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『カリギュラ』『泣くロミオと怒るジュリエット』橋本淳が舞台に向けて菅田将暉に「関西弁を習いたい(笑)」

ぴあ

橋本淳

2004年にドラマ『WATER BOYS2』でデビュー、当時の最年少レッドとして『魔法戦隊マジレンジャー』(2005年)の主演に大抜擢され、その後も朝ドラをはじめ多数の作品に出演する橋本淳さん。主戦場である舞台では、宮田慶子、宮本亜門、白井晃、永井愛、ケラリーノ・サンドロヴィッチなど錚々たる演出家のもとでステージに立ってきました。

2019年11月9日には栗山民也演出の舞台『カリギュラ』が開幕、さらにオールメール&全編関西弁の演出が注目を集める舞台『泣くロミオと怒るジュリエット』の上演を2020年2月に控えています。

そんな、演劇界で引っ張りだこの橋本さんに、テイストの異なる両作品に対する思いや見どころを語っていただきました。

——まずは『カリギュラ』のお話から。演じる役どころについて教えてください。

橋本淳(以下、橋本) 僕が演じるケレアは、冷静かつ聡明な人物です。菅田将暉くん演じるカリギュラと対峙する役どころで、クーデターの首謀者となります。

最初はケレアという人物がどういう考え方を持っているのか、分からない部分もありました。でも、台本の中に「私はただの市民なので」というセリフがあったり、彼自身、たしかにそこまで特出した才能があったりするわけでもないので、とても人間っぽい人だなと思いました。

それに、考えすぎてしまうところは、ちょっと自分と近いかもしれないです。思いついたらすぐ行動するというよりは、思い悩むことの方が多いので。作品の中でも、カリギュラが逃亡したときに、周りにいるほとんどの人達が深く考えていない中、ケレアだけは何か腑に落ちないなとずっと考えている。