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稲垣吾郎が再び身に宿す、陰陽師 安倍晴明の神秘的な魅力 2人を繋ぐ、混迷の時代に求められる“しなやかな強さ”

リアルサウンド

20/11/16(月) 6:00

稲垣吾郎 稲垣吾郎が、約20年ぶりに安倍晴明を演じる。時代を超えて人々の想像力をかき立ててきた安倍晴明を、11月26日に放送されるコズミック フロント☆NEXT『いにしえの天文学者 安倍晴明』(BSプレミアム・BS4K)では、より科学的な視点で描くという。

 安倍晴明とは、平安時代に実在した陰陽師。現在でいう天文学者のような役職につき、占いや儀式の執り行いを担当し、その優れた才能で天皇や貴族から厚い信頼を得たと言われている。科学知識が広まっていない当時は、天文の動きから世を占う晴明の力は神秘的な魅力に満ちており、「病に伏せていた天皇を回復させることができた」「式神と共に暮らしていた」「儀式で雨を降らせることができた」「不思議な呪術で悪霊を退散させることができた」など、伝説的なエピソードが多く語られるようになった。

 『大鏡』『今昔物語集』『宇治拾遺物語』『平家物語』など古典文学に始まり、歌舞伎、舞台、小説、漫画、映画、ドラマ……と、現代まで数え切れない作品に登場してきた安倍晴明。もちろん、それだけ多くの人に演じられてきたということだが、稲垣がNHKドラマ『陰陽師』で演じた安倍晴明は、その妖しげな現実離れした美しさが際立つキャラクターとして、多くの人の記憶に残っている。

 ドラマ『陰陽師』で安倍晴明を演じていた当時、まだ20代だった稲垣は、今よりもずっとミステリアスな雰囲気をまとっていた。確かに実在しているはずなのに、リアルな生活の匂いがまるでしない。もちろんバラエティなどで人間味あふれる姿も見てはいたが、そんな場面でも拭いきれない気品が一層つかめない魅力となっていたように感じた。エッセイで綴られるプライベートも、実生活を語るというよりも、どこかスタイリッシュな小説を読んでいるような感覚になるほど。それは、まさに偶像化されて語られてきた安倍晴明のような存在感だった。

 そうして私たちが想像する“美しい安倍晴明”を具現化してくれたNHKドラマ『陰陽師』だったが、同時に、安倍晴明の伝説は若い頃よりも、彼が40代以降になってからのものが多いことから、“美しく年齢を重ねた稲垣が演じる姿もいつか見てみたい”と思う人も少なくなかったように思う。今回は、そんな積年の夢が叶う形となったことに、心が弾む。稲垣も「うれしいです。すごく縁を感じている」と話し、「今の自分の年齢なりに、20年たった今の自分にしか演じられない安倍晴明を頑張って演じたいと思っています」と気合十分なコメントを寄せている。

 しかし、こうして予告映像などを見ていると、約20年経っているにも関わらず、この稲垣の変わらない透明感は何なのだろうかと首を傾げずにはいられない。彼自身が時空を超える呪術でも使えるのだと言われたら、「なるほどね」とつい納得してしまいそうな美しい年齢の重ね方なのだ。

 この20年、世の中は大きく変化し、稲垣自身の環境も激変した。SNSを通じて、彼のプライベートは以前よりも多く発信されるようになったが、実際の暮らしぶりが想像以上に整っていることに驚かされるという結果に。どんなに激動の波に揉まれても、稲垣が大切にしているものは一切ブレなかったのだとうかがい知ることができる。

 先日、19年ぶりに発売されたフォトエッセイ『Blume』でも、私たちの期待どおり、いや想定以上の「稲垣吾郎」っぷりが伝わってきた。自ら生けることもあるという花のある暮らし。2週間に一度は窓掃除までするほど清潔な空間。ムダなものを極力所有しない整然としたインテリア……かつて愛猫たちと暮らしていた日々を振り返った章も、「彼女たち」と呼ぶ艶めかしさに、つい「式神と暮らしているらしい」と噂された“安倍晴明”感に繋がってしまう。

 また、香りに魔法の力を感じ、贈り物に人が人を想う時間の価値を見るなど、目に見えない何かに対して真摯に向き合う姿勢も、人々が陰陽師に感じていた神秘性と通じるものがあるように思えてくる。ついつい体重や体脂肪、健康診断の結果など、数字で管理したくなる健康に関しても、決められたプログラムで鍛えていくというよりも、身体の内側に流れるものと相談しながら、フラットな状態を保つことを重視しているのだ。

 科学が発達した現代、人間は多くの病を治せるようになり、天候についても近い将来、人工的に操作することが可能になる日もくるだろう。AIも、いにしえの人が見たら、リアルに式神だと感じるかもしれない。しかし、それほどに神がかった力をもってしても、人間はいまだにすべてのことをコントロールできない。

 目に見えない脅威に翻弄され、先の見えない未来に不安を募らせる。人々の迷う気持ちは安倍晴明が実在していた時代と2020年で、そう変わってはいないのかもしれない。時を経てもなお安倍晴明が語り継がれるのは、いつの世も決して思い通りにはいかないこと、そして混乱する世界に動じず、凛として生きる“しなやかな強さ”を持っていたいという願いからなのかもしれない。そして2020年の現代日本において、稲垣吾郎こそ、そのアイコンにふさわしいと言えるだろう。今こそ知りたい陰陽師・安倍晴明の生き様を、今を共に生きる役者・稲垣吾郎の生命力で体現されるのを楽しみにしている。

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