっている中で、「ああもう15年か」と。それは歳を取ったからなのかもしれないですけど、1年がどんどん短くなってきていますね。「この前10周年と言ってたのにもう15周年か」という感じですけど、それだけ充実してるのかな? と思うと、ありがたいです。
ーー僕、2005年にお二人に最初にお会いしてるんですよ。
三浦:じゃあほんまにデビューの時ですね。
ーー当時のインタビューがここにあるんですけど、アコギのインストというスタイルについて、「自分たちがかっこいいと思うものをやってるだけです」「メッセージ性はないです」と言っていて。
徳岡:ああ、それはいまだにそうですね。メッセージ性はないですから。より心地よく聴いてほしいなというのはありますけどね。
ーー「今後の目標は」という質問に三浦さんが、「いろんなジャンルをやりつつ、DEDAPEPEという大きな円を作りたい」と言っていますよ。
三浦:ああ、僕らというジャンルを、みたいな。いいこと言いますね。
ーー15年経って大きい円は描けてますか。
三浦:その当時思い描いていたことができてるか? というと、まだ志半ばという感じなんですけど。ただ「DEPAPEPEってこういうサウンドだよね」と言ってもらえるようになったのは、ちょっとはその時の思いが叶ってきたのかな、とは思いますね。DEPAPEPEサウンドというものをある種確立できて、だからこそ悩む時もあるんですけど、デビュー当時に思い描いていた一端は担えてるのかな、と思います。
ーー徳岡さんは「ずっと聴いてもらえるスタンダードを作りたい」と抱負を語っていました。
徳岡:それもいまだに変わってないですね。それを言い続けて15年目を迎えられてるというのは、ある意味幸せかなと思います。そう考えると、15年って意外と長いかもしれない。でも周りの先輩たちがもっと長く続けているから、まだまだペーペーやなと思いますよ。
ーーそうですか? もしギターインスト協会というものがあったら、部長ぐらいいってるんじゃないか? と。
徳岡:いってないです(笑)。まだまだでしょ、三浦くん。
三浦:まだまだですね。協会の役職にはつけないかもしれないけど(笑)、自分たちがデビューした時よりも協会の人数はたくさん増えたんじゃないかな? って、思いますね。ギター以外のインストも増えましたし、協会はもっと大きくなってる気はします。
ーーそこにDEPAPEPEは大貢献してるんじゃないでしょうか。
三浦:そうやったらうれしいですね。
ーーしかもDEPAPEPEは、ジャンルを超えたフットワークの軽さで歌もののアーティストとも積極的に交流しに行きますよね。
三浦:僕らはもともと、歌もののアーティストと同じフィールドでライブをしたいなというのがあったんですね。「インストミュージックをポピュラーに」ということを最初の合言葉みたいにして、ジャンル問わずという意識が常にあったので。自分の中では「インストだから」「歌ものだから」という垣根がないので、「インスト」というところを意識しないで聴いてほしいというのは、デビューの時から変わらず思ってますね。
ーーああ、そうか、「インストミュージックをポピュラーに」というのはそういう意味だったんですね。
三浦:そうなんです。インストというのを言わなくてもいいようになればいいな、というのが一番なんです。クラシックの曲に「インストですよね」って言わないのと同じ感覚で、僕らはポップスをやっているけど、「ギターインストでしょ」と言われなくていいぐらいに、まだ志半ばですけど、なればいいなと思っています。
ーーそろそろアルバムの話に行きましょうか。15周年の記念アルバム『Seek』の、リード曲「GUILTY」が、アルバムの核になる曲ですか。
徳岡:そうですね。あの曲があるからこそアルバムを出せたと言ってもいいぐらいです。僕らは、爽やかでスピード感ある曲が多かったんですけど、今回は誰かの背中を押す曲じゃなくて、自分らと向き合う曲を作ろうと。15年目で一つ階段を上がるような、そういう曲にしようかなと思って、「GUILTY」をリード曲にしました。
三浦:「GUILTY」で僕がすごく印象的だなと思うのは、普通、徳岡さんが曲を持ってくる時って、ワンコーラスあって、こんな感じかな? あんな感じかな? ってメロディを変えて、できていくパターンが多いんです。「GUILTY」に関しては、イントロのフレーズだけあって、メロディを「これがいい」と言い切って、「GUILTY」というタイトルにする、という作り方だったんです。僕も一緒に制作していて、この曲は他の曲とは思いや意図が違うんだろうなという感じはすごくしましたね。
ーー「GUILTY」=罪って、相当に重い言葉ですよね。なぜこの言葉を選んだのでしょうか。
徳岡:背中を押す曲じゃないものを、ということだったんですけど、このご時世、みんないろいろ大変じゃないですか。SNSとかで息苦しかったり、他人の目が気になったりとか、そういうことを踏まえて人のことをやいやい言う前に「もうちょっと自分と向き合いません?」みたいな感じですね。聴いてくれた人は「意外と爽やか」という意見も多いですけど、僕らはそういうイメージで最初から作りましたね。
三浦:僕の思う“GUILTY”らしさって、サビのメロディではなくイントロなんですね。人は誰しもすべてきれいな行いだけではないし、“GUILTY”を感じる時もあるかもしれないけど、それでも許すというか、「前を向いて進んで行こう」というのが、サビのメロディの優しい旋律やと思うんですね。だからサビだけ聴くと“GUILTYっぽく”はないかもしれないのかなと思いますけど、イントロの重厚なところに「やろうと思っていなかったけどあんなことしてしまったな……」みたいな反省とかが音として入っていて、サビではそれが昇華されている。そこが伝わればいいかなと思います。
ーー15年前「メッセージ性はないです」と言っていたお二人が、15年経ってこんな曲を作るようになったんだなと思います。
三浦:めっちゃメッセージ性ありますね(笑)。
徳岡:この曲は、あるかもしれない。「自分と向き合う」という曲だと思うんですけど、聴いてくれた人もそう思ってくれたらいいですね。
ーーちなみに、この華麗で重厚なオーケストレーションのアレンジは、最初から頭にあったんですか?
