Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

ハロプロ研修生ドキュメンタリー『ハロドリ。』好評の理由 番組が映し出す育成現場の実情

リアルサウンド

20/4/13(月) 18:00

 今月7日(6日深夜)、ハロー!プロジェクトのレギュラー30分番組『ハロドリ。』がテレビ東京ほかで放送開始した。この番組では、モーニング娘。’20などのハロプロ正規グループではなく、その下部組織でありデビューを目指している立場のハロプロ研修生にスポットを当てている。第1回目の放送後、ファンからは概ね好評の声が上がっているようだ。なぜ評判がいいのかを本記事で考察していく。

参考:BEYOOOOONDS 前田こころ、“イケメン系”の系譜を受け継ぐ真面目で清楚な女の子 キャラクター性を徹底解説

■テレ東×ハロプロ深夜枠の歴史

モーニング娘。’20『モーニング娘。’19 コンサートツアー秋 ~KOKORO&KARADA~FINAL』
 テレビ東京とハロプロの関係は深い。基本的な話だが、モーニング娘。はテレビ東京のバラエティ番組『ASAYAN』の番組内企画から生まれたグループ。1998年のメジャーデビュー以降、モー娘。およびハロプロメンバーが出演するレギュラー番組は多数制作された。そのなかのひとつが「テレ東深夜枠」と呼ばれているものだ。

 この「テレ東深夜枠」には、「30分番組」と「5分~10分帯番組」の2パターンがある。まず前者から見ていくと、最初期の番組は1998年4月~6月の火曜深夜に放送されていた『太陽娘と海』。これは当時5人組だったモーニング娘。や平家みちよ(現:みちよ)などが出演して演技を披露する、いわゆる深夜ドラマで、バラエティやドキュメンタリータッチの後続番組と比べると、やや異色の内容だった。

 その半年後の1999年1月、やはり火曜深夜に放送開始したのが『アイドルをさがせ!』。モーニング娘。に限らず、カントリー娘。やメロン記念日などのハロプログループが出演するバラエティ番組だった。2002年3月まで続くが、ここで一旦流れが途切れる。

 もうひとつのパターン「5分~10分帯番組」だが、その源流は2000年1月~9月放送の『モーニング娘。のへそ』。月曜から金曜の夕方17時55分から18時に放送されていた。当時は1999年9月発売のシングル『LOVEマシーン』がブレイクして(今の言葉で言うとバズって)、モーニング娘。が国民的アイドルと呼ばれるようになり始めた時期。ほぼ毎日、テレビにモー娘。やハロプロのアイドルが出ていた。

 この後継番組である『少女日記』(2000年10月~2001年3月)から放送時間が深夜の月から金10分間(途中から7分間)に移行し、約半年ごとに番組タイトルと内容を変えつつ、ハロプロレギュラー番組として2009年3月までオンエアが続いた。番組タイトルを列記すると、『美少女教育』『新・美少女日記』『美少女教育II』『美少女日記III』『セクシー女塾』『それゆけ!ゴロッキーズ』『よろしく!センパイ』『二人ゴト』『魔女っ娘。梨華ちゃんのマジカル美勇伝』『娘。ドキュメント2005』『娘DOKYU!』『歌ドキッ!~ポップクラシックス~』『ベリキュー!』『よろセン!』がその系譜に当たる。

 そして2009年4月からの新番組『美女放談』は木曜深夜の30分番組となり、放送パターンが『アイドルをさがせ!』の頃に戻った。以降、『美女学』『ハロプロ!TIME』『ハロー!SATOYAMAライフ』『The Girls Live』と続き、2019年4月~2020年3月放送の『AI・DOLプロジェクト』を経て、今回のお題の『ハロドリ。』となる。

 (なお、イレギュラーなケースとして、2002年4月から2004年3月の期間に平日夕方5分のミニ番組枠が『ハローキッズ』として一時的に復活している)

 歴代の番組においては、ハロプロメンバーがドラマ演技に挑戦する『少女日記』『新・美少女日記』『美少女日記III』や、スタジオ企画中心の『それゆけ!ゴロッキーズ』、スタジオライブ番組寄りの『歌ドキッ!~ポップクラシックス~』『The Girls Live』、教養番組寄りの『美女放談』『AI・DOLプロジェクト』など、内容に変化があった。

■舞台裏ドキュメント

 ハロプロファンのニーズが高い内容として「舞台裏ドキュメント」がある。ライブ前のレッスンや、本番当日の緊張した様子などにカメラが潜入するという企画だ。そもそも『ASAYAN』も、普通の女の子たちがモーニング娘。というアイドルに成長していく過程をドキュメンタリー形式で毎週オンエアしたことで人気になったもので、いってみればハロプロの伝統路線だろう。これまでの歴代番組では、各番組ごとにメインの企画があり、その他のサブコーナーとして舞台裏ドキュメントが放送されていたケースが多い。

 また、番組タイトルをよく見てみると示されているだが、それぞれでフィーチャーされるグループが異なっている。『それゆけ!ゴロッキーズ』の「ゴロッキーズ」というのはモーニング娘。の第5期と第6期メンバーのことを指しており、そのメンバーの出演頻度が高かった。『ベリキュー!』はBerryz工房と℃-uteの略称であり、その2グループのレギュラー番組だった。30分間に変更以降は、『ハロプロ!TIME』を筆頭に、ハロプロメンバーがまんべんなく出るようになった。

