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筧美和子の振れ幅に、瀧本美織の支え 『ピーナッツバターサンドウィッチ』に集った女優たち

リアルサウンド

20/5/29(金) 8:00

 女性ファッション誌『with』(講談社)での読者アンケートをもとに、“婚活世代”の女性たちのリアルな声を反映して描かれた同名漫画を実写ドラマ化した『ピーナッツバターサンドウィッチ』(MBSほか)。同作は矢作穂香と伊藤健太郎をダブル主演に迎えたラブコメディだが、さまざまなタイプの女優がキャストに名を連ねていた。

 主演の二人を差し置いて、どうしても個人的に一番注目してしまったのは筧美和子だ。彼女はこの世代の役者の中でも、女優としての自身のポジションを確立させている存在と呼んで差し支えないだろう。連続ドラマでのゲスト出演が多い彼女だが、同クールにジャンルの異なる作品に出演していることもある。そこで知ることができるのは、彼女の演者としての振れ幅と作品への順応性だ。

【写真】ベットシーンに挑む筧美和子

 恋愛リアリティショー『テラスハウス』(フジテレビ系)の『BOYS×GIRLS NEXT DOOR』で知名度を上げた彼女だが、あそこに見られた“筧本人の素顔”というものは、かぎりなく影を潜めているように思う。もちろん、“素顔”とはいえ、それは彼女自身のある側面に過ぎないことは当然のこと。次々と見せてくれる筧の新しい顔には、いつも楽しませてもらっている。そんな中でも、代表作となった映画『犬猿』(2018年)や『スマホを落としただけなのに』(2018年)で見せた、いわば小悪魔的な役どころが得意なように思える。しかし今作『ピーナッツバターサンドウィッチ』では、控えめで自信がない、いわばこれまで多く演じてきたキャラクターとは逆ベクトルの現代女性を演じていたのだ。

 また、“テラハ繋がり”で言えば、Niki(丹羽仁希)が今作で本格的な女優デビュー。『ALOHA STATE』に出演していた彼女は、“テラハ”出演よりも先に、モデルとして広く活躍していた。女性ファッション誌『JELLY』の専属モデルであり、ショーのランウェイを気高く歩みながら、俳優道への一歩も、このたび踏み出したのである。彼女が演じていたのは、本人の華やかなパブリックイメージを反映したような役どころ。佇まいだけで魅せる様はさすがだ。演じ手としてはまだまだこれからといったところだが、同世代の先輩女優たちに囲まれたことで、得られたものは大きかったのではないだろうか。

 主演を務めていた矢作はすでに芸歴10年を数える女優だが、ここ最近になって彼女の存在を認識した方も多いのではないか。『思春期ごっこ』(2014年)、『クレヴァニ、愛のトンネル(2015年)などの主演作があったものの、一時海外へと留学。帰国後に『花筐/HANAGATAMI』(2017年)で大林宣彦監督作品のヒロインという大役を務め、映画ファンを驚かせた。その後、プライムタイムで放送された『僕らは奇跡でできている』(2018年/カンテレ・フジテレビ系)のレギュラー出演で知名度が上がった印象である。彼女の特徴的な声と力強い発語は大きな武器だと思う。今後、彼女にしか得られないポジションを築いていくのではないだろうか。

 堀田茜はモデルやバラエティ番組での活躍もあり、マルチな才能をこれまで開花させてきた。もともと女優としての活動もあったものだが、それが近年は活発化。現状、メインキャストを務めた映画『キスカム!~COME ON,KISS ME AGAIN! ~』が公開延期となっているところだが、これが公開されることは彼女にとって、さらに女優活動を活性化させる大きな一助となるように思える。映画の公開延期やドラマの放送延期のみならず、そもそも撮影なども延期となっている環境下、早く次なるステップに進む機会が訪れることを願うばかりだ。

 そして瀧本美織といえば、ここまでに述べてきたメンバーの中でも最もキャリアが長く、豊富である。2010年版の映画『彼岸島』で役者としての活動をスタートさせ、連続テレビ小説『てっぱん』(2010年~2011年/NHK総合)では“朝ドラヒロイン”を経験。『美男ですね』(2011年/TBS系)では民放の連ドラに初出演にして主演を務め、順風満帆な女優道を歩みはじめた。 宮崎駿によるスタジオジブリのアニメーション『風立ちぬ』(2013年)で演じたヒロインもハマリ役で、あの儚く響く声は、いまだにこの耳に残っている。彼女は声だけでも十分にキャラクターを表現できる演じ手なのだ。ところが、以降も出演作は絶えないものの、こういった、作品を背負って立つような役どころが少なくなってきているように思える。今作『ピーナッツバターサンドウィッチ』では、後輩女優たちを支えるポジションを全うした彼女だが、ぜひともまた、映画などで“作品の顔”を演じる姿が見たいものだ。

 すでに放送は終了してしまった『ピーナッツバターサンドウィッチ』だが、このようにさまざまなタイプの女優が顔を揃えていた。彼女ら演じる女性たちの“恋のゆくえ”が気になる作品だったが、個人的には彼女ら自身の、“女優たちのゆくえ”が非常に気になるところである。

(折田侑駿)

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