今こそイッキ見したい名作時代劇シリーズ！
『鬼平犯科帳』特集
2021年11月、惜しまれつつも亡くなった名歌舞伎俳優、二代目中村吉右衛門。歌舞伎俳優としての実績ももちろん特大級だが、彼のことは“鬼平”と呼ぶとさらに親近感を持つ人が多くなるのではないだろうか。
中村吉右衛門が鬼平＝長谷川平蔵を演じた『鬼平犯科帳』は、1989年から2016年まで27年間にわたりフジテレビで放映された時代劇シリーズ。数ある時代劇ドラマの中でも、骨太な本格派時代劇としてツウにも愛されている名作だ。
現在本作は、スペシャルドラマや劇場版も含めて、FODなどでデジタル配信中。すでに新シリーズの製作も決定してもいるので、年末年始の長いお休みなどでイッキ見して、その世界に浸ってみてはいかがだろうか。
『鬼平犯科帳 THE FINAL』前後編を今なら無料配信中！
2001年放送の第9シリーズを終えてからは、1～2年に1～2話程度のペースでスペシャル版として放映されてきた『鬼平犯科帳』。その27年の歴史に幕を閉じることになったのが、2016年12月に放映された『鬼平犯科帳 スペシャル THE FINAL』の前編『五年目の客』と、後編『雲竜剣』だ。五代目尾上菊之助をゲストに迎えたこの“THE FINAL”が、FOD、TVer、GYAO!にて2022年1月5日まで無料配信中。ぜひチェックしてみよう！
本格時代劇シリーズとして名を馳せる名作
『鬼平犯科帳』とは？
放火、強盗殺人など江戸の凶悪事件を専門に扱う特設警察“火付盗賊改方”。その長官（おかしらと読む）長谷川平蔵が、鋭い洞察力と行動力で部下とともに悪を追跡する。実在の平蔵をモデルにした池波正太郎の小説と、その映像化作品。
ふとすれ違った女の足音がしないだけで、「ただ者ではない」と見抜く平蔵は、すごすぎ！と思うが、若い頃の平蔵は手のつけられない不良男。悪の世界を知っているから、悪が分かる。弱い者を傷つける悪人には徹底的に厳しく、「逆らう者は容赦せず斬れ！」とその場でたたっ斬ることも。悪人たちは“鬼平”の名前を聞いただけで震えあがるのだ。
一方で、美味いものを愛し、元盗賊の密偵や日陰に生きる女たちとも身分を超えてつきあう。部下の失敗を自分の責任として受け取る懐の深さもある。妻の昔の恋愛沙汰がきっかけで事件が起きても、妻を傷つけずにかばうカッコよさ！ “理想の上司”とも言われる平蔵は、人生の酸いも甘いも知り尽くしたおとなの男なのだ。
『鬼平犯科帳』の一番の見どころは
息詰まる盗賊追跡サスペンス！
一番の見どころは、張り込みや情報戦による盗賊追跡サスペンス。部下や密偵たちが町で集めた情報を基に、連携プレーで盗賊たちを追い詰める。盗賊にも商家に雇われて手引きをする“引き込み”や家の見取り図などを作る“なめ役”など役割があり、人を傷つけず、結束の固い一味もいれば、平然と人を手にかける“いそぎばたらき”の凶悪な者たちもいる。中村吉右衛門による鬼平の記念すべき第1シリーズ第1話『暗剣白梅香』では、恐るべき暗殺者が漂わせる不思議な香りがカギに。鬼平チームがどこで事件解決のヒントをつかむかは、毎回大きな見どころとなる。
また、食通の池波が書き込んだ江戸の美味、男女の情、四季の美しさにうっとりできるのも、シリーズの魅力。軍鶏鍋や菜飯、握り飯など、撮影時には池波が贔屓にした料理人が本物を用意している。エンディングで、ジプシーキングスの曲とともに映し出される、桜、花火、紅葉、雪と江戸の風情も楽しみのひとつだ。
多士済々の密偵たちが徹底サポート！
鬼平＝長谷川平蔵と個性的なキャラクターたち
平蔵には、しっかり者の妻・久栄が寄り添い、指揮官となる佐嶋、酒井など有能な部下がいる。中には食いしん坊で女好きの木村忠吾のような調子のいい同心もいるが、平蔵はその人柄も認め、しばしば見廻りに同行させている。
