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サザンオールスターズ、横浜アリ無観客配信ライブ“決断”への背景 初の試みに込めたエンタメの可能性

リアルサウンド

20/6/21(日) 12:00

 6月25日、サザンオールスターズが横浜アリーナで無観客配信ライブ『サザンオールスターズ 特別ライブ2020 「Keep Smilin’~皆さん、ありがとうございます!!~」』を開催する。鑑賞は有料チケット制で、配信はバンドのオフィシャルファンクラブを含む8つのメディアから行われる。

 政府からのイベント自粛要請以降、すでに様々なアーティストが無観客会場からの無料ライブや有料コンテンツの配信を始めているが、ドームクラスの動員力を誇る“大物級”が単独で行う有料制の無観客配信ライブとしては先駆けとなる格好だ。

 緊急事態宣言の解除を受けて、各都道府県において様々な業種の休業要請が段階的に緩和されてきているものの、大規模なライブの開催については依然として先行きは不透明なままだ。今回のライブはあらゆる意味で桑田佳祐とサザンの「思い切った」決断だったと言えよう。

 思えば、これまでも桑田は時々の社会情勢に対し、様々なアクションを起こしてきた。

 1991年に結成した覆面バンド“SUPER CHIMPANZEE”では北京の天安門広場でゲリラライブを敢行。1993年からはエイズ啓発活動の一環であるAAA(アクト・アゲインスト・エイズ)に参加。途中、1995年には“桑田佳祐&Mr.Children”名義でリリースしたチャリティシングル「奇跡の地球(ほし)」の大ヒットを挟みながら、The Beatlesからジャズ、ディスコ&ソウルや映画音楽、英米のロックに歌謡曲のカバーと、バラエティに富んだ嗜好性と過剰なまでのおもてなし精神によるライブで、2018年まで25年以上もチャリティ活動に携わった。

 2011年の東日本大震災では、復興支援のために自らが発起人となり“チームアミューズ!!”を結成。サザンの原由子、関口和之、松田弘、野沢秀行と共に福山雅治、BEGIN、ポルノグラフィティ、Perfumeらが参加したシングル「Let’s try again」の売上は、所属マネジメント会社の「アミューズ募金」を通じて日本赤十字社及び地方公共団体に寄付されている。

 さらに同年5月、桑田は仙台の被災地を訪れ、レギュラーラジオ番組『桑田佳祐のやさしい夜遊び』を仙台DATE FMから生放送。8月にはソロ名義のトリプルA面シングル『明日へのマーチ / Let’s try again ~kuwata keisuke ver.~ / ハダカ DE 音頭 ~祭りだ!! Naked~』をリリースし、9月には震災時に遺体安置所として使用されていた宮城セキスイハイムスーパーアリーナで誰よりも早く震災後初となるライブを開催し、被災地に明るい話題を届けた。これらの収益の一部も日本赤十字社及び地方公共団体に寄付されている。

 2012年3月には宮城セキスイハイムスーパーアリーナの敷地内にて桜の記念植樹を行い、16年3月の女川町の臨時災害放送局“女川さいがいFM”閉局時には原由子らと共に同局から『~やさしい夜遊び』の生放送を届けるなど、継続的に震災と向き合ってきた。

 サザンは2008年から2013年まで続く無期限活動休止状態にあった。筆者が活動再開時に行った取材で、桑田は、数多くの被災したファンからの便りに綴られていた「サザンを楽しみにしています」といった言葉に背中を押されたことや、還暦(2016年)を間近に自身の意識が自然と世相に向かったことなどを語っていた。その言葉通り、活動再開時のシングル『ピースとハイライト』や2015年リリースのアルバム『葡萄』では、日本への思いや平和への思考が色濃く描かれることとなった。

 また、2019年、桑田はサザンの活動と並行して学生時代から親しんできたボウリングを盛り上げるべく『KUWATA CUP 2019~みんなのボウリング大会~』を開催。全国47都道府県500以上のボウリングセンターで行われた予選会にプロ、アマ延べ3万人が参加するという史上最大規模のボウリング大会となった。2020年度の開催は惜しくもコロナ禍で延期を余儀無くされたが、地域経済の活性化にも繋がる活動として大いに注目されている。

 今回の特別ライブでは、タイトルからも“ありがとう”という“感謝”の精神がより色濃く打ち出されている。特に対象となるのは音楽業界のコンサートスタッフと医療従事者をはじめとするエッセンシャルワーカーだ。

 無観客にも関わらず「敢えて」横浜アリーナを「わざわざ」貸し切った。そこから会場のレンタル料や総勢約400人近くにも及ぶキャスト及びスタッフの雇用が生み出されている。そしてこのライブの収益の一部は、前述の“アミューズ募金”を通じ、新型コロナウイルス感染症の治療や研究開発にあたる医療機関へと寄付される。

 関係者への取材によると、今回の配信では無観客だからこそ可能となるカメラの配置やアングルにも挑戦する予定だという。ポストコロナ時代における国内大型エンタメ興行の試金石という見方の一方、個人的にはただただ“サザンらしい”ライブを期待している。

 何せ突発的な“特別ライブ”なのだ。例えば「希望の轍」と「マンピーのG★SPOT」を同じライブで歌ってのけるアンビバレントな魅力の同居もまた彼らのライブの大きな醍醐味である。清々しいナンバーの連打もよし。シングル曲の連打もよし。エロや笑いの挿入もよし。意外な佳作が披露される可能性もゼロではないだろう。

 社会への関心。迅速なフットワーク。明快なメッセージ。継続的な取り組みのスタンス。独自性と嗜好性の反映。そして具体的な成果の捻出。桑田だからこそ、サザンだからこそ成し得てきたライブが確かにあった。今回もディスプレイ越しに多くの笑顔が花咲くことを願ってやまない。(文=内田正樹)

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