 つまり、今回の『ハロドリ。』は、舞台裏ドキュメントを主軸に据えて、なおかつハロプロ研修生をフィーチャーしているというところに特徴がある。ちなみに番組タイトルの『ハロドリ。』とは「Hello!Project×Dream」という意味合いで、ハロプロ正規メンバーとしてデビューするという夢を目指す研修生たちを象徴するものとなっている。

 現在のハロプロは、オーディション合格者によって加入したメンバーも数名いるのだが、ハロプロ研修生としてレッスンを重ねたのちに正規メンバーに昇格するというケースがほとんどだ。少し前のハロプロファン内の雰囲気として、研修生を追うのはマニアックな趣味だという見方も一部あったが、現在の状況では、研修生時代からチェックするのがごく自然なものになってきている。『ハロドリ。』で研修生をメインで取り上げるという企画が成立したのも、そんな時代の移り変わりがあってのものだろう。

 また、ハロプロのレギュラー番組がテレビ内のみならずYouTubeなどのネット上でも展開されるようになったのは、『ハロ!ステ』が始まった2013年以降のこと。『ハロ!ステ』や『GREEN ROOM』などで公開されていた、舞台裏ドキュメントというどちらかといえばファン向けのコンテンツが、深夜とはいえ地上波テレビ番組でメインとしてオンエアされるようになったのも、やはり時代の変化の賜物だろう。

■ハロプロを支える鬼教官、そして先輩メンバーたち

 実際の番組内容を見ていこう。第1回目の放送内容では、今年3月に開催予定だったライブ『Hello! Project 研修生発表会 2020 3月~紡~』(新型コロナウイルス感染症による被害拡大の状況を鑑みて開催中止)に向けてのレッスンの模様がメインだった。ボーカルレッスンでは上野まり子、ダンスレッスンではみつばちまきによる指導の様子が映された。

 2人とも、各種レッスン映像や、ハロプロ研修生実力診断テストの審査員としてハロプロファンにはおなじみの存在だ。特にみつばちまき先生については、そのスパルタなレッスン姿勢が昔から有名な鬼教官だろう。なにしろ、Berryz工房と℃-uteの前身であるハロー!プロジェクト・キッズのイベント前レッスン映像(2004年)で、すでにその姿が確認できる。今回のレッスンでも、練習不足だった研修生の一人に対して「場位置が出来てないんですけど見てくださいってMCしますか?」と容赦ないダメ出しをしている。言われた子は目から大粒の涙を流す。視聴者として見ているこちらの胃がキリキリしそうな映像なのだが、こうした厳しい指導があってこそ、アイドル界ナンバー1と呼ばれるハロプロの質の高いパフォーマンスが成立している。大きく言えば、ハロプロの本質を垣間見ることができる映像なのだ。

 (余談だが、今年4月からリニューアルしたYouTube番組『tiny tiny』では、司会としてみつばちまきが出演している。普段はハロプロメンバーに厳しく接する姿しか知らなかったファンにとっては、同番組で見せる意外とおちゃめな側面は結構なインパクトだ)

 『ハロドリ。』のもうひとつの特徴として、ハロプロ正規メンバーの出番を用意しているという点がある。番組冒頭、モーニング娘。’20のリーダーにしてハロプロ全体のリーダーでもある譜久村聖から研修生全員へ、「2020年4月より研修生を中心としたテレビ番組がスタートします」と告げる場面がある。これは今までだったらつんく♂などのプロデューサーやスタッフが行う役割だっただろう。

 また、番組後半では、スタジオに集まった研修生たちの前に再び譜久村が現れ、中止になった研修生発表会の代わりにこのスタジオ内で無観客ライブ映像を収録せよと指令を出す。さらにそこへ、モーニング娘。’20の小田さくら・加賀楓、つばきファクトリーの岸本ゆめの・浅倉樹々という現役ハロプロメンバー4名がライブを見届けるために登場する。要するに、研修生たちが目指すあこがれの対象としてのハロプロメンバーを強調する演出が施されている。ハロプロの人間群像や歴史性に惹かれるファンにとってはグッと来る映像であり、そうしたツボを押さえた演出がそこかしこに見られる/あるいはこれから見られそうだという期待が、番組の高評価につながっているのだろう。

■今後の放送内容はどうなる?

 第1回では無観客スタジオライブが始まる直前で番組が終わった。第2回以降では、このライブの模様や、そこにまつわる悲喜が見られるのだろう。少し気になるのは、今後の番組の展開だ。おそらく番組企画当初の段階では、3月の研修生発表会や、5月の実力診断テストを大きな柱としたうえで全体の構成を考えていたはずだ。しかし昨今の情勢でライブ中止が余儀なくされている(本稿執筆時点では、5月の実力診断テストはまだ中止の発表がなされていないが、開催はおそらく難しいだろう)。今後の番組内容どうするの? というのは誰しも思うところだろう。

 たとえば、こういうのはどうだろうか。例年の実力診断テストは会場に集まった観客がその場で投票して当日の順位が決まる。なので会場での開催が中止ならば、無観客ライブをネット上または番組上でオンエアして、ネット上で投票を募る、という方式が考えられる。まあでも、これは投票システムの構築など難しい点がいくつかあるので実現性は薄いかもしれない。

 あるいはこういった予想の斜め上を行くような番組内容もあり得るのか。ハロプロ研修生の魅力がさまざまな角度から伝わってくるような番組作りに期待したい。(ピロスエ)

新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む