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野村正昭 この映画がよかった! myマンスリー・ベスト

私の11月第1位は、日本映画『罪の声』、外国映画『ザ・ハント』に決定!

毎月連載

第28回

20/11/30(月)

11月公開の日本映画、この10本

①罪の声
②空に住む
③音響ハウス Melody-Go-Round
④フード・ラック! 食運
⑤脳天パラダイス
⑥魔女見習いをさがして
⑦さくら
⑧水上のフライト
⑨461個のおべんとう
⑩十二単衣を着た悪魔

※対象は10/23~11/25公開のもの

10月23日から11月25日迄に劇場公開された作品を対象に、今回は書かせてもらいますが、『罪の声』は、かつて『レディ・ジョーカー』(04)などで小説化や映画化もされた昭和の未解決事件がモチーフで、塩田武士の同名ベストセラー小説の映画化。35年前の未解決事件の真相を追う新聞記者(小栗旬)と、幼い頃の自分の声を事件に使われた男(星野源)とが、核心に迫るうちにクロスして相棒になっていく展開が上手い。TVのヒット・ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』で、タッグを組んだ脚本・野木亜紀子と、土井裕泰監督(『ビリギャル』15)が、サスペンスを盛り上げる。実際の事件に使われた“怪人二十面相”が“鞍馬天狗”になっていたりと絶妙にディテールは変えているが、“キツネ眼の男”は、よくぞ見つけてきたなと感心させられるキャスティング。梶芽衣子や宇崎竜童、宮下順子、塩見三省など、ここぞというポイントでの名優たちの出演が映画全体を引き締めている。

『空に住む』は、〈水先案内〉でも書かせてもらったが、大林宣彦監督『理由』(04)で、高層タワーマンションに住んでいた少女(多部未華子)が成長して、タワーマンションに戻ってきた、その後の物語と勝手に想像して楽しむことができた。彼女のイメージが、別の物語を紡ぎ出して、映画にさらなる広がりを感じさせる。

『音響ハウス Melody-Go-Round』は、坂本龍一や松任谷由実、矢野顕子、佐野元春など日本を代表するアーティストたちが、こよなく愛したスタジオを描いた秀逸な音楽ドキュメンタリーだ。従来ならば主役であるアーティストたちが、ここでは自分たちの音楽を生み出す至福の環境としてのスタジオを、愛情こめて独特の磁場と捉えているあたりが興味深い。音楽映画ファンなら必見の一作。

他にも『ビューティフルドリーマー』や『ホテル・ローヤル』『STAND BY ME ドラえもん2』『ドクター・デスの遺産/BLACK FILE』『おらおらでひとりいぐも』『どうにかなる日々』など、テンに入れたかった作品が目白押しでした。(私が観た11月の日本映画は28本)

『空に住む』 (C)2020 HIGH BROW CINEMA

11月公開の外国映画、この10本

①ザ・ハント
②スリー・フロム・ヘル
③THE CAVE/サッカー少年救出までの18日間
④ミッシング・リンク/英国紳士と秘密の相棒
⑤ザ・バンド/かつて僕らは兄弟だった
⑥ウルフウォーカー
⑦ストレイ・ドッグ
⑧ストックホルム・ケース
⑨JUST ANOTHER
⑩プロフェッショナル

※対象は10/23~11/25公開のもの

『ザ・ハント』は『バトル・ロワイアル』(00)や『ハンガー・ゲーム』(12)などの流れを汲む人間狩り映画だろうと思って観て、実際そうだったのだが、冒頭から意表を突く展開で、最後までぐいぐい見せ、久しぶりにアクション映画の醍醐味を堪能した。何よりもヒロイン(ベティー・ギルピン)のユニークな個性ー彼女がなぜそうなったのかをチラリと明かすタイミングも絶妙ーが素晴らしく、黒幕のヒラリー・スワンクとのラストバトルには興奮させられました。

『スリー・フロム・ヘル』は、本当にどうかしているとしか思えない怪作で、さすがロブ・ゾンビ監督と脱帽ものの凶悪な映画。『ザ・ハント』と共に、残虐な描写が全米で物議を醸したのも十分納得できるが、両作とも、嫌な印象がないのは、確信犯であり、妙なヒューマニズムを絡ませていないからかもしれない。どちらかといえば、残虐描写が苦手な筆者が、そう思えたんだから大したものです。

『THE CAVE/サッカー少年救出までの18日間』は、実録もので、タイの洞窟の奥に取り残された少年たちを救う美談だが、現実に救助に関わった人たちが、本人役で出演していることもあって、フィクションともノンフィクションともつかない奇妙な味わいになっている。いかにも人の良さそうなポンプ業者のおじさんが、いい味を出していて、たぶん、この人は本人役だろうと思っていたら、ラストクレジットの横に出てくるメイキング風のショットで、それが明かされていて微笑ましい気分になった。

『ザ・バンド/かつて僕らは兄弟だった』は、もうひとつの『ラスト・ワルツ』(78)というべきドキュメンタリーで、ザ・バンドの中心メンバーだったロビー・ロバートソンの自伝が基とか。『ラスト・ワルツ』のスコセッシ監督が製作総指揮で、ザ・バンドの誕生から解散まで、ブルース・スプリングスティーンや、エリック・クラプトンらへのインタビューもまじえて、見応えのある作品でした。『プロフェッショナル』は、ジャン=ポール・ベルモンド主演作の特集上映で、唯一の劇場初公開作品。第2弾の特集もぜひ!(私が観た11月の外国映画は16本)

『スリー・フロム・ヘル』 (C) 2020 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

プロフィール

野村正昭(のむら・まさあき)

野村正昭(のむら・まさあき)1954年山口県生まれ。映画評論家。年間新作800本を観る。旧作も観るが、それを数えると空恐ろしい数になるので、数えないことにしている。各種ベストテンの選考委員を務めている。

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