Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

草なぎ剛とユースケ・サンタマリア、自由奔放な2人が『なぎスケ!』で生み出す“許し笑い合える空間”

リアルサウンド

20/6/29(月) 6:00

 大熊英司アナウンサーが、6月いっぱいでテレビ朝日を退社。今後はフリーで活動することが発表されると、ネットを中心にある期待が高まった。それは、草なぎ剛とユースケ・サンタマリアによるネットバラエティ番組『なぎスケ!』(Amazon Prime)への出演だ。

(関連:新しい地図が向き合った2020年上半期 見えない未来を照らす、3人の取り組みを振り返って

 “なぎスケ“コンビと大熊アナの付き合いは、深夜番組「『ぷっ』すま」(テレビ朝日系)からで、2001年4月から2018年3月までの17年間も続いた。草なぎから名付けられたニックネーム「熊の助」から、番組HPで「熊の助日記」というブログを更新してきた大熊アナ。

 最後の記事には「今も、これで終わりのような気がしないのです。またどこかで、草なぎさん、ユースケさん、いや“なぎスケ“と一緒に仕事ができるんじゃないか。またどこかで、このスタッフ達と一緒に仕事ができるんじゃないか。そう思い続けていようと思います。そして、またその時に、みなさんにお目にかかれれば最高です」という結びも。たくさんの愛情に包まれて最終回を迎えたことが伝わってくるものだった。

 2019年12月より『なぎスケ!』が始まると、視聴者からは自由過ぎる“なぎスケ“をまとめてきた大熊アナの存在を懐かしむ声が上がったことも。確かに『なぎスケ!』は、「『ぷっ』すま」の雰囲気そのまま。東幹久をはじめとした「『ぷっ』すま」時代に親交を深めたメンバーもゲスト出演したり、“なぎスケ“をもタジタジにしてしまう江頭2:50も、番組がスタートして早々に駆けつけた。だからこそ、大熊アナとの再会に期待を寄せてしまうのも頷ける。

 出演者も、視聴者も、ゲストも、スタッフも、「『ぷっ』すま」を愛した人たちが集まり、相変わらず気ままな草なぎ剛とユースケ・サンタマリアを愛でる、それがネットで始まった『なぎスケ!』というコンテンツだ。番組趣旨は芸能界を猛スピードで駆け抜け、仕事ばかりしてきた2人が心の底から夢中になれるモノに出会うため、ゲストの趣味をきっかけに未知の分野にチャレンジしていくというもの。

 だが、“なぎスケ“のやることだ、台本通りになんて進むことは少ない。サバイバルゲームをすればユースケ・サンタマリアが「老眼で見えない!」と、本来の趣旨とは違うところでつまづき、彼らが刻んできた年輪を感じずにはいられない。東幹久と懐かしのゲームで遊んだ回では、草なぎが現在は生産終了してる「アスレチックランドゲーム」を通じて初恋の話が止まらない。小学生のころの記憶が鮮明になり「涙出てきそう」と目をうるませる。ちょっとしたことで涙腺が緩みがちになるのも、目の前の感動とつながる過去の思い出が増えたからこそ。

 「今までやってきたことをやっても変わるから、いいんじゃないですか? 新しいのを探すのも大事だと思うけど、別に今まで通り同じことやっても僕らだと変わっていけるんじゃないですか?」という草なぎの言葉から、改めて私たちが“楽しい“と感じるのは、“何をするか“よりも“誰とするか“なのかもしれないと思った。

 「『ぷっ』すま」スタート時には草なぎが20代、ユースケ・サンタマリアが30代だった。それが、今では2人とも40代後半に。最前線で活躍し続ける彼らにはずっと若いイメージがあるが、大人の男性としての哀愁も漂う年齢だ。加えて、年齢を重ねるごとに彼らの自由奔放っぷりには拍車がかかっていく。

 それでも「『ぷっ』すま」が『なぎスケ!』となってもなお、視聴者から愛されているのは、そこに視聴者との信頼関係があるからに違いない。「若いころのように無理してシャカリキに頑張るのをやめた」というユースケ・サンタマリアは、ますますワガママに。「翌日が休みじゃない日に釣りロケ入れられたら超不機嫌になる」など言いたい放題だ。それを、真正面から「知らないよ、そんなことは! そうやってみんな仕事してんだよ」と草なぎが一括し笑いを誘う。

 また、外出自粛生活が続いたことで、ゲームにすっかりハマり、収録日の集合時間に遅刻したというユースケ・サンタマリア。「今日『なぎスケ!』あるって知ってるわけでしょう? それダメだね! 遅刻ですよ!」と草なぎは注意しつつも、「まぁいいわ。すごい! 逆にちょっと尊敬しました」と笑ってしまうことで、ユースケ・サンタマリアの失態も笑いに変えてしまうのだ。

 最近では、愛犬クルミちゃんの子犬が生まれたことで、命を育てることに真正面からぶつかった草なぎ。死なせてしまうのではないかというほど、切羽詰まっていた時期があったことも、今ここだから話せるような素振りだった。

 おそらく、このやりとりは見る人によって様々な切り取られ方をされる可能性があると思った。ユースケ・サンタマリアの発言に「けしからん」という人もいるかもしれない。草なぎのツッコミに「それは無責任だ!」と怒る人もいるかもしれない。だが、そんな一部分の発言を抜き取って誹謗中傷する流れに、そろそろ疲れてきてはいないだろうか。

 多くの人のもとに一斉に届くテレビに対して、視聴者と番組との信頼関係がより深いのが、ネット配信のバラエティの特徴。視聴者は、むしろユースケ・サンタマリアのぼやきも、草なぎ剛の対応も、許し笑い合える空間を求めて自らアクセスしているのだ。そのコミュニケーションに至るまでの時間があり、愛があるという前提を踏まえてやり取りを見守っているのだということ。

 「いかがなものか」という声が上げやすくなった一方で、ささくれた気持ちにもなりやすい現代。もちろん誰も傷つけないコンテンツを作るという意識は大前提として目指さなければならないものだが、一方ですべての人に好かれるのは難しい。だからこそ、「これをわかってくれる人とだけ繋がりたい」という空間があってもよいのではないか。

 ユースケ・サンタマリアが、草なぎと東幹久に向けてポロっとこんな風に言っていた。「厳しい世の中だから。足掻きながら、頑張りましょう」と。正解が一つに限定できない世の中で、こうした気を緩めることができるユートピアが、ちゃっかりと存在し続けてほしいと願うばかりだ。

新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む