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乃木坂46、相次ぐメンバー卒業の先にも広がる未来への“希望” アンダーライブ北海道シリーズを見て

リアルサウンド

18/10/20(土) 13:00

 乃木坂46のアンダーライブ北海道シリーズが、10月2日から5日の4日間にわたってZepp札幌で行われた。近年のアンダーライブはホールが中心だったので、スタンディング形式はShibuya O-EASTで行われたシリーズ化する前のライブ(2014年5月3日)を思い起こさせた。

参考:乃木坂46 白石麻衣、生田絵梨花、松村沙友理の料理の腕前は? 生田「ケースにピッと入れてチン」

 アンダーライブ全国ツアーでは史上最高といえる人口密度の会場に熱気が立ち込めるなか、「OVERTURE」の後に登場したのは、黒いレザーと網タイツといういでたちの中田花奈。今シリーズのセンターは曲線美を見せつけながらのパフォーマンスで観客からの歓声を誘う。

 伊藤万理華、中元日芽香、生駒里奈、川村真洋といったダンス技術の高いメンバーが卒業していくなか、川村は中田に乃木坂のダンスを託した。その想いに応えるようなダンスは、ライブハウスをバーレスク・クラブに変えた。

 和田まあや、渡辺みり愛、阪口珠美、佐藤楓が合流し、グループ屈指のセクシーナンバー「欲望のリインカーネーション」を披露。3期生の2人にとっては新境地ながら、阪口は毛先にまで神経が届くような緻密さを見せ、佐藤は手足の長さを活かしてダンスをモノにしていた。

  そして、メンバーが全員そろって今回(21枚目シングル)のアンダー曲「三角の空き地」をパフォーマンス。中田による心の渇きを訴えてくるようなダンスは迫力十分だ。ここまでの演出は同曲のMVの設定に近い世界観でもあった。

 「不等号」のセンターは北野日奈子と寺田蘭世。オリジナルのセンターである中元の魂を受け継ぐ2人らしく、心を焦がすような表現をブツけていく。「バレッタ」は和風にアレンジされ、和装の樋口日奈が和傘を使いながら妖艶に踊った。

 「走れ!Bicycle」はバスケットボールの動きを取り入れた斬新な振り付けで、ユニフォームを着て、ボールをパスしながらのパフォーマンスがメンバーのアイドル性を引き立たせることに成功。本人は年齢を気にしていたが、伊藤かりんのキュートさは発見だった。

 「13日の金曜日」は、メンバーそれぞれがクマのぬいぐるみを片手に歌うのだが、伊藤理々杏のぬいぐるみの使い方にアイドル力の高さを感じた。センターの北野がスピーカーの上にクマのぬいぐるみをおいて“気”を放つと、クマが人間サイズに巨大化。最後は北野が「がおー」ポーズを決める。昨年11月から活動を休止していた北野は7月のバースデーライブから本格復帰(フル参加)を果たしていたが、今回のライブで“陽”の部分も復活したように感じた。

 今回のライブではセットにおかれているバスケットボールやクマのぬいぐるみが活用されていたのだが、「私、起きる。」でいよいよベッドの出番だ。そのセンターに佐々木琴子を配置した采配は見事的中。彼女のけだるさとウィスパーボイスは曲の雰囲気にマッチしていた。

 その後もメンバーの個性を活かしたユニットが続くが、なかでも「逃げ水」のモータウンアレンジを歌った能條愛未、樋口、かりんの3人にはひと際大きな拍手に包まれた。ダイアナ・ロスとThe Supremesを想起させるような衣装に身を包んだ能條の伸びやかな歌声と、樋口&かりんのハーモニーは鳥肌モノだった。

 気づくとステージからは小道具がなくなり、いつものアンダーライブのようなシンプルなステージになっていた。ここからは怒涛の盛り上がり曲が続く。

 「おいでシャンプー」は、オリジナルでは選抜フロントの中田がセンターに立ち、「ナカダカナシカ」コールを真正面から全身で浴びた。向井葉月は全力ダンスで明るく照らす。「シークレットグラフィティー」では、センターの樋口の隣で喜びに満ち溢れた顔の阪口が踊っている。樋口を敬愛し続け、2年前のオーディションで「シークレットグラフィティー」を歌った阪口の夢がひとつ実現した瞬間だ。

 理々杏が全身全霊で煽ってからの「ガールズルール」で会場のボルテージはピークに達した。さらに、アンダー曲の原点である「狼に口笛を」のセンターは佐藤がクールに務め上げる。22枚目シングルでの選抜入りが決まっている2人をアンダーメンバーたちが送り出すような構成だ。このライブで心技体を磨いた2人なら選抜でもやっていけるはず。

