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波瑠が明かす、『弥生、三月』役作りの裏側 「見えていない部分を蓄えておく必要があった」

リアルサウンド

20/3/23(月) 10:00

 映画『弥生、三月 -君を愛した30年-』が3月20日より公開中だ。『同期のサクラ』『家政婦のミタ』『過保護のカホコ』(全て日本テレビ系)などのドラマを手がけてきた遊川和彦が脚本・監督を務めた本作は、運命で結ばれた結城弥生と山田太郎の30年を3月だけで紡いだ激動のラブストーリー。

参考:『弥生、三月』本予告&ポスター公開 波瑠と成田凌が運命に結ばれながらもすれ違い続ける

 弥生役で主演を務めた波瑠は当初、本作のオファーを受けるかどうか迷っていたという。そんな波瑠に、出演を決めた経緯や10代から50代までの役作り、弥生と太郎の関係性などについて、話を聞いた。

ーー今回の『弥生、三月』の情報が発表された際に、「実はオファーを受けるかどうか迷っていました」とコメントされていましたが、なぜ迷っていたのでしょう?

波瑠:最初に台本を読ませていただき、ものすごく読み応えがある作品だったので、これはきちんとした下準備が必要だなと思いました。ただ、連続ドラマも同時にやっていたので、一度「難しいです」というお返事をさせていただいたのですが、遊川(和彦)さんご本人からやっぱりやってほしいというお手紙を頂いて……(笑)一度お会いしましょうということになり、そこでも「今回はお受けするか迷っています」とお伝えしましたが、遊川さんの作品に対するすごく純粋な情熱が伝わってきたので、結局「やります」と言ってお受けすることになりました。

ーー遊川さんの熱意に動かされた部分が大きかったと。

波瑠:遊川さんとは、今回の映画の前にも面識があったんです。当時の印象は、“変わった方”“怖い方”だったんですが、きちんとお話をしていく中で、その印象も大きく変わりました。作品のことを丁寧に説明されている姿を見て、「この人と一緒にお仕事をしてみたい」と強く思いました。

ーー弥生という一人の女性の30年を演じるのにも大きな労力が必要になりますよね。

波瑠:他の登場人物は出てくるものの、作品の軸が弥生と太郎の話なので、それに対しての不安やプレッシャーは最初に感じました。50代まで演じるなんて、私自身もまだまだだと思いました。

ーー成田さんは2歳年下なんですよね。実際やってみていかがでしたか?

波瑠:成田さんでよかったです。遊川さんが思い描く、「こんな人たちに幸せになってほしい」というのが、弥生と太郎だと思うんです。素敵なところとダメなところがそれぞれにある。簡単に言ってしまえば、ふたりとも凄くいい人なんです。太郎は、ひねくれたところもなく、友達思いでまっすぐで、人の幸せを願っている。少しバカで頼りない所もあるけれど、この人に話を聞いてもらいたくなる。そんな魅力が、成田さんにもあったんではないかなと思います。「なんだかほっとけない」ような関係性もうまく反映されているように感じました。

ーー遊川さんの演出はいかがでしたか?

波瑠:遊川組は、「はい、わかりました」っていう感じで進まないんです。「ああじゃない、こうじゃない」と試してみて、試行錯誤を重ねていくので、大変なんですよね。なので、撮影の間ずっと一人で考えごとをしてるみたいでした。

ーー役作りで何かやったことはありますか?

波瑠:映画やドラマは、台本には起こされていない登場人物たちの“日常の抜粋”が繋がって出来上がっているので、役を演じる上では、つねにその“穴埋め作業”をやるようにしています。1年をかいつまむだけでもその穴埋め作業はとても大変なんですが、今回は30年分。弥生が大学に行った日々、シロクマさん(小澤征悦)と関係が出来上がっていく過程など、描かれていない部分が膨大すぎて、こんな量をやったのは初めてでした。

ーーNHK連続テレビ小説『あさが来た』などでも一人の女性の幅広い年代を演じられていましたよね。

波瑠:朝ドラは、時代の移り変わりとともに、周りの人も一緒に変化していきますが、今回は、弥生と太郎のふたりの物語。もっと狭く掘り下げて、見えていない部分を自分の中に蓄えておく必要がありました。今までやったことがないアプローチでしたね。

ーー編集的に時系列はバラバラになっていましたが、もちろん撮影も順撮りというわけにはいかないですよね?

波瑠:撮影もバラけて撮っていたので、10代になったり50代になったり(笑)。また今回は桜を目がけてロケ地に行く場面もあったので、桜の状況を見て、「今日は一旦ここで引き上げよう」とか「もうちょっと桜が咲いたら撮りに来よう」みたいなこともしていました。

ーー実際に完成した作品をご覧になっていかがでしたか?

波瑠:何回か観たんですが、すごく良かったです。弥生も太郎もすごくよく撮っていただいたなと思います。でも、急に歳をとっていくので、ちょっと恥ずかしい部分もありました。「このメイクって大丈夫なのかな?」みたいな気持ちが出てしまうところもありました(笑)。

ーー波瑠さんから見て、弥生と太郎の関係性はどうですか?

波瑠:ちょっともどかしいけど、いい関係だなと思います。お互いを想うあまりに、関係をどうにもできない時って誰にでもあると思うんです。踏み込みすぎたり、遠ざかってしまったり。ふたりとも駆け引きとかを器用にできるタイプじゃないからこそ、すれ違い続けてしまう。見ていてもどかしいですが、嫌な気持ちは残らない。いま、高校の頃の同級生たちと集まっても、その空気感だったり、どういうことで盛り上がるかって、大人になっても変わらないんですよね。弥生と太郎にはその感じがすごくあるので、私はふたりの関係性がすごく好きですね。

ーー今回の『弥生、三月』を通して、波瑠さんの中で感じたことや気付いたことがあれば教えてください。

波瑠:人って結局ひとりなんだなと思いました。自分がひとりだと思うから、誰かと一緒にいたいと思ったり、思い出す人がいたりする。でも、一緒にいれば完璧かというと全然そんなことはない。誰かから孤独と言われるような環境ではないのに寂しさを感じるのが本当の孤独だと私は思っています。弥生と太郎は、そういうことにお互いが気付くことができたから、最終的に一緒になれたのかなと思います。そこにに辿り着いて初めて、自分ではなく誰かのことを思えたりするのではないかなと感じます。こうやって、どこかで信じ合えていた男女の存在が、誰かを元気にしたり、誰かを応援したりできるメッセージになりうるんじゃないかなと、完成した作品を観て思いました。

ーー映画のタイトルにもなっている「3月」は、波瑠さんにとってどんなイメージですか?

波瑠:いまの事務所に入るきっかけとなったオーディションが、3月にあったんです。その時に受けに行ったオーディションがきっかけで、いまここにいるっていうのはすごく大きいことだと思います。あと、『あさが来た』のオーディションもこの時期でした。世間的には4月は環境が変わっていく月だと思うんですが、私はいつも3月にきっかけがあるんです。なので、3月にはそういう環境が変わった思い出がたくさんあります。(リアルサウンド編集部)

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