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L.A. Guns、Buckcherry、The Treatment……80年代ハードロックを継承する新譜10選

リアルサウンド

19/3/31(日) 15:00

 3月22日、Motley Crueの自伝小説『The Dirt』(2001年)が原作の映画『ザ・ダート:モトリー・クルー自伝』がNetflixで公開されました。この映画はもともと2006年頃から映画化が準備されていましたが、その過激な内容もあってかキャスティング含め計画が難航。最終的にMotley Crueのメンバーがプロデューサーを務める形で、昨年初頭にようやく撮影がスタートし完成まで漕ぎ着けました。

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 Motley Crueは2015年末のライブをもって活動を終了させていましたが、この映画のために約3年ぶりに4人勢揃い。ボブ・ロックをプロデューサーに迎え4曲(新曲3曲、カバー1曲)を新たにレコーディングして、ファンを驚かせました。この新録曲が収録されたのが、映画公開と同日にリリースされたサウンドトラックアルバム『The Dirt Soundtrack』です。

 本作はサントラと言いながらも、収録されているのはすべてMotley Crueの楽曲で、映画のベースとなる80年代の人気ナンバーが多数収録されています。映画のテーマソングと言える新曲「The Dirt (Est. 1981)」では劇中でトミー・リー(Dr)役を演じたラッパーのマシン・ガン・ケリーをフィーチャー。さらに映画の舞台となる80年代のヒット曲、マドンナの「Like A Virgin」をハードロック調にカバーするなど、新録曲はどれも90年代後半のMotley Crueらしいダークなアレンジが施されています。

 この映画を観て、久しぶりに80年代のヘアメタルやストレートなハードロック作品を引っ張り出してみた、なんて人も少なくないのでは。ということで、今回はそういった80年代のストレートなハードロックが、2019年の今にどう生き延びているのかを確認する意味も含めて、最近リリースされた同系統の新譜を紹介していきたいと思います。

 まず、Motley Crueと同時代を生きたロサンゼルス出身のバンド、L.A. Gunsから。90年代以降はメンバーチェンジが激しかったものの、2016年にフィル・ルイス(Vo)とトレイシー・ガンズ(Gt)が再合流し、翌2017年には『LOUD PARK 2017』での来日も実現しました。

 3月末には前作『The Missing Peace』(2017年)から1年半ぶりのニューアルバム『The Devil You Know』を発表したばかり。作風的には前作の延長線上にあるものの、このバンドが本来持っていたダーティーさが復調しており、ミドルテンポ中心のハードロックチューンの数々から80年代末の全盛期に通ずる世界観を楽しむことができます。

 L.A. Gunsと同時期にデビューを果たし、「Love Song」「Signs」などのヒット曲を持つカリフォルニア州サクラメント出身のTeslaも、3月上旬に5年ぶりの新作『SHOCK』をリリース。これまでに発表した8枚のオリジナルアルバムはすべて全米TOP40入りを果たし、最新作も最高21位と「ロックが売れない」と言われる現代において好成績を残しています。

 『SHOCK』にはDef Leppardのギタリスト、フィル・コリンがプロデューサー&ソングライターとして参加。そのせいもあってか、どの曲も練り込まれたアレンジが印象的でコンパクトな仕上がりで、キャッチーなメロディと重厚なコーラスはDef Leppardにも通ずるものがあり、80年代のTeslaらしさを現代的にポリッシュした普遍性の強い楽曲満載となっています。

 Motley CrueやGuns N’ Rosesなど、グラマラスなバンドは90年代のグランジブームにより一時的に廃れますが、アメリカでは2000年前後にBuckcherryがデビューすることにより息を吹き返します。そのBuckcherry、デビュー当時のメンバーはすでにジョシュ・トッド(Vo)のみとなってしまいましたが、先日リリースされた3年半ぶりの新作『Warpaint』ではグラマラスロック健在をアピールしています。

 通算8作目となるこのアルバムは、メインソングライターのひとりだったオリジナルメンバーのキース・ネルソン(Gt)脱退後初のオリジナル作品ですが、初期のBuckcherryが持ち合わせていた危うさやアクの強さが復活した、ある種の原点回帰的1枚。そんな中、Nine Inch Nails「Head Like A Hole」という異色のカバーも含まれており、デビュー20周年を経てもなお挑戦的・挑発的な姿勢が感じられます。

 ここ日本ではBuckcherryと同時期にデビューを果たしたのが、スウェーデンの爆走ロックバンドBackyard Babies。ここ日本でも常に高い人気を誇る彼らも、今年結成30周年を迎えたばかりです。

 そんなアニバーサリーイヤーの今年3月(日本では4月3日)にリリースされたのが、通算8枚目のスタジオアルバム『Sliver & Gold』。長きに渡る活動休止期間を経て2015年に発表された前作『Four By Four』がリハビリ期間だったんじゃないかと思えるほど、初期衝動に満ちたアグレッシブなロックンロールアルバムに仕上がっています。一度聴いただけで耳に残るキャッチーな楽曲の数々は、どれもこれも「これぞロックンロール!」と太鼓判を押したくなるような仕上がりです。

 解散~再結成を経て、現在もなお活動を続けるハードロックバンドは数多く存在しますが、往年の人気バンドのメンバーが一堂に会して新バンドを結成するケースも少なくありません。ここからはそういった“オールドウェーブによるニューカマー”をいくつか紹介していきましょう。

