2012年に設立され『レディ・バード』や『ミッドサマー』など作家性を打ち出した映画でハリウッドに新風を吹き込み、アカデミー賞などの映画賞を席巻する制作会社「A24」がまたホームランを放った。 トロント国際映画祭史上、最長のスタンディングオベーションを巻き起こし、「鮮やかなまでに観る者の心をわしづかみにする」と世界中を大熱狂させた最新作は『WAVES／ウェイブス』。傷ついた若者たちが再び愛を信じて生きる希望の物語が独創的なカメラワークや色彩デザインの美しさ、ストーリー展開の巧妙さで描かれているが、フランク・オーシャンやレディオヘッド、カニエ・ウェスト……など音楽シーンを席巻してきたアーティストたちの全31曲に及ぶ既成曲の使い方のうまさに驚嘆の溜息がでる。今やひっぱりだこの音楽スーパーバイザー、ランドール・ポスターのセンスに唸らされ、映画における音楽の大切さを確認できる点でも見逃せない秀作だ。