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唐沢寿明から2人の息子に送られた“最後のエール” 『エール』浩二役・佐久本宝の笑顔に涙

リアルサウンド

20/6/12(金) 12:00

 毎朝お茶の間に鳴り響いている主題歌もなく、静音の中で始まった連続テレビ小説『エール』(NHK総合)第55話。裕一(窪田正孝)が数年ぶりに里帰りした福島では、それぞれの状況が様変わりしていた。特に裕一を驚かせたのは、父・三郎(唐沢寿明)が末期の癌を患っていたこと。刻一刻と三郎の病状が悪化している事実があるだけに、今日のオープニングは視聴者の心を不安にさせた。そんな中、三郎は裕一を神社に呼び出してある承諾を得る。

参考:唐沢寿明のユーモラスな人柄が溢れる 『エール』で残した父としての生きざま

 一方、家業を畳み現在は役場で働く弟の浩二(佐久本宝)は、養蚕農家の畠山(マキタスポーツ)のところにいた。養蚕業が衰退し、農家が廃業に追い込まれている状況を鑑みて、桑畑をリンゴの果樹園にしないかと提案しにきたのだ。前回は冷たくあしらわれたが、浩二は諦めずに説得。言葉の中には、俺には何にもなかった、だから見返したかったという浩二の本音が混ざる。けれど、誰かに認めてもらいたいという思いは時に人を突き動かす。実際に浩二がつくった提案書は緻密で、畠山は「新しいことに挑戦するのも悪くない」と補助金が出ることを条件に役場からの提案を受け入れた。

 もう残されている人生が長くはないことを悟る三郎に音楽を聴かせるため、裕一は音に頼んでハーモニカを手に入れる。しかし、三郎の容態が急変。意識がなくなり、病床に臥せる。家族には気丈に振る舞っていた三郎だが、ここ数日は激しい痛みを、自分の指を噛むことで耐えていたのだ。医者によれば“このまま逝ってもおかしくない状態”の三郎を、家族は交代で見守った。

 その3日後、裕一が側で見守っていると、最後の力を振り絞ったのか目を覚ます三郎。浩二と2人きりになることを望み、苦労をかけたことを謝罪した。浩二はこれまでにない穏やかな表情で、「2人(裕一と三郎)が音楽の話をするのが嫌だった、話題に入れねぇしさ」と本音を明かす。家族を鑑みない裕一に冷たく当たっていた浩二だったが、それは幼い頃からやりたいことが明確で、それを周囲から認めてもらえる裕一が羨ましかったから。

 浩二は全てにおいて裕一よりも優秀で、“手のかからない子”だかと世話を焼かれず、孤独を感じていた。そんな浩二に、三郎は「音楽があったからあいつと話ができたんだ、浩二とは何がなくても言いたいこと言い合ってきたべ」と声をかける。早くに兄弟を亡くし、店を継いだ三郎は、好きなことができなかった自分とは違う道を裕一に歩んでほしかったのかもしれない。けれど浩二自ら「家を継ぐ」と名乗り出てくれたことに、三郎は心から喜んでいたのだ。

 そして、三郎は喜多一と家の土地を浩二に譲り渡すことを告げる。三郎が裕一を神社に呼び出したのは、それを承諾してもらうためだった。三郎が持つ、少し頼りなくてムードメーカーな一面と家族を心から愛する父としての姿。裕一と浩二は、どちらも三郎の良い面をそれぞれ受け継いでいた。

「オメェらのおかげで、良い人生だった」

 その言葉を聞いた浩二は、ようやく自分も愛されていたのだと気づいたに違いない。襖の向こうで裕一がハーモニカを鳴らし、“かぞくのうた”が古山家を包んだその日の夜。三郎は、安らかに息を引き取った。

 裕一と音が東京に戻る日、空からは三郎が二人を見送る様にゆっくりと雪が落ちてくる。「俺、リンゴやるんだ。うまいのできたら送るよ」と裕一に笑顔を向ける浩二。三郎のおかげで、古山家の兄弟はようやく仲直りすることができた。

 喜多一を出た裕一は、叔父・茂兵衛(風間杜夫)のところに向かい、養子になる約束を反故にしたことを謝罪。すると、茂兵衛はろくろを回しながら「好きなことだけで飯が食えるやつは一握りだ。精々気張って、かみさんと子供に迷惑かけるんじゃないぞ」と、祝いに形が不揃いな夫婦茶碗を渡す。大きさが一緒で夫用か妻用か分からないその茶碗は、役割に関係なく互いを支え合う裕一と音の様子を表していた。

 第12週は、音の亡き父・安隆(光石研)や喫茶「バンブー」の梶取保(野間口徹)とその妻・恵(仲里依紗)、双浦環(柴咲コウ)など、登場人物たちのアナザーストーリーがオムニバス形式で展開される。(苫とり子)

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