徳岡:いや、重い感じの曲にしたかったので、絶対にベースとドラムはほしいと思ってたんですけど。運がいいことに中村タイチさんという、もともとアレンジとかをやってもらっていた人にまたお願いできたんで、「とにかく広い世界と派手にしてもらっていいですから」と言ったら、求めていた通りのアレンジになって。本当に良かったと思います。たぶんギター2本とドラムだけでもできたんでしょうけど、曲が持つ力をちゃんと形にしてもらえたことに、ほんまにうれしさを感じてますね。
「GUILTY」があるからどんなことでもできる(徳岡)
ーー2曲目以降は本当にバラエティに富んでいて、「in your eyes」は、懐かしいフュージョンっぽさ満載だったり。それこそ野呂(一生)さんとか高中(正義)さんを彷彿とさせるような。
徳岡:僕が一番好きなジャンルで、曲的には一番タイプの曲ですね。もろにそういうフレーズでやっています。
ーー3曲目の「War Cry」、個人的に好きなんですよね。ラテンのようなアフリカンのようなリズムがドンドコいっていて、サビでパーッと爽やかにはじけるのがかっこいい。
徳岡:あれはDEPAPEPE版のThe Ventures「Caravan」を作りたかったんですね。ああいうリズムで、マイナーとメジャーが行き来するみたいな。
三浦:ドミナントの進行から入ってトニックに落ち着くような。キーがDやったらA7から入ってDに、みたいな進行にしたかったんですよね。よくある、サブドミナントやトニックから始まるんじゃなくて、何か作れないかな? と。
徳岡:「GUILTY」以外の曲は、けっこう遊びながら作ったりしましたね。「GUILTY」みたいな曲ばっかりだと、聴いてる人がしんどいし、「こういう曲調あったほうが楽しいやろな」というのは自分らでも思うんで。
ーー去年配信でもリリースされた「Love Letter」は、三浦一馬さんのバンドネオンの物悲しい響きがばっちりハマっていますね。
三浦:これはMBSの『お天気部!!』のテーマ曲で、アーティスト同士のコラボレーションということが決まっていたんですね。はなからバンドネオンを想定して作った曲で、バンドネオンが持っている哀愁漂う旋律とアコースティックギターの疾走感が混じると、一番音楽的にフィットするんじゃないかな? と考えながら作りました。
ーーフレッシュな驚きだったのは、9曲目「水に揺らめくフィッシュテイル」。これ、トラックはほぼEDMじゃないですか。
徳岡:僕はもともとそういうのが大好きで、いつかちゃんとやりたいと思っていて。昔から、三浦くんには聴かせたりしてたもんな。
三浦:うん。デビュー当時からいろんなジャンルの良さを取り入れようとして、「それをアコギでやるとどうなるかな?」ということにチャレンジしてきたんですけど、15年目になって、他のジャンルのフォーマットにアコギを乗せるというスタイルを今回やってみたという感じですね。「これをどうにかアコースティックギターで表現できんかな?」という今までがあって、今回は「他のジャンルのサウンドに僕らのギターを乗せたらどうなるか?」という解釈かな。
ーーそして爽やかな、それこそ王道DEPAPEPEな「School days」があって。
徳岡:お得意というか、お家芸というか。「こういうものもちゃんとやりますよ」というものを見せたかったんで、たぶんこれが僕らの王道なのかなと思いますね。あと、おそらく自分史上一番長いソロなんですよ。アレンジャーの松本圭司さんは、ピアニストですけどギターもめっちゃうまくて。自分が考えただけのソロだとつまらないので、一回弾いてもらったものを参考にしながら自分なりにやりました。このソロには思い入れがありますね。
ーーそして11曲目「nite nite…zzz」で締めくくり。これは二人だけのアコースティックギターで、原点というか、こういう曲はやっぱり1曲は入れておきたいという思いがあったんでしょうか。
徳岡:そうですね。レコーディング期間の後半にできた曲ですけど、すぐにまとまって良かったです。二人だけの安心感というか、やっぱり入れておきたいなとは思います。
ーーこれは二人で「せーの」で録ったのでしょうか。
三浦:いえ、伴奏は中盤に録ってあって、メロを入れたのが最後です。でもそれが同時に録っている感じで聴こえているのはうれしいですね。15年続けてきているから、時間があいてばらばらに録っても一緒に弾いたかのような感覚になるんでしょうね。結成当初やったら、そんな感じに弾けなかったかもしれない。今回は同時進行で、いろんな曲をさわりながら作っていったんですけど、1曲に対してもいろんな伴奏があって、どれに何を重ねるかとか、考えることは多かったですね。