探索に欠かせないのが、密偵たちだ。主な顔ぶれは、鬼平の無頼時代からの古いつきあいで、気心の知れた父っつぁん相模の彦十（江戸家猫八）、盗賊の娘で少女時代から鬼平を知り、慕っている元凄腕女賊おまさ（梶芽衣子）、信頼していたお頭に裏切られ密偵になり、船宿を営み情報収集もする小房の粂八（蟹江敬三）、孤児で色町の女たちに育てられた過去を持ち、同心と行動することも多い伊三次（三浦浩一）、元盗賊の頭で密偵たちから頼りにされる大滝の五郎蔵（綿引勝彦）。
元盗賊である彼らは、昔の仲間を密告する苦悩を抱えながら、見回り、尾行、変装、潜入と多彩な探索活動を続ける。密偵たちが自分を見込んでくれた平蔵のため、命がけで働く姿にはぐっとくる。なお、彼らが、凶悪な賊の跋扈に怒り、「本物のつとめ（盗み）を見せてやる」と鬼平に内緒で悪徳高利貸しを狙う顛末を描いた回『密偵たちの宴』（第3シリーズ第19話）は、シリーズ屈指の視聴率を獲得。ファンの間では語り草になっている。
全150話の中村吉右衛門版に加え新作も！
『鬼平犯科帳』シリーズの変遷
これまで“鬼平”は、作者がこの人をモデルに“鬼平”を執筆したという元祖鬼平・先代の松本白鸚、「ボス」と呼びたいスタイリッシュな異色鬼平となった丹波哲郎、重厚感と娯楽性を打ち出した萬屋錦之介、そして約28年間鬼平を演じ、「火付盗賊改方長谷川平蔵である！」の豪快な名乗りシーンはこの人ならではと思わせた中村吉右衛門と、4人が演じてきた。
吉右衛門版の第1シリーズでは、盗賊としての筋を通す頭、通称・一本眉（芦田伸介）が登場したり（第10話『一本眉』）、旅の途中で盗みの作法を教わる『盗法秘伝』（第16話）などユニークなエピソードも。第2シリーズでは、毒殺の危機に直面（第3話『白い粉』）、第3シリーズでは、夜鷹を狙う殺人鬼を追う（第11話『夜鷹殺し』）。吉右衛門は、風格としゃれっ気のある鬼平として、毎回豪華ゲストを招き、全9シリーズ、スペシャル版合わせて150話に主演、また1995年には劇場版も公開された。
そして、すでに“5代目鬼平”シリーズの製作も決定している。主演を務めるのは、初代鬼平・松本白鸚の孫、中村吉右衛門の甥にあたる松本幸四郎で、2023年5～6月に映画版、同年末に連続シリーズを撮影し、2024年5月に映画版の公開＆連続シリーズ配信を行う予定だ。
スペシャル版も全作品配信中！
『鬼平犯科帳 スペシャル「山吹屋お勝」』
『鬼平犯科帳 スペシャル「兇賊」』
『鬼平犯科帳 スペシャル「一本眉」』
『鬼平犯科帳 スペシャル「引き込み女」』
『鬼平犯科帳 スペシャル「雨引の文五郎」』
『鬼平犯科帳 スペシャル「高萩の捨五郎」』
『鬼平犯科帳 スペシャル「一寸の虫」』
『鬼平犯科帳 スペシャル「盗賊婚礼」』
『鬼平犯科帳 スペシャル「泥鰌の和助始末」』
『鬼平犯科帳 スペシャル「見張りの糸」』
『鬼平犯科帳 スペシャル「密告」』
『鬼平犯科帳 スペシャル「浅草・御厩河岸」』
Text:ペリー荻野
©1989 フジテレビ／松竹株式会社 ©1990 フジテレビ／松竹株式会社 ©1991 フジテレビ／松竹株式会社 ©1992 フジテレビ／松竹株式会社 ©1993 フジテレビ／松竹株式会社 ©1994 フジテレビ／松竹株式会社 ©1995 フジテレビ／松竹株式会社 ©1996 フジテレビ／松竹株式会社 ©1997 フジテレビ／松竹株式会社 ©1998 フジテレビ／松竹株式会社 ©2001 フジテレビ／松竹株式会社 ©1995 松竹株式会社／フジテレビジョン ©2005 フジテレビジョン／松竹株式会社 ©2006 フジテレビジョン／松竹株式会社 ©2007 フジテレビジョン／松竹株式会社 ©2008 フジテレビジョン／松竹株式会社 ©2009 フジテレビジョン／松竹株式会社 ©2010 フジテレビジョン／松竹株式会社 ©2011 フジテレビジョン／松竹株式会社 ©2016 フジテレビジョン／松竹株式会社
