Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

「PARCO劇場オープニング・シリーズ」特集

宮沢氷魚が『ピサロ』を語る

全20回

第1回

20/2/12(水)

演じる役はインカ帝国の絶対王・アタワルパ

昨年放送されたドラマ『偽装不倫』で話題を呼んだ新鋭・宮沢氷魚。先日公開された主演映画『his』では同性愛者の青年を演じるなど、作品ごとに全くテイストの異なる役柄を身にまとい、存在感を発揮しているが、そのキャリアで特筆すべきは次々と話題の映像作品に出演しつつ、わずか2年ほどの活動の中でコンスタントに舞台に出演してきたこと。藤田貴大のオリジナル作品や三島由紀夫原作『豊饒の海』など舞台作品で着実にその演技力を磨いてきた。

次に挑む舞台『ピサロ』は、35年前に上演され、いまなお伝説の舞台と称される作品。インカ帝国の絶対王・アタワルパ役として、主演・渡辺謙演じるピサロと真っ向から対峙することになる本作への出演を「非常に高いレベルの役作りが求められる」と自身にとって最大の挑戦と位置付ける。

スペインの老将・ピサロがわずか167名のスペイン兵を率いて南米へと赴き、最終的にインカ帝国を滅ぼしてしまう史実をベースにした本作だが、宮沢はここで展開する物語を「交わるはずのない2つの民族が歩み寄っていく姿が素晴らしい。究極のところ、愛の物語だと思う」と捉える。

「僕自身、アメリカで生まれ、インターナショナルスクールに通っていたんですが、自分の置かれた環境に甘えていた部分があったと思うんです。周りからは“いろんな文化に触れてきたよね?”と言われるんですが、そこにいたのは自分が楽だったから。いざ、そこから外に出た時に、いろんなものと距離をとっていた自分がいたことに気づきました。そこでもっと(異なる存在に)歩み寄っていければ、世界はもっと素晴らしくなるんじゃないかと感じました。すごく好きなシーンがあって、アタワルパがピサロとの出会いを通じて文字を書くという行為を初めて知って、子どものように喜ぶんです。僕もひとりの人間としてそうありたいなと思いました」

舞台に感じる恐怖、舞台だから得られるもの

舞台への出演は毎回、まさに自分の知らない“異世界”に足を踏み入れるという体験である。宮沢は「恐怖を与えてくれるものです」と笑う。

「何回やっても慣れないし、生でお芝居するからこそ、やり直せない恐怖があります。でも、それってすごく大事なことだと思っています。1か月半の稽古があって、セリフ一つひとつにじっくりと向き合うことができるのは俳優としてすごく贅沢なことだなと思います。本番中も日々考え続けて、なんなら千秋楽が終わっても考え続けると思います」

昨秋のドラマ出演以降、お茶の間での人気・知名度が一気にアップした感があるが、当人は「めまぐるしさ、あわただしさの中にいて、正直、自分をふり返ってみる余裕がない(苦笑)」と実感がわかない様子。とはいえ、確実に俳優という仕事の魅力を体で実感しているよう。35年前の本作の上演でアタワルパを演じた渡辺謙が、この作品を通じて「俳優を一生の仕事にしていく覚悟」が固まったと明かしているが、宮沢自身、舞台『豊饒の海』への出演で同じような感覚を味わったという。

「僕の役は最後に自害するんですけど、そこで意外と客席や舞台袖が見えるんです。その時“あぁ、なんて美しい景色なんだろう。ずっとこの景色を見られたらいいな”と思ったんです。ずっと舞台に立ち続けて、何かを生み出す側でいたいなと感じました」。

“太陽の子”として舞台に立ち、渡辺謙演じるピサロと向き合い、壇上で生と死を繰り返す中で25歳の若者は何を感じ、何を手にするのか……? 楽しみに待ちたい。

取材・文:黒豆直樹
撮影:源賀津己

作品情報

『ピサロ』

2020年3月13日(金)~4月20日(月)
PARCO劇場
作:ピーター・シェーファー
翻訳:伊丹十三
演出:ウィル・タケット
出演:渡辺謙、宮沢氷魚、栗原英雄、
和田正人、大鶴佐助、首藤康之、
長谷川初範 ほか

アプリで読む