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Tempalayが体現したバンドのユニーク性 渾然一体のステージ見せた新木場STUDIO COAST公演

リアルサウンド

20/12/8(火) 17:00

 新型コロナウイルスの影響でツアーが中止になってしまってから9カ月。Tempalayがようやく「ツアーファイナル」にたどり着いた。入れるお客さんの数が限られるため、1日2回の二部公演、LIVEWIREと組んでのライブ配信も行われたこのファイナル。新木場STUDIO COASTという大きな会場で、映像や照明などの演出も駆使して彼らが伝えたのは、Tempalayというバンドの唯一無二の存在感と、生でうごめく音楽のおもしろさだった。

 ラジオやテレビからサンプリングした音声、弦が擦れるようなノイズ、電子音などがコラージュされた異世界に誘うようなオープニングから、彼らが1曲目に披露したのは「脱衣麻雀」だった。気だるいグルーヴのなか、AAAMYYYの3カウントが聞こえ、オレンジ色のトラックジャケットを来た小原綾斗が歌い出す。小原のハイトーンと白いベールで顔を覆ったAAAMYYYのアンニュイな声が描き出すハーモニー、そして急激なギアチェンジを繰り返して変節するリズム。ステージ全面に投影されるサイケデリックな映像も相まって、一気に引き込まれていく。

 続けてサポートを務める亀山拳四郎のベースラインから突入した「SONIC WAVE」では小原のがなり立てるラララの声に合わせてフロアで手が揺れる。「のめりこめ、震えろ。」という曲名のとおり、とんでもない吸引力と刺激を放つステージ。ステージを写したサーモグラフィカメラの映像が、これからますます熱を上げていくであろうライブを予言しているようだ。小原が曲終わりに絶叫すると、フロアからは大きな拍手が起こった。

 緩急自在のリズムワーク、幾重にも重なる声、そしてときどきはっとするほど美しいメロディと、シニカルだけどエモーショナルな歌詞。全編にわたって、Tempalayの音楽を形作る要素、STUDIO COASTの大きな空間によって反響増幅し、ビリビリと伝わってくるよう。「TIME MACHINE」を終えると「こんにちは! Tempalayです!」というサンプリングボイスが響き渡り、スクリーンにバンドロゴが躍る。ここで投下されたのが「どうしよう」である。ピンク、オレンジ、紫に緑。極彩色のマーブル模様をバックに、名刺代わりといえる1曲が繰り出される。

 「Festival」での長いセッション、小原の歌声と抑制されたアンサンブルがロマンチックな風景を描き出す「革命前夜」。曲ごとにさまざまなニュアンスを表現しながら、Tempalayとオーディエンスの旅は続いていく。そこに一役買っていたのがスクリーンに次々と映し出される映像だ。この日の映像演出を担当していたのはMargt。実写素材やCGを使ったVJはもちろん、オイルペインティングやマーブリングもすべてリアルタイムでやっていたのだというから驚きである。音楽と渾然一体となってグルーヴを生み出していたビジュアルもまたこの日の主役だったし、逆にいうとビジュアルのパワーによって、Tempalayの音楽は何倍にもカラフルに、そしてパワフルになっていた。メッセージを聴くとか、演奏の機微を楽しむとか、音楽の受け取り方はいろいろあるけれど、Tempalayの音楽は身体と脳みそごとダイブして没入できる音楽だ。実験的で、プログレッシブで、攻撃的で、エモーショナル。でも怠惰に弛緩していて、開放的で、そしてポップ。映像と音、そしてステージにいる4人の佇まいも含めて、すべてが生き物のように変化し続けながら進化していくTempalayというユニークなバンドのありようを体現していた。

 「はい、どうも」。「新世代」のあと、小原が挨拶。坊主頭になったJohn Natsukiがサンプラーから出す「確かに」とか「なるほど」とか(あとは「夏だね!」とか)いう相槌と一緒に喋りだす。「MCやらないバンドとしてやっていきたいんで」と適当にメンバー紹介したりしている小原。いい感じだ。続く「テレパシー」ではAAAMYYYのラップとともにキレのあるボーカルを響かせる。深いブルーの光のなかドープなサウンドスケープが広がった「深海より」、ループするベースとドラム、そしてAAAMYYYのエフェクトのかかったボーカルがここに来て一段ディープな世界へと連れていく「カンガルーも考えている」、そして個人的には2020年屈指の名曲と思っている「大東京万博」へ。東京タワーをモチーフにした映像を背に、タイトさとラフさ、儚いメランコリアとお祭り騒ぎを大胆に上下動するこの曲こそ、Tempalayのおもしろさと凄みそのものである。本編最後に演奏されたのは「そなちね」。メンバー全員の声が重なるサビが熱を帯びて響きわたった。

 アンコールを求める拍手に応えてステージに戻ってきた4人。John Natsukiが坊主にした理由などをリラックスした雰囲気で話しつつ、「坊主もいいですが、ライブハウスもいいですな」と小原。二部公演の大変さを語りながらも、こうしてツアーファイナルを迎えることができた喜びがその口調と表情から滲み出ている。そして「New York City」「Last Dance」の2曲を披露すると、4人は満足げな表情で楽屋へと引き上げていった。その様子をカメラを通して生中継するその画面には、ワーナーミュージック・ジャパンから12月9日に配信シングル「EDEN」を配信リリースするという告知の文字。こんな発表のしかたもやっぱり彼ららしい。

■小川智宏
元『ROCKIN’ON JAPAN』副編集長。現在はキュレーションアプリ「antenna*」編集長を務めるかたわら、音楽ライターとして雑誌・webメディアなどで幅広く執筆。

■リリース情報
配信シングル 「EDEN」
12月9日(水)
配信はこちら
ティザー映像はこちら

■関連リンク
Tempalay公式サイト
Tempalay Twitter
Tempalay Instagram

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