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ギリシャ神話に想を得た前川知大の新作『終わりのない』が開幕

ぴあ

19/10/29(火) 0:00

『終わりのない』

小泉八雲の作品集『怪談』の短編5編をもとにした『奇ッ怪~小泉八雲から聞いた話』(2009年)、柳田国男が岩手県遠野地方の伝承をまとめた説話がモチーフの『遠野物語・奇ッ怪 其ノ参』(2016年)など、これまで数年おきに上演されてきた劇作家・演出家の前川知大と世田谷パブリックシアターとの共作シリーズ。本日より幕を開ける最新作『終わりのない』は、古代ギリシャの長編叙事詩 『オデュッセイア』を原典とした物語だ。

前川といえば、普通の人々のなにげない生活にふと顔をのぞかせる異世界を通して、“目には見えないが、確かにそこにある(いる)何か”を描き出す作品群で知られる。その“何か”を言葉にしたのが、八雲のいう「怪談」であり、柳田にとっての「伝承」であり、あるいは紀元前から語り継がれてきた「叙事詩」なのだろう。東洋哲学やアニミズムを思わせる前川の視点は、映画やコミックの孫引きであふれた、ちまたの「オカルトもの」や「SFもの」とはハッキリと一線を画して小気味いい。前川の舞台を観ているうちに陥る、遠い記憶を呼び覚まされるような感覚。そして私たちもまた、連綿と続く歴史のかけらだということに気づくのだ。

「『わたしたちは何故ここにいるのだろう?』『いつの間にこんなところまで来てしまったのだろう?』という個人の旅を人類の旅と重ね、望郷の念をもって描いていく」と前川が語る通り、歴史と神話、人間と神々が地続きで描かれている世界観を下敷きに綴られる本作。キャストは、NHK連続テレビ小説『なつぞら』の小畑雪次郎役で注目を集めた山田裕貴と、ドラマ『あなたの番です』の尾野幹葉役で印象を残した奈緒が、前川作品に初参加。ナイロン100℃の村岡希美、前川主宰の劇団イキウメから安井順平や浜田信也らが出演し、本シリーズには欠かせない仲村トオルも出演。舞台という生の空間で、“目に見えない何か”を立ち上がらせる。

11月17日(日)まで世田谷パブリックシアターで上演の後、11月23日(土)・24日(日)に兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール、11月30日(土)に新潟市民芸術文化会館 劇場、12月4日(水)に宮崎・メディキット県民文化センター 演劇ホールにて上演される。

文:佐藤さくら

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