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野村周平×ANARCHY監督が語る『WALKING MAN』での挑戦 野村「初心に戻されました」

リアルサウンド

19/10/13(日) 6:00

 野村周平主演、ラッパー・ANARCHYの初監督映画『WALKING MAN』が全国公開中だ。ANARCHY自身の実体験なども盛り込まれた本作は、人気漫画家・高橋ツトムが企画プロデュース、ドラマ『民衆の敵~世の中、おかしくないですか!?~』(フジテレビ系)の梶原阿貴が脚本を務める完全オリジナル作品。

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野村演じる主人公は、極貧の母子家庭で育ち、幼い頃から吃音症でコミュ障、さらに事故で重症の母親を抱え、思春期の妹を放っておけない気弱で心優しき不用品回収業のアルバイトで生計を立てる青年だ。そんな青年が、ラップと出会い、最底辺の生活から抜け出すべくバカにされながらも、奮闘し成長を遂げていく姿が描かれる。プライベートでも仲が良いという野村とANARCHY監督に、お互いの魅力から、映画製作の難しさ、今後の展望まで話を聞いた。

ーー公開を迎える今の心境は?

ANARCHY:作っている時は夢中で、編集の時は何回も繰り返し観てきた分、初めて観た人たちがどんな風に感じるのか自分でも分からないので、みんなの声が楽しみです。

野村周平(以下、野村):撮ってる時って、「一生やりたくない」と思うくらい、しんどいんですよね。でも撮影が終わった時や公開された時の達成感や手応えが次に繋がるんです。今回も、ANARCHY初監督作に出れてよかったなと思いますね。

ーーお二人は本作を撮る前から付き合いがあったそうですね。

ANARCHY:友達に紹介してもらったんです。映画の主演をやってくれる子を探している時に「周平くん知ってる?」ってその子に言われて、パーティーで会いました。

野村:そこから共通の友達がいることが分かって、一緒に遊びに行ったりして、今も頻繁に連絡を取り合ってますね。

ーーお互いの初対面の印象は?

野村:めちゃくちゃ怖い人が来た、と思いました(笑)。

ANARCHY:めちゃくちゃ調子に乗ってるな、と思いました(笑)。けど、かっこいいから、いいかなって(笑)。

ーー野村さんとANARCHY監督の間では、役作りにおいてどのような会話を?

野村:ANARCHYさんは監督業が初めてだったし、僕も現場では必死に走り回っていたんです。その都度、監督から指示はありましたけど、実際何を言われたか今ではほとんど覚えていないんですよね。必死にやっているANARCHY監督に、僕が口を出したら迷惑かけると思って、監督に負担をかけないように必死で頑張っていました。

ーー今までの出演作と違いがありましたか?

野村:そうですね。こんなにも役のことを考えるのは久々でした。ANARCHY監督は、バイブスでやっているのがラッパーらしくもあり、見ていて気持ちがよかったです。

ーーお二人にとって、一番大変だった期間は?

ANARCHY:クランクイン前と編集作業の時ですかね。クランクインまで、周平くんがOKしてくれるかどうかも考えないといけないし、他のキャストやスタッフ、ロケ地を探したり……準備するってやっぱり大変だなと思い知らされました。編集も、8カ月くらいずっと映像を観ていたので、パニクったりもしながら、カット割りも作業進めるうちに徐々に学んでいきました。

野村:撮影中は毎日しんどかったです。僕が演じるアトムは、恵まれている子供ではないし、毎日いろんな問題が起きるから、演じていて気持ちの面で辛かった。撮影もタイトだったので、ある意味辛い気持ちは作りやすかったですが(笑)。振り返ってみるとすごくいい疲れです。

ーー現場での印象的なエピソードは?

野村:一度だけお互い険悪なムードになった時があったんですよ。川崎のチネチッタで朝まで待たないといけない状況になってしまって。僕もANARCHYさんもイライラして、プロデューサーに対して怒っているという(笑)。でも、そのうちANARCHYさんの先輩や後輩もエキストラでいらっしゃって、僕もANARCHYさんも「イライラしても、しょうがない。撮影まで頑張ろう」と思えて、一件落着しました。

ANARCHY:当初は「本当なら12時に終わったのに朝まで待つ!? え?」みたいな(笑)。

野村:でも、なんだかんだそんなには待たなかったですよ。なんで怒るかって、その翌日も朝7時に起きなあかんっていう(笑)。

ANARCHY:あの時のトラブルがあったからこそ、できる限り努力しようというモチベーションは改めて上がったな。以降の現場の空気も良くなったから、結果としてはよかったのかもしれない。

ーーANARCHY監督から見た、野村周平という俳優の魅力はなんでしょう?

