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いま、最高の一本に出会える

《SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2019》ポスター

《SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2019》が13日開幕。今年は大物俳優も来日へ!

ぴあ

19/7/12(金) 13:00

毎年、埼玉県川口市のSKIPシティで開催される《SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2019》。現在主流のデジタルシネマに世界に先駆けて着目した同映画祭が、13日(土)に開幕する。今年はメインの国際コンペティションに監督デビュー作がノミネートされたことに伴い海外の人気スターが多数来日予定。ほかにも現在の映画界を牽引するスター監督たちのデビュー作を上映するなど、見逃せない9日間となりそうだ。

最初に、映画祭のメイン・プログラムとなる国際コンペティション部門は、92の国と地域から集まった658作品の中から、長編3本以内の新進監督の10作品が選出された。

『世界で一番ゴッホを描いた男』『家へ帰ろう』など、のちに日本で劇場公開され話題を集める作品も多く、そのクオリティは折り紙付きといっていい本部門だか、今年もまた遜色ない秀作が出そろった。

韓国の鬼才、ナ・ホンジン監督の『チェイサー』などで知られる韓国の実力派俳優、キム・ユンソクが初監督を務めた『未成年(原題)』、『ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男』などに出演するスウェーデンの国際派女優、ツヴァ・ノヴォトニーの初監督作品『ブラインド・スポット』、人気TVシリーズ『LOST』に出演していたタニア・レイモンドが共同監督を務める『バッド・アート』など、スターの監督デビュー作がずらり。監督自身がアフガニスタンからの亡命の日々を記録したハサン・ファジリ監督のドキュメンタリー『ミッドナイト・トラベラー』、ヴェネチア国際映画祭で受賞を果たしたスダーテ・カダン監督のデビュー作『私の影が消えた日』といった注目作も並ぶ。

同部門で唯一ノミネートとなった日本映画は『旅愁』。中国の呉沁遥(ゴ・シンヨウ)監督が立教大学大学院映像身体学専攻の卒業作品として発表した本作は、異国の日本で出会った中国人男女3人の若者の微妙な恋愛模様を丹念に描き出している。万田邦敏監督の下で学んだという彼女の手腕に注目したい。

今回の選出されたことについて呉監督は「もうラッキーとしか言いようがない。私も知っている有名な俳優さんの監督デビュー作など、ほんとうにすごい作品ばかり。ここに自分の作品が並んでいることがいまだに信じられないです。今回がワールド・プレミア。日本のみなさんに届くことを願っています」と語る。

また、国内のクリエイターの発掘・育成の強化を目指す国内コンペティションは、昨年に続いて、長編と短編の2部門。長編部門は5作品、短編部門は9作品がノミネートされた。

劇場公開され大ヒットとなった『岬の兄妹』に続く作品が期待される長編部門は、バラエティに富んだ5人の監督が顔を揃えた。

『ミドリムシの夢』を手掛けた真田幹也監督は、演出家の蜷川幸雄に師事したキャリアの持ち主。現在も俳優として活躍している。これまで20本以上の短編を作り、様々な賞を受賞。「ミドリムシ」とネットで揶揄される駐車監視員の悲喜こもごもを描いた本作が、長編デビュー作になる。

真田監督は「夜の物語なので深夜撮影がほとんど。3回ぐらい朝を迎えています。しかも、中年に差し掛かった俳優さんたちを早朝に全力疾走させたりしている(苦笑)。仁科貴さん、佐野和馬さん、長谷川朝晴さん、戸田昌宏さんらそうそうたる俳優さんたちに出演していただいてもいて。これでお蔵入りしてしまったら、会わす顔がなかった。なので今回のノミネートはほんとうにうれしいです」と語る。

続いて『ミは未来のミ』は、昨年の国内コンペティション短編部門で『予定は未定』が見事に優秀作品賞に輝いた磯部鉄平監督の初長編映画。悪友といっていい男子高校生たちの亡き友への弔いが描かれる。若者たちのピュアな感情と、ほろ苦い青春の一場面が甦るような1本となった。

