本論を始める前に、まず状況をおさらいしてみましょう。いわゆる『アベンジャーズ』系映画のマーベル・シネマティック・ユニバース（MCU）は今後劇場公開と並んでディズニープラスの配信ドラマにも力を入れていきます。そして映画とドラマは有機的にリンクしていく。MCUはひとつひとつの映画をつなげたように、今後は映画ととドラマがつながるわけです。

　来年予定されているドラマ『ワンダヴィジョン』『ファルコン＆ウィンター・ソルジャー』『ロキ』らのドラマは、映画『アベンジャーズ／エンドゲーム』の後、これらのキャラクターになにが起こったかを描いているわけです。一方、これらと並んで予定されているドラマ『ミズ・マーベル』『シーハルク』『ムーンナイト』はここで新しいヒーローたちを一旦デビューさせて映画にも出していくという展開のようです。

　さて、今回はドラマ『ホークアイ』についてですが、本作は『アベンジャーズ』シリーズには欠かせない、ホークアイことクリント・バートンを中心に描くドラマです。演じるは映画同様ジェレミー・レナ―。ホークアイは常人ですが弓の名手であり、様々な仕掛けを施したトリック・アロー（矢）でエイリアンからロボットまで討ち抜いていきます。

　こう書くと『ワンダヴィジョン』ら同様、『アベンジャーズ／エンドゲーム』の後に続くドラマというわけですが、その一方で本作において新しいヒーローをデビューさせる、という意図もあるようです。それがヘイリー・スタインフェルドが演じると言われているケイト・ビショップです。

　ヘイリー・スタインフェルドは、トランスフォーマー映画の名作『バンブルビー』の主人公を演じており、またアカデミー賞を受賞したアニメ映画『スパイダーマン：スパイダーバース』ではスパイダー・グウェンの声を演じています。歌手としても活躍中の注目の若手女優です。現在、ニューヨークなどでジェレミー・レナーとともに撮影している現場が多数目撃されており、今回彼女がケイト・ビショップ＝2代目ホークアイを演じることはほぼ間違いないかと思います。

　ちなみに、原作コミックではわりと裕福な家庭の女の子で元々格闘技とか習っていたが、ある事件をきっかけにヒーローたちと知り合うようになり、結果ホークアイを襲名するというキャラクターです。

　彼女をこのドラマでデビューさせる狙いはいくつか考えられるのですが、MCUとしてヒーローの若返りをはかっていきたいのだと思います。イスラム教徒の10代の女の子が超人となる『ミズ・マーベル』はその典型。またスパイダーマン映画でも、ピーターより若い黒人の男のマイルズ・モラレス（アニメ映画『スパイダーマン：スパイダーバース』の主役であり、最近ではゲームの『Marvel’s Spider-Man: Miles Morales』メインキャラ）を密かにオーディション中との噂もあります。10代のヒーローを多数登場させることで、現在10代の観客もとっていきたいのでしょう。

　コミックではケイト・ビショップは“ヤング・アベンジャーズ”や“ウエスト・コースト・アベンジャーズ（基本アベンジャーズは東海岸、NYに拠点なので）”にも参加しています。これらのコミックでケイト・ビショップの仲間となるウィッカン、スピード、ミス・アメリカといったキャラは、ドラマ『ワンダヴィジョン』や映画『ドクター・ストレンジ・イン・ザ・マルチバース・オブ・マッドネス（原題）』に登場すると言われているので、MCUの方でも“ヤング・アベンジャーズ”や“ウエスト・コースト・アベンジャーズ”がフィーチャーされてもおかしくないのです。

　ドラマ『ホークアイ』ではジェレミー・レナ―演じるクリント（つまり初代ホークアイ）がなんらかの理由で聴覚を失うというファンベースの噂もあり（原作ではホークアイが聴覚障害を患う描写があります）、ヒーローを続けられなくなった彼がケイトにホークアイを継がせるという展開かもしれません。

　と、この原稿を書いている途中でさらにすごいニュースが。なんと映画『ブラック・ウィドウ』で2代目ブラック・ウィドウになると言われているエレーナ・ベロワ（演じるのはフローレンス・ピュー）がこの『ホークアイ』に登場との報道（参照：Black Widow’s Florence Pugh Reportedly Joins Hawkeye Show｜SCREENRANT）が！　これが本当なら映画『ブラック・ウィドウ』とドラマ『ホークアイ』はリンクする可能性が高い！　これまた楽しみな展開になってきました！　続々と新情報が明らかになっているMCUドラマ。まずは2021年1月15日配信の『ワンダヴィジョン』を楽しみに待ちましょう。

■杉山すぴ豊（すぎやま　すぴ　ゆたか）
アメキャラ系ライターの肩書でアメコミ映画に関するコラム等を『スクリーン』誌、『DVD&動画配信でーた』誌、劇場パンフレット等で担当。サンディエゴ・コミコンにも毎夏参加。現地から日本のニュース・サイトへのレポートも手掛ける。東京コミコンにてスタン・リーが登壇したスパイダーマンのステージのMCもつとめた。エマ・ストーンに「あなた日本のスパイダーマンね」と言われたことが自慢。現在発売中の「アメコミ・フロント・ライン」の執筆にも参加。Twitter

■リリース情報
『バンブルビー』
発売中
ブルーレイ・DVD：3,990円（税別）
4K Ultra HD・ブルーレイ：5,990円（税別）
発売・販売元：NBCユニバーサル・エンターテイメント
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