 今年1月に1stフルアルバム『Get It Out』をリリースしたAltitudes & Attitudeは、Megadethのデイヴィッド・エルフソンとAnthraxのフランク・ベロという大御所スラッシュメタルバンドのベーシストたちが結成したスーパーバンド。フランクがボーカル&ギターを務め、デイヴィッドがベース、A Perfect CircleやAshes Divideなどで活躍したジェフ・フリーデルがドラムというトリオ編成で活動しています。

 どうしてもMegadethやAnthraxに近いサウンドをイメージしがちですが、このアルバムで展開されているのはFoo Fightersにも似たオルタナ経由のアメリカンハードロック。親しみやすいメロディとフックが効いたバンドアンサンブルは非常に現代的で、MegadethやAnthraxに疎い非メタルリスナーにも十分にアピールする内容です。

 Motley Crueと同時期に活躍したDokkenの黄金期メンバーであるジョージ・リンチ(Gt)、ジェフ・ピルソン(Ba)、ミック・ブラウン(Dr)が、現Warrantのロバート・メイソン(Vo)を迎えて新たに結成したのが、The End Machine。この3月にデビューアルバム『The End Machine』を発表しました。

 アルバムは近年のジョージの趣味が反映された、ブルージーな正統派ハードロックが中心。そんな中にパワフルなミドルナンバーや攻撃的なアップチューン、憂いに満ちたバラードも含まれており、往年のDokkenを彷彿とさせるフレーズやコーラスも飛び出すなど、ニヤリとする要素も満載です。そんな楽曲群をロバートが時にパワフルに、時に繊細にと器用に歌いこなし、良い味を出しています。

 ブルース・ディッキンソンやロブ・ハルフォードとの共演や、Helloweenやイングヴェイ・マルムスティーンなどの作品のプロデュースでも知られるギタリストのロイ・Z。彼がかつて在籍していたTribe Of Gypsiesのチャス・ウェスト(Vo)と結成したWest Boundは、先ごろデビューアルバム『Volume I』をリリースしたばかりです。

 数々の大御所たちとタッグを組んできたロイの才能とセンスが発揮された今作は、グルーヴィーなミドルチューンからクラシカルなメタルチューン、チャスの圧倒的なボーカルワークが楽しめるバラードまでバラエティに富んだナンバー満載。ロイのギターワークもテクニカルなものから渋いアコースティックまで、多彩さを味わうことができます。

 Bad CompanyやHumble Pieといった伝説的ロックバンドにも在籍した経歴を持つデイヴ・“バケット”・コルウェルが結成したBuckets Rebel Heartは、昨年12月の本国リリースに続いて日本でも年明け1月下旬にデビューアルバム『20 Good Summers』をリリースしています。

 ポール・“タフ”・エドワーズ(Dr)が、ジム・スタップリー(Vo)、トム・スワン(Ba)といった盟友たちと制作したこのアルバムでは、ヘヴィメタル以前の伝統的なブリティッシュロックをベースに、レイドバックしたブルースロックやカントリーテイストのスローナンバーなどを多数収録。The Georgia Satellitesのリック・リチャーズ(Voとして参加)や、故スティーヴ・マリオットの実娘モリー・マリオット(Voとして参加)、Michael Schenker Festのスティーヴ・マン(Hornとして参加)などのゲスト陣も、年季モノのウィスキー並みに味わい深い楽曲群に華を添えています。

 最後に2010年代に登場した、今後のシーンを担っていくであろうハードロックバンド2組を紹介して、今回の連載を終えたいと思います。

 1組目はイギリス・ケンブリッジをベースに活動する5人組バンドThe Treatment。『Ozzfest Japan 2013』での来日経験を持つ彼らはデビュー当時20代前半だったにも関わらず、70年代のUFOやThin Lizzy、往年のAerosmithやGuns N’ Rosesをイメージさせる楽曲&サウンドで好評を博しました。

 通算4作目のアルバムとなる『Power Crazy』では過去3作同様、上記のような先陣たちを思い起こさせる正統派ハードロックを展開。デジタルコーティングされたサウンドの多いモダンロックにはない生々しさや躍動感あふれる演奏、今作から参加するトム・ランプトン(Vo)の歌声からは往年のAC/DCにも似たものを感じます。今やクラシックロックと呼ばれる往年のロックサウンドをそのまま現代にトレースしたような本作は、1周回って新鮮ではないでしょうか。

 そしてもう1組は、日本デビュー前に来日公演を行なった経験を持つフィンランド出身の5人組バンドTemple Balls。20代半ばという若手の彼らは、デビュー作『Traded Dreams』(2017年)に続く2ndアルバム『Untamed』を先日リリースしたばかりです。

 もともとはヘアメタルバンドだったという経歴の持ち主ですが、今作で表現されている強いビートと疾走感のあるハードロックサウンドに流麗なメロディ、分厚いコーラス&ハーモニーなどには実に北欧バンドらしいものがあり、今回紹介したバンドの中でも随一の独特な香りを発しています。細部にまでこだわったサウンドメイキングは先のThe Treatmentとは対照的ですが、こういったバンドたちがこの先のシーンをどう切り開いていくのか楽しみなところです。(西廣智一)

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