ANARCHY:かっこいい。まず、それが第一。でもそんなかっこいいやつが、ダサくて、頼り甲斐なさそうなアトムを見事に演じている。俳優からしたら、当たり前のことなのかもしれないですけど、僕からしたら当たり前じゃないことだし、一緒に仕事してみて、リスペクトするところがすごくありました。完璧ですよ。

野村:いやいや、そんな(笑)。

ーー野村さんから見た、ANARCHY監督の魅力は?

野村:場をまとめるという意味では、誰も楯突こうとは思わないですよね(笑)。それは冗談ですけど、現場での佇まいが素晴らしかったです。助監督、俳優、スタッフみんなの気持ちを考えて、その現場での最善策を頭でずっと巡らせて、それを選んで。頭の中ではぐちゃぐちゃになっていたとは思うんですけど、それを乗り越えてやっていたので、監督として素晴らしいです。これから、どういう作品を撮るのか気になりますね。

ANARCHY:次の作品のアイデアも、もう練っています。ものづくりが好きなので、形にしたいと思ったら形にしないとダメだし、苦もないんですよね。実際にやってみると大変なんですけど、また何かすぐに作りたくなる。

ーー本作の反響も楽しみです。

ANARCHY:より広く、たくさんの人に観て欲しいです。映画って人生の一部分になり得るんですよね。「ヒップホップ映画」と囚われず、ヒップホップ・ラップを知ってもらう手段の一つ、若い人たちが勇気を持つための作品の一つ、大人たちが忘れていたものを思い出すための作品の一つ……『WALKING MAN』が誰かにとってそういうきっかけになれたら成功だと思っています。

野村:今の人たちって、「何が好き?」って聞かれても「いや、別に好きなものないかな」っていう人が多い気がするんですけど、好きなものが一つあると、それが人生を助けてくれるんですよね。僕は、スケボーだったり車だったりバイクとか好きなものがたくさんあるんです。なにか一つ好きなものを信じて追求していけば、自分を変えることができる。そのことを分からせてくれる映画だと思います。

ーー野村さんは今、NYに留学されていますが、現地で吸収しているものが役者活動にもアウトプットされている実感はありますか?

野村:NYは、僕が好きなものばっかりですからね。フリーダムですよ。誰にも文句を言われないですし。誰が何をしていても気にしないけれど、友達や家族のことは気にかけて、言うことはちゃんと言うという向こうの文化がすごく良くて。それは日本にも、持って帰りたいですね。だから、ある意味悪い影響を受けかねない。日本に帰ってきて、また変なことを言うかもしれないので(笑)。

ANARCHY:自由になりすぎて(笑)。

野村:誰かに縛られているからこそ、楽しいこともありますけどね。「自由にやっていいよ」って言われたら、それはそれで困るっていう(笑)。縛られている時の、外に出たいという欲求が何かのエネルギーになっているのかもしれないですね。

ーー本作を撮り終えて、お二人の中に得たものはありますか?

ANARCHY:それを、公開を迎えた今から感じていけると思いますね。観てくれた人のなにかになってくれたら、また作りたいという気持ちも増すだろうし。やっぱり音楽も映画も、誰かに何かを感じて欲しくて作るものでもある気がしてるんです。自己満足だけじゃ嫌だからこそ、何かを作っていて、それが人に伝えたいメッセージになるというか。これを観た人が、どう受け止めてくれるかをこの目で見て、次に活かしたいですね。

野村:僕は、初心に戻されました。俳優をやってきて10年経ちましたが、どうしても多少調子に乗ってしまう部分もあるんです。ANARCHYさんの初めての監督作に出て「こういう気持ちを忘れたらあかんな」と思いました。ANARCHYさんの次の作品も期待しているし、また脇役で出たいです(笑)。主役を2回連続でやってたら、みんな飽きると思うし、選択権はANARCHYさんにあるので無理だと思いますが(笑)。さっきもANARCHYさんが言ってたんですけど、自分の1stアルバムより、2ndアルバムの方が好きらしいので、多分次の映画の方が好きっていうんですよ(笑)。

ANARCHY:でも、同じ世界観の作品を作りたいです。だから、また懲りずに出てください(笑)。

※高橋ツトムの「高」はハシゴダカが正式表記。

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