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本田翼の「強くなりたい」に込められたもの 『絶対零度』憎しみの先にある正しさ

リアルサウンド

18/7/24(火) 6:00

 犯罪を未然に防ぐ“ミハンシステム”が、主人公・井沢範人(沢村一樹)を「危険人物」とみなす不穏な情報で幕を閉じた『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』(フジテレビ系)第2話。刑事モノの型である1話完結の面白さと、前シリーズまでの主人公・桜木泉(上戸彩)の失踪の謎、井沢をはじめとした登場人物たちの背景、それぞれが絶妙に絡み合い、ここまで目を離すことができない展開が続いている。

参考:沢村一樹が語る『絶対零度』“ミハン”のチームワーク 「AIでは読めない、新しい結束が生まれた」

 第3話は井沢の悲惨な過去が明らかとなる回想シーンから始まる。井沢は自身の誕生日に、愛する娘と妻を殺害されていたのだった。井沢同様に自身の過去にトラウマを抱えているのが、本田翼演じる小田切唯だ。小田切は学生の頃に暴行被害に遭ったことから、自身のような被害者を出さないために警察を志したという。そんな小田切にとって、自身の体験を重ね合わさざるをえなかったのが今回の事件だ。

 今回、ミハンが割り出した危険人物は、飛び降り自殺を図り、昏睡状態となっていた若槻真帆(柴田杏花)。若槻のスマートフォンから彼女が所属していた大学のサークルのSNSツールへ「復讐してやる」のコメントが発信されたこと、爆弾の材料となるニトログリセリンが購入されたことが、彼女が危険人物に導きだされた理由だ。彼女はなぜ自殺を図ったのか、一体誰が彼女に成り代わり復讐をしようとしたのか、というのが第3話のポイントだ。

 真帆が所属していたテニスサークルの代表は、学生でありながらカフェバーを運営する、大手企業の御曹司である湯川司(佐野岳)。イケメンでお金持ち、自分に自信を持っているいわゆる“チャラ男”なだけに、湯川が何らかの形で真帆を追い詰めただろうというのは、多くの視聴者がすぐに察したことだろう。真帆を愛していた父親、真帆に好意を寄せていた阿部(落合モトキ)のどちらかが、湯川のような“クズ”へ復讐を誓ったのだろうと。

 しかし、事件の首謀者は意外なところから現れる。意識不明の彼女のリハビリ担当医だった大谷(前原滉)が、真帆への歪んだ愛情から計画を企てたのだった。真面目に仕事をしているはずなのに、嫌な仕事ばかり押し付けられる。真面目に生きてきたはずなのに、誰にも相手にされない。真面目にやってきたはずなのに、なぜ不真面目な奴らが優遇される? ……おそらく、大谷はこんなことを思いながら生きてきたのだろう。

 大谷が井沢に語ったように、確かに世の中には理不尽なことは多い。だが、多くの人が思うとおりにいかないことに不満を抱えながらも、受け入れたり、努力したり、他者と協力し合ったりしながら、そんな日々を乗り越えていく。大谷のように「世の中は間違っている!」と言ってしまうのは簡単だ。しかし、間違っているものに向き合うことを諦め、「真帆のために」という自分のエゴのために他者を利用することほど愚かなことはない。

 ミハンチームの各々の活躍によって、大谷の爆弾は処理され、湯川も一命を取り留める。一度は真帆への暴行を認め自首を誓った湯川も、命が助かれば知らぬ顔。小田切は誰よりも真帆の気持ちが分かるからこそ、湯川に憎悪の目を向ける。それでも刑事として「事件を未然に防ぐ」任務を小田切は全うする。「警察官として正しかったのかもしれなけいど、人として正しかったのか、自信がない、もっと強くなりたい」と。犯罪を未然に防いでいるミハンチームも、犯罪の引き金となった人物を裁くことはできない。しかし、彼らが防いだ事件によって、憎しみの連鎖を止めていることができていることも事実だ。

 『陸王』(TBS系)や『HiGH&LOW』シリーズで見せた顔とは別人、生粋の“クズ男”を演じた佐野岳の好演もあり、小田切と同じように苛立ちを覚えた視聴者は多かったことだろう。結局、第2話に続き湯川には“処刑”がくだされる。処刑人は怪しげな表情を浮かべる井沢なのか、それともまったく別人なのか……。(石井達也)

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