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池上彰の 映画で世界がわかる!

『スターリンの葬送狂騒曲』ー絶対的な独裁者が急死すると、何が起きるのか。

毎月連載

第2回

(C)2017 MITICO - MAIN JOURNEY - GAUMONT - FRANCE 3 CINEMA - AFPI - PANACHE - PRODUCTIONS - LA CIE CINEMATOGRAPHIQUE - DEATH OF STALIN THE FILM LTD

 日本の株式市場の歴史には「スターリン暴落」という項目があります。1953年3月5日、「スターリン死去」のニュースが日本に伝わると、その日の日経平均株価が歴史に残る大暴落を記録したのです。平均株価はいまよりずっと低いレベルですが、下落率は10%。当時としては最大の下落率でした。
 東西冷戦時代に、いわば“敵方”の大将の死去が、なぜ資本主義国家である日本の株式下落につながったのか。
 ひとつは、当時スターリンがソ連や社会主義圏で絶対的な指導者として崇められていたことです。その指導者がいなくなることで、世界はどこに向かうのか、不安が広がったのです。
 もうひとつは朝鮮戦争の真っただ中だったことです。1950年6月に始まった朝鮮戦争が休戦になったのは1953年7月。スターリンが死去したときは、まだ戦争中でした。北朝鮮の背後にソ連が存在することは明らかでしたから、スターリンがいなくなることで、朝鮮戦争も終わるのではないかとの期待が高まりました。
 戦争が終わることは望ましいのに、なぜ株価が下がったのか。当時の日本経済は「朝鮮戦争特需」に沸いていました。戦争が終われば特需も消え、経済が落ち込むのではないか。こんな思惑から朝鮮特需の関連株を中心に値下がりしたのです。

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