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黒沢清がロバート・アルドリッチ「キッスで殺せ」を語る「もはやノワールではない」

ナタリー

18/9/9(日) 21:01

第40回ぴあフィルムフェスティバル(PFF)に出席した黒沢清。

第40回ぴあフィルムフェスティバル(PFF)が9月8日に開幕。同日に行われた「キッスで殺せ」の上映会に黒沢清が登壇した。

ロバート・アルドリッチが監督を務めた本作は、ミッキー・スピレインの探偵小説「マイク・ハマー」シリーズをもとにしたフィルムノワール。アルドリッチ作品とは1970年代半ばに出会ったという黒沢は、男同士の戦いを描く作品は時代遅れになっていたことを説明しつつ、「アルドリッチは、誰もが古色蒼然に違いないと思っていた本気の男同士の戦いを目の覚めるような形で描いていて、僕はびっくりした」と当時の衝撃を振り返る。「しかもそれはくだらなく、勝っても負けてもどうでもいい。その無目的で無意味なところが、1970年代だった。ばかげたことを痛快に描いているのが、ある意味画期的で面白い。当時の僕は娯楽映画はここにあると思いました」と続けた。

「キッスで殺せ」について黒沢は「とんでもない映画を観てしまったというのが率直な感想ではないでしょうか」とコメントしつつ、「物語の全貌がつかめるようでつかめない。マイク・ハマーという探偵が一貫して謎を追っているが、それ以外のことがほとんどわからない。でも、こちらの目を釘付けにする普通じゃない瞬間がいくつもある」と作品の持つ複雑な魅力を語る。また「僕自身も主人公が謎に突き進んでいく映画を何本か撮っています。ただ、恐ろしいので主人公を探偵にしたことはありません」と自身の映画作りにも言及した。

続いて、本作がフィルムノワールの傑作と呼ばれている一方で「『キッスで殺せ』は特別と言っていいでしょう」と作品を位置付ける。さらに「これほどまでに露骨に謎が目の前に露呈する映画はほかにない。これは謎を巡って人が右往左往するのではなく、誰が悪者なのかという結末の映画でもない。謎そのものが、悪そのものが最後に目の前にその正体を現すという映画。もはやフィルムノワールでなくなっていると言っていいかもしれない。こんな途方もない映画は、アルドリッチのフィルモグラフィにも、世界の映画の歴史においてもほとんど見当たらない」と論じた。

第40回PFFは9月22日まで東京・国立映画アーカイブで開催。同映画祭では「女も男もカッコいい!今こそアルドリッチ」と題されたプログラムが展開されている。

第40回ぴあフィルムフェスティバル

開催中~2018年9月22日(土)東京都 国立映画アーカイブ
※月曜休館

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