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浜辺美波は“逆境”に立ち向かう役がよく似合う 『タリオ』はターニングポイントに?

リアルサウンド

20/10/10(土) 8:00

 浜辺美波主演、復讐ものの新ドラマ『タリオ 復讐代行の2人』(NHK総合)が放送開始となった。こう聞くと、前クール放送の『私たちはどうかしている』(日本テレビ系、以下『わたどう』)が頭を過ぎる人も多いのではないだろうか。

 濡れ衣を着せられた親の無実を晴らすべく、親と同じ職業に就く点も似ており(厳密には本作では父親でかつ行方不明、『わたどう』では母親で亡くなってしまっているという違いはあるのだが)、本作では浜辺は新米弁護士の白沢真実を演じる。ただ、『わたどう』が「ラブミステリー」だったのに対し、本作は「復讐エンターテインメント」。1話完結のポップでコミカルな仕上がりで、もう少し気楽に楽しめそうだ。

 第1話では、大手ゼネコンの御曹司から暴行を受けた女性より相談を受け、事件を掘り起こしていたところ、揚げ足をとられ弁護士事務所を解雇される。そして依頼女性が問合せていた復讐代行コンサルを名乗る怪しげな詐欺師・黒岩賢介(岡田将生)と、ひょんなことからタッグを組むことになり、復讐を完遂するというドタバタで、まさかの展開が描かれる。

 改めて、主人公の浜辺美波の躍進が凄まじい。20歳を迎えたばかりながら、本作での役どころは弁護士。しかも、ただの弁護士ではない、“復讐代行”弁護士だ。

 新人賞をかっさらった映画『君の膵臓をたべたい』(以下『キミスイ』)の公開が2017年。スクリーンで観た彼女のあまりの透明度、可愛らしくって柔らかい声質に衝撃を受けたのも記憶に新しい。瑞々しい女子高生役を演じていたあの時からたったの3年。一気に演じられる役どころの幅を広げ、今やその活躍、存在感は単なる“清純派”女優の枠組みに留まらない。

 彼女の思い切りの良さ、度胸は、映画『賭ケグルイ』でのスイッチが入ると狂気じみたハイテンション、躁状態になる蛇喰夢子役でも十分に発揮されていた。また、バラエティ番組出演時にも彼女は大御所を前にしても全く怖気づくことがない。物怖じせずに自身の考えを述べ、場の空気を持っていく。彼女にはその瞬間瞬間に「迷い」が見られないのだ。この「迷い」のなさから、彼女はどこか俯瞰的で冷めた『わたどう』での七桜のようなヒロイン役がよく似合う。

 だからこそ、病気に犯されながら、あるいは最愛の親が罪を着せられ失意の中亡くなっていっても、また不本意ながら弁護士事務所を解雇されようとも、そんな逆境の中自身の信念を貫き通す強い意志の持ち主という役回りがしっくりくるのだろう。

 生まれ持っての華やかさ、少女漫画から飛び出してきたかのような圧倒的美少女感というだけで現実離れした存在ながら、そこにこの「肝っ玉」まで据わっている彼女だからこそ、『わたどう』にせよ、本作にせよ少し突拍子もない設定をも超越して現実のものとして魅せてくれるのだ。

 そして、確たる芯があるからこそ、「個」として立っているからこそ、彼女が演じるラブストーリーというのは、全身全霊を相手に委ね切るようなものではない。『キミスイ』でも病気のことや迫りくる死への恐怖を抱えながら、本当の弱い部分や自分の手の内の全てを相手には見せ切ってしまわないし、『わたどう』でも常に葛藤を抱えながら「自分」を保った状態で椿(横浜流星)と対峙していた。


 本作でも、真実を暴く弁護士と、人を欺く詐欺師という両極にいる相手と、互いの信じる「正義」に則って手を取り合う。互いの信念やテリトリーは保った状態で、徐々に影響し合い互いを侵食し合う様子を存分に堪能させてもらいたい。

 本作が彼女にとって、美人主演女優が“クセの強い”不思議キャラをコミカルさも織り交ぜながら体当たりで演じ、正反対なところにいる相手と凸凹タッグを組み事件解決なり復讐なりを遂げていくという点で、戸田恵梨香にとっての『SPEC』シリーズ(TBS系)、仲間由紀恵にとっての『トリック』シリーズ(テレビ朝日系)のようなターニングポイント的な位置づけになりそうな予感が今からしている。

■楳田 佳香
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好きで劇場鑑賞映画本数は年間約100本。Twitter

■放送情報
ドラマ10『タリオ 復讐代行の2人』(全7回)
NHK総合、BS4Kにて毎週金曜22時
出演:浜辺美波、岡田将生ほか
制作統括:川田尚広、高橋練、岡本幸江
演出:木村ひさし、山本透
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.jp/p/ts/78YR8PJXJ5/

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