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DEZERTとアルルカンはヴィジュアル系の“二大巨頭”に? 2年半ぶりの『ダブルラリアット』を見て

リアルサウンド

19/4/5(金) 13:00

 X JAPANとLUNA SEA、DIR EN GREYとPIERROT、the GazettEとNIGHTMAREのようにヴィジュアル系にはいつの時代も二大巨頭と呼ばれる存在がいた。現在、若手の中でその系譜を継ぐ可能性を持つバンドがDEZERTとアルルカンである。好敵手とも盟友とも違う絶妙な信頼関係でつながるこの2バンドによるツーマンイベント『ダブルラリアット』は、『ダブルラリアット2019』として今回で3回目を迎え、今年は東名阪で開催された。

(関連:DEZERTが語る、リスナーとの向き合い方「“共感”してほしいわけではなく、“共振”したい」

 前回はお互いに勢いが出ていたタイミングではあったが、2バンドとも“変わらなければいけない”という意志の元行われ、DEZERTはその後これまでのラウドなサウンドにスクリームを乗せるというアプローチを一切封印し、“歌と言葉”を聴かせるという真逆のアプローチでアルバム『TODAY』をリリース。アルルカンは作品において“生きる”ことへの捉え方をよりポジティブに打ち出すようになった。あれから約2年半、DEZERTとアルルカンが賛否両論ある中でなぜ、このように変化したのかを確かめるべく3月28日にツアーファイナルが行われる新宿BLAZEへ向かった。本稿ではこの2年半での“変化”にフォーカスしてレポートをする。

 先攻はアルルカン。登場するなり暁(Vo)がマイクで胸を強く叩き、重厚な「僻目」で幕を開けた。続くファストナンバー「MAZE」でライブのギアを一気に入れ、フロアからも一斉に声があがる。世界との価値観のズレから生じる痛みや迷いを歌うアルルカンらしいセットリストの流れは〈お前が普通か?〉と問う「ハッピーセット」へと続き、「僕たちが今日この場所を選んだのは単なる憂さ晴らしじゃない。幸せになるためなんだから」と暁が叫ぶとフロアの声がさらに大きくなったのを感じた。

 中盤に演奏されたミドルナンバー「カルマ」では〈少しずつ見える世界が変わったのは僕が変わった所為だ〉と歌い、さらに「Always」で〈変わる事を恐れないで〉とメッセージを送った。また、この曲では同時に〈それでも僕は明日を信じたい〉とも歌っており、「お前たちの欲しいものはこの夜にある」と始まった「消えてしまいたい夜に」では明日に対する自問自答を繰り返す悩める夜を、それが明けていく様を続く「暁」で表現してみせた。そしてその痛みを誤魔化すことなく向き合った先に心から望む明日があると彼らは「Rem」を叩きつける。

 「お前らまだ全然本気出してねぇじゃねぇか! 準備はいいか!!」と暁が啖呵を切りラストスパートとして「omit」を演奏すると、フロアは最後列まで一糸乱れぬヘッドバンギングで応戦。さらにキラーチューン「ダメ人間」で暁は「自分にしか出来ないことをやろう。人がやってることなんて関係ない。お前のやり方で答えてくれ!!」とフロアに投げかけると、フロアの熱量がさらに上がったのがわかった。

 「決められてるものは何一つないから。正解も、答えも、救いも、何もないです。あるのは、自分で決めたことだけです。その自分の決めたことから逃げないように、負けないように、戦うための曲を送ります」とラストに演奏されたのは最新シングル「ラズルダズル」。守りたいものを守るために闘い続けることを決めた彼らの決意こそが「ラズルダズル」の〈“変わらない為に変わっていく”〉という歌詞であり、アルルカンの“変化”への答えそのものだったように思う。

 不穏なノイズとともに幕が開くとそこにはすでにDEZERTの4人がスタンバイ。彼らはフロアから飛ぶ怒号のような声の中、ジャムセッション形式に音を重ね、新曲「Call of Rescue」でライブをスタートさせた。千秋(Vo)の「ぶっ飛ぼうか!」という合図で始まった「脳みそくん。」でフロアは一斉にジャンプ、さらに「秘密」ではモッシュ、と開始早々地獄絵図のような景色が広がる。しかし、こういったライブの激しさだけでなく、千秋がギターを手に取り演奏した「蝶々」で見せたような複雑な楽器陣のアンサンブルとキャッチーなメロディ、そして理想と現実の矛盾にもがきながら紡がれた歌詞も彼らの魅力のひとつでもあるのだ。

 続く「大塚ヘッドロック」ではライブバンドらしいアグレッシブな面を見せ、「異常な階段」や「insomnia」ではしっとりと歌を聴かせ、DEZERTというバンドの持つ様々な“らしさ”を見せながらライブを進めていく。そんな中、会場の雰囲気を一変させたのは鬱々とした「『擬死』」だ。アウトロで〈死んだままじゃ進めないだろう〉とアレンジした歌詞を口ずさみ、演奏が終わってもなお強く「今日、瞳を開けろ」と千秋が叫んでいたのが印象的であった。

 「(新宿)BLAZE、瞳は開いてるか?」と千秋が問い掛け、それに応えるようにフロアが声をあげると、満足げに「今日を思い出にしような」と突き抜けるような疾走感あふれる「オレンジの詩」を披露し「僕たちは記憶を積み重ねることしかできないから」という言葉を残した。そしてライブは終盤戦に差し掛かり、「『君の子宮を触る』」「『教育』」とキラーチューンを立て続けにお見舞いし、「『変態』」でとどめと言わんばかりにウォールオブデスを巻き起こし新宿BLAZEは狂乱の渦に巻き込まれる。

 「僕たちの今日を始めよう」とラストに演奏されたのはDEZERTの新しいアンセムである「TODAY」。この日、千秋がしきり叫んでいた「瞳を開けろ」という言葉は自分の弱さから目を背けずに受け止めろという「TODAY」の歌詞にも通じるメッセージだった。弱さを受け止め、自らが望んで変わることで、生きててよかったと思える夜はここにあると思えるようになるのだと、彼らはそう言っているのだ。こうして今日という一日と向き合い丁寧に生きることで迎える明日は今までと変わらない苦しい朝ではなく、また新しく生まれる今日の積み重ねなのだと示しているようだった。

 DEZERTとアルルカンは、方法は違えどともに変わることを選んだ。そして、この両バンドはお互いから刺激を受け、変わったようにさえ思えるのだ。この日、彼らは自らの意志で変わることを選び、変わったその先で見える景色が変わったことを現在の姿をもって見せてくれた。空は夜明け前が一番暗いという。変化を恐れずに悩める夜と向き合うことで“心から望む明日”であり“新しい今日”を迎えることが出来るのだと教えてくれた2年半ぶりの『ダブルラリアット』だった。

 おわりに、どうしてもこの日のアンコールを無視することもできないのであとがきとして。当初予定していたアンコールは1曲だったが、終わってみれば5曲。時間にすると約1時間、想定外かと聞かれれば嘘になるが、お互いにこの夜を終えるのが名残惜しいように見えたのが微笑ましくもあり、愛おしくもあった。このような夜を幾度も超え、彼らが今よりもさらに高みへと登ったとき、そのための“変化”だったのだと言えるのだろう。そして、そのときDEZERTとアルルカンはこのシーンにおいて新しい二大巨頭となるのだ。(オザキケイト)

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