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吉沢亮、念願の舞台『マーキュリー・ファー』での“変身”に期待「僕が初演を観た時の、とんでもない感動をぜひ感じて」

ぴあ

吉沢亮  撮影:源賀津己

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2015年に白井晃の演出で日本初上演され、多くの観客の心を激しく揺さぶり話題を呼んだ舞台、『マーキュリー・ファー Mercury Fur』。イギリスの劇作家フィリップ・リドリーによる衝撃作が、キャストを一新して7年ぶりに再登場する。荒廃した世界に生きる兄弟エリオットとダレン、そして次々に現れる怪しくスキャンダラスな人物たち。彼らの前で兄弟が開こうとしている、残虐な匂いを放つパーティは……。NHK大河ドラマ『青天を衝け』で主演を担い、躍進した吉沢亮が、次なる高みへ向けて動き出した。エリオットとして過激な劇世界に生きる、新たな挑戦への思いを聞いた。

生きることへの執着心が、僕にはすごくカッコよく見えた

――吉沢さんは、2015年の初演をご覧になっていたそうですね。

はい、以前から勉強も含めていろんな舞台を観ているんですが、『マーキュリー・ファー』もそのひとつでした。その時に何だかものすごい衝撃を受けたんです。役者さんたちのエネルギー、シーンの残酷さ、いろんなものがあまりにも衝撃的すぎて、すっげえものを観た!と感じて。観終わったあと立ち上がれないくらい、疲労感が半端じゃなかった。それからずっと「僕もいつか『マーキュリー・ファー』みたいな舞台をやりたい!」って言い続けていたんです。そうしたら今回やらせていただけることになって、まさか!とびっくりして。

――運を引き寄せましたね。あの衝撃の舞台を観て「とても出来ない」じゃなく、「やりたい!」と思うところが素敵です。

僕は逆に、羨ましくてしょうがないと思ったんです。こんな作品で生きてみたい!と。自分の中で、芝居って何だろうもっと役を掘り下げる作業を、じっくりと考えてやってみたいなと思っていた時期に、あの作品を観て、うわっ、こういう世界がいい!と、すごく羨ましさを感じたのを覚えています。

――ご自身がエリオットという役を演じることを踏まえ、あらためて台本を読まれて感じたことは?

作品全体を通して、絶望が半端じゃないなと。不幸な人たちしか出て来ないと感じて、胸が締めつけられるというか。ファンタジーに見えて、意外にこういう世界は存在するかもしれない、今を生きる僕らに当てはまる部分もあるなと思ったり。どんな手を使っても生きようとする、生き抜くために必死に動く彼らの感情がグチャグチャになっていくさまに、押し潰されそうな気持ちになる。でもその根本には兄弟愛といったものがあって。生きることへの執着心が、僕にはすごくカッコよく見えたし、素敵だなと。すごく残酷だけど、すごく美しい物語だなと思いました。

全力で食らいついて、絶対にいいものを届けたい

――エリオットの弟のダレンを演じる北村匠海さんは、今回が初舞台だとか。

彼とは結構共演する機会が多くて、別の作品(編集部注:映画『さくら』)でも兄弟役を演じたことがあります。かなりのプレッシャーだと思うけど、すごく才能のある役者だし、人としても信用しているので楽しみです。僕のほうが年上ではあるんですけど、ふたりでいる時は彼のほうがしっかりしていて、僕はふざけているタイプなので(笑)。兄弟という関係性を考えるとイメージが逆かななんて思ったりしますけど、彼がダレンをどう演じるかは本当に楽しみにしています。

――演出の白井晃さんとの作品作りにも、どんな期待がありますか?

白井さんの演出は、楽しみでもあり、恐怖でもあり(笑)。いろんな人から「厳しいよ」と聞くんですが、その後に必ず「でもすごく愛があるから」って言葉が続くんですよね。これまで白井さんとお仕事されて来た人たちが、すごく白井さんのことを好きで、信頼していることが伝わります。相当追い込まれると思うけど、追い込まれて追い込まれて形にしていく、という作業は舞台ならではだと思うし。白井さんの演出は、すごく緻密に、何度も稽古を繰り返しながらやると聞いています。そういう経験は久しぶりなので、僕の中でお芝居に対する新たな意識が生まれるのか、これまでのものが全部崩れていくのか、何か変化は起こるだろうなと。そこはすごく期待しています。

――今、ご自身が舞台に立つために必要なもの、課題についてどのように考えていますか?

課題は山ほどありますけど、緊張感はなくしたくないと思います。舞台に出る前の、どうしよう!といった恐怖心とか、舞台に出た後にそういった思いは全部忘れて、集中していく感覚とか。あまり舞台慣れはしたくないと思っています。やっぱり舞台は僕の中で、特別なものとしてこれからもあってほしいなと思うので。

――大河ドラマで大活躍した吉沢さんを劇場で生で観たい!という方がたくさんいらっしゃると思いますが、衝撃の変身に驚かれるでしょうね。

確かに(笑)。僕がこの『マーキュリー・ファー』の初演を観た時の、圧倒的な臨場感、絶望感、あのとんでもない感動を、今回観に来てくださる人にもぜひ感じてほしいです。そうなるには、僕がどこまで白井さんについて行けるかに掛かっているなと。全力で食らいついて、絶対にいいものを届けたいと思っています。

取材・文:上野紀子 撮影:源賀津己



『マーキュリー・ファー Mercury Fur』
2022年1月28日(金)~2022年2月16日(水)
会場:東京・世田谷パブリックシアター
ほか、3月11日までツアー公演あり

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