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WEAKEND WALKER、五感を刺激するロックと美しい狂気 バンド体制初披露となった『1st ANNIVERSARY LIVE』レポート

リアルサウンド

20/9/26(土) 18:00

 期待できない時代に、期待したくなってしまった彼らに。ステージから迫ってくる音圧は、まるで希望だった。オンラインライブが当たり前になり、都合よく圧縮された映像を追いかける日々。パンデミックは作りこまれた映像ライブの美しさを教え、それ以上に生ライブの力も感じさせた。

 9月19日、Veats Shibuyaにて開催された『WEAKEND WALKER 1st ANNIVERSARY LIVE』。「五感で音楽を浴びたい」と枯渇していた心を、WEAKEND WALKERは瑞々しいロックで潤したのである。

 SEに導かれ、メンバーがステージに登場。teppeとtaichiは左右に分かれて向い合い、その中間地点でSiNが佇む。「DREAM EATER」でライブを封切ると、瞬時にライブハウスの空気を掌握した。音源では伝わり切らない生音のパワーが非常に強く、バンドの音に食いつくされそうな感覚に陥る。波のように満ち引きする声は、選び抜かれた言葉をより色彩豊かに響かせた。かと思えば「蛍」では、低音からファルセットの切り替えを難なくこなし、ボーカルとしての力量を発揮。SiNが“聴かせられる”フロントマンであることは間違いないが、何よりもバンドを背にして立つときの狂気が美しくてたまらなかった。

 静寂の時を挟み、EPタイトルにもなっている「黒点」へ。淡々と進んでいく伴奏はベースが重なることで立体的になり、バンド体制ならではのグルーブを振るう。ハイピッチをかけるギターソロは言葉にならない想いを叫んでいるようで、より一層オーディエンスの心を惹きつけた。音源だと一見不愛想に過ぎていくズダズダしたフレーズも、生ライブでは一歩一歩迫ってくる。その愚直な音色は「俺らは変わらずに音を鳴らしている」と、変わってしまった時代に宣戦布告しているようだった。

 「Polar Bear」では言葉を落とすように歌い上げ、「盤上のカランコエ」では不条理にポップに毒付く。曲ごとにクルクルとイメージを変え、サウンドを操り、リリックの届け方もアレンジする。粗削りだが鮮やかな手腕は、彼らがバンドとして初ライブだということを忘れさせた。

 カンカンカンという踏切の音に連れられ「Orange」が鳴らされるると、会場は一変してしっとりした雰囲気へ。WEAKEND WALKERの歴史をスタートした思い出の1曲だからなのか、音楽の浸透圧が凄まじい。彼らが発する音楽や映像、空気などすべてのものが、一直線にオーディエンスの五感を刺激する。会場は自然と左右に揺れ、それぞれの姿勢が少しだけ前のめりになっていた。

 その後もラップのフロウのような歌い方が特徴的な「CHECKMATE」、ダンサブルなナンバーの「Liar」と、一歩も手を抜くことなくラストまで駆けていく。トリを飾ったのは、歌謡曲のようなフレージングが印象的な「Nights Out」だ。「死にたくなる夜もあるけれど、叶えたいことがあって。同じような思いを抱えている人に届けばいいなと思って作った曲」というだけあり、言葉の明暗が深く描かれる。途中では、オーディエンスにクラップを誘導する一幕も。1周年を祝うべく駆けつけたファンと一緒にライブを作り上げ、記念すべき一夜を飾ったのだ。

 思うように外出できないし、気軽に会いたい人と会えないし、大勢でライブを楽しむことができない。そして何より、この状況がいつまで続くのかわからない。全く期待できない時代だ。しかし、そんな潮流のなかでもWEAKEND WALKERは自分たちの音を鳴らし、真っ直ぐに言葉を届けていた。変わってしまった時代のなかだって、自分たちの火を灯し音楽を刻み続けることはできる……と。それは彼らがインターネットネイティブ世代である以上に、確固たるロック魂を胸の中に宿しているからだろう。これからの時代、彼らがどんな音楽を鳴らしてくれるのか、楽しみに待ちたい。

■坂井彩花
ライター/キュレーター。1991年生まれ。ライブハウス、楽器屋販売員を経験の後、2017年にフリーランスとして独立。Rolling Stone Japan Web、EMTGマガジン、ferrerなどで執筆。Twitter

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