磯部監督は「高校三年生のときに僕自身が体験したことを基にした半自伝的なストーリー。友人を突然失ったときに感じた哀しみや、頭にふとよぎったことなどをドラマティックにしないで、当時体感したままに真摯に描いたつもりです。SKIPシティは長編を撮って戻ってこようと目標にしていた映画祭。そこに戻ってこれてうれしいです。また「長編を撮って一人前や」と周囲から言われてきたので、ようやくスタートラインに立てた気分です」と語る。

次に『バカヤロウの背中』は、武蔵野美術大学で映画制作を学んだ藤本匠監督の初監督作品。おんぼろシェアハウスで暮らす結婚に踏み出せない男女の狂騒が、突然ミュージカル風のダンスシーンが入るなど斬新な形で描かれる。実は藤本監督、舞台演出や舞台音楽家としての活動歴があるユニークな才能を持つ逸材だ。

今回の初監督作について藤本監督は「これまでの活動で前衛的なこと先鋭的なこといっぱいやってきましたけど、映画を作ろうとなったとき、それはいったん置いて、好きな映画を作ろうと思いました。僕が大好きな映画は(チャーリー・)チャップリンの映画。僕の中では、長屋ものの人情喜劇を作ったつもり。多くの人に笑ってもらえたらうれしいです」と言葉を寄せる。

続く『おろかもの』は、日本大学芸術学部映画学科で学んだ芳賀俊監督と鈴木祥監督が共同で作り上げた1作。結婚目前の兄が浮気をしていることを知った妹の女子高生と、兄の浮気相手である女性が奇妙な共犯関係で結ばれていく様が描かれる。笠松七海、村田唯、猫目はちという性格も年代も異なる女性3人に扮した女優が強烈な存在感を放つ1作でもある。

芳賀監督は「共同監督の鈴木と、脚本を手掛けた沼田(真隆)は日本大学芸術学部映画学科の同期で互いが互いを認め合い、切磋琢磨できる仲。そして出演してくれた女優たちは、僕がこれまで現場で出会って驚いた、すごい才能の持ち主ばかり。学生時代から10数年やってきた僕らの集大成的な意味合いがあるとともに、その力を結集させた作品。ひとりでも多くの人に見てほしい」と意気込む。

最後に『サクリファイス』は、日本映画学校と立教大学現代心理学部映像身体学科で学んだ壷井濯監督の長編初監督作品。奇怪な事件が周辺で連続する大学を舞台に、心に大きな痛手を抱えた男女3人の交錯する感情がサスペンス的な要素も盛り込まれながら描かれる。壷井監督は黒沢清監督や篠崎誠監督に師事。その影響も垣間見える一種のディストピア映画にもなっている。

壷井監督は「凶悪な事件が起きるたびに、「信じられない」「人間のやることじゃない」といった言葉のみで片付けられがちではないか。もちろん犯人の罪は許されることではない。ただ、一歩間違えたら自分も犯人と同じような境遇になったのではないか?という思いが僕は頭をよぎる。だからこそ、もっと人間の内面をもっともっと掘り起こすことが必要ではないか。そんな思いから生まれた作品です。上映でどんなご意見をいただけるのか楽しみです」と語る。

ここまでのコンペティション部門のほかにも、昨年日本映画界を席捲した『カメラを止めるな!』のバリアフリー上映や、子育て中の親御さんも気軽に映画が楽しめる「ママ・シアター」をはじめとする子どもから大人まで楽しめる関連企画も充実。ぜひ、足を運んでほしい。

《SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2019》
会期:2019年7月13日(土)~21日(日)
会場:SKIPシティ 映像ホール/多目的ホールほか、メディアセブン
※上映スケジュールなどの詳細は公式サイト(www.skipcity-dcf.jp)にて

取材・文・写真:水上賢治

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