 「インフルエンサー」は中田がセンター。この曲の発売当時、生駒と万理華に並んでパフォーマンスを評価された中田は、年末の『第59回 輝く!日本レコード大賞』で卒業した万理華のポジションに入ると活き活きした表情をカメラに抜かれ、多くの視聴者を魅了した。Zepp札幌のステージには、あの時の中田がいた。選抜とアンダーのボーダーで葛藤することも多い中田だが、すべてから解き放たれたように踊る。ステージ上は自由な空間なのだ。

 「嫉妬の権利」は北野と山崎怜奈が表現力でバトルするような熱いWセンターだったが、裏センターの佐々木琴子にも目がいった。激しいだけじゃない優雅なダンススタイルはセンターでこそ映えるようだ。

 終盤、アンダーライブを象徴する「ここにいる理由」「あの日 僕は咄嗟に嘘をついた」をセンターでパフォーマンスした中田は、本編最後のMCで、チャンスを次につなげられない現状を「努力の仕方を間違えていたのかな」と思うこともあったと打ち明けたうえで、今回のシングルでは「最高の思い出ができました」と語った。

 乃木坂の選抜常連メンバーは突き抜けたオリジナリティを持っている。中田も「アイドルオタク」や「ラジオ好き」といったジャンルで他のメンバーに秀でているが、やはりパフォーマンスにこだわってしまう。その愚直さが彼女の魅力なのだ。

 アンコールでは、中田が6年前のセンター曲「春のメロディー」を歌うと、「13日の金曜日」のクマが再登場して北野に手紙を渡す。ここで次期アンダーセンターに北野が選ばれたことと、12月19日と20日に武蔵野森総合スポーツプラザで22枚目メンバーでのアンダーライブが行われることが発表された。

 さらに「ジコチューで行こう!」では、アンダーライブ期間中にあえて素っ気ない態度をとっていた佐々木が中田と笑顔で抱擁。このままハッピーエンドで終わると思ったが、「乃木坂の詩」歌唱後、能條が乃木坂46からの卒業を口にした。

 1年半前の全国ツアー中に卒業を決断したという彼女は、「乃木坂に入っていなかったらできなかったこともたくさんさせてもらったし、素晴らしい景色もたくさん見せていただきました」と話すと、涙が溢れ出して言葉が詰まってしまう。右手で脚をポンポンと叩いて自身を奮い立たせると、「ツラくて、悔しくて、もどかしくて……自分が嫌になって」しまう時も多かったと明かした。そんな彼女を支えたのはファンの存在だったという。

 「きっかけ」では、1期、2期、3期と期ごとにメンバーが能條を挟んで歌う。川後陽菜と樋口、和田まあやは号泣し、中田は涙混じりに「めっちゃツラい!」とストレートに発言した。かりんが「1期生が呼吸困難になっちゃってる」と言いながら、そんな状況をフォローしていく場面が印象的だった。

 Wアンコールで最後に歌ったのは能條が選抜に選ばれた「制服のマネキン」のカップリングでもある「指望遠鏡」。能條は泣きじゃくる向井、そして、素直になれなかった北野を抱きしめる。現在の彼女の心境と重なる部分が多いと思われる歌詞のなかでも、能條がステージの真ん中で歌いあげたパートは〈涙で前が曇るなら/深く息吐いて〉だった。

 ストレートなハッピーエンドにはならなかった千秋楽公演だったが、中田は「最高の1日でした」と締めた。それは、この日の瞬間瞬間がかけがえのないもので、熱くて優しいファンが思い出の証人になったからだろう。

 Wアンコールが終わるも「じょーさん」コールが鳴り止まない。能條は申し訳なさそうにひとりでステージに出てくると、「古いネタですが」(2014年10月20日放送の『乃木坂って、どこ?』「乃木坂POP女王選手権」)と前置きして「ここにいるみんなの幸せを引き寄せるんだ!」と言ってファンと合唱。最後まで、他人の幸せを願うという「愛と勇気の戦士」能條らしいラストステージになった。

 卒業が相次ぐ乃木坂46だが、アンダーライブには「希望」というべき新星が輝いている。22枚目のアンダーには鈴木絢音と岩本蓮加が帰還し、アンダーライブで乃木坂オーディションを受けることを決意した久保史緒里が初参加する。そして、乃木坂の太陽と月を兼任する北野がセンターに再び立つという、「最強ふたたび」と言いたくなる布陣だ。彼女たちが東京では1年半ぶりとなるアンダーライブでビックバンを起こすに違いない。(大貫真之介)

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