ーーこの11曲でアルバムは終わって、あとはボーナストラックにドラマ『最後の晩ごはん』オープニング曲と挿入曲の2曲。特にオープニング曲「The next world」はファンキーなアシッドジャズっぽさがあり、すごく新しさを感じました。
徳岡:16ビートの弾き方と、四つ打ちのテーマと、細かいことと大きいことの対比で作れたのが良かったです。
ーーここまでやると、もうアコースティックデュオではくくれないですよね。
徳岡:バンドメンバーがいてくれないといけない曲もいっぱいあるんですけど、普通にアコースティックデュオとして見てもらえばうれしいなと思います。「これはこういう曲なんや」と。
ーーああそうか。編成よりも、あくまで曲ありきで。
徳岡:そうですね。
ーーあらためて、アルバムに込めた思いと、みなさんへのメッセージを。
三浦:このアルバムは、今まで15年やってきた中で、たぶん一番迷いながら作ったアルバムなんですね。何に悩んでいたかというと、さっきの話に繋がるんですけど、「こういうのがDEPAPEPEサウンドだよね」というものが一つ見えたとしたら、そうじゃない新しいものってどういうことなんだろう? と。同じことはもちろんできるけど、新しいチャレンジをしたくて、それはどういうジャンル、どういうプレーなんだろう? と悩んで、模索しながら作ったので、たぶん一番時間がかかったんですね。でも結果として、EDMにチャレンジした「水に揺らめくフィッシュテイル」もそうですけど、「DEPAPEPEってこういうのもやるんだ」と思ってもらえるようなバラエティに富んだアルバムになったのが、この先16年目、17年目と続けていくにあたっての指針になったかなと思います。いろんな楽曲と、DEPAPEPEの未来も含めて探し求めていたので、『Seek』=探すという言葉をタイトルにしたんですけど、このアルバムのおかげで未来の自分たちを探すことが出来そうな感じがしますね。ぜひみなさんに聴いていただきたい、15年目の今の僕らが詰まっているアルバムです。
徳岡:めちゃめちゃ迷ったんですけど、その中で「GUILTY」という曲を作れたことが一番重要で、「GUILTY」があるからどんなことでもできるかなという気がします。「START」みたいな爽やかな曲じゃなくて、「GUILTY」をちゃんとリード曲にしようというのが一番大きかったので。そこにチャレンジして、ジャンルで奇をてらうわけでもなく、曲としてそういうものを作れたのが良かったと思います。
三浦:ジャケットの雰囲気も普段と違うようにしたりとか、自然に変わるんじゃなくて、変えてみたかったというのがすごく出てると思います。ちょっと音楽的なことと外れるんですけど、僕の個人的なポイントとしては、ようやくかっこつけた写真を撮れたんですよ。いつもアー写を撮る時は、澄ました顔をしようとするんですけど、「三浦くんは笑顔のほうがいいよね」って。だからいつも笑ってる顔ばっかりやったんですけど、今回は笑ってる顔がないはずです。だからCDが出たら、ブックレットの写真もぜひ見てほしいなと思います。全然音楽と関係ないですけど(笑)。
ーーいやいや。それ、今日イチ大事な話かもしれません(笑)。
三浦:37才にしてやっと真顔で写真が撮れるようになりました。
徳岡:ほんまですよ。この15年間ずっと、俺はクールに撮れてたのに、三浦くんは笑顔がいいからって、結局俺も笑顔だったんですよ(笑)。
三浦:あと、初回盤にドキュメンタリー映像が付いてるので、合宿の風景とか、レコーディング中のスタジオとか、普段そんなに見てもらう機会がないので面白いかなと。15年を振り返って赤裸々に語るインタビューも収録されているので、ぜひ見てほしいですね。
■リリース情報
New Album『Seek』
Now on sale!
初回生産限定盤(CD+Blu-ray)SECL-2563〜2564 ¥4,000(tax in)
通常盤(CDのみ)SECL-2565 ¥3,100(tax in)
<収録曲>
-CD-
1.GUILTY
2.in your eyes
3.War Cry
4.桜の頃
5.Love Letter feat.三浦一馬
6.a log
7.She
8.空に描いて
9.水に揺らめくフィッシュテイル
10.School days
11.nite nite…zzz
12.The next world (bonus track)
13.Last Dinner (bonus track)
-特典BD- メジャーデビュー15周年記念インタビュー&ドキュメント
1.Documentary -Seek for DEPAPEPE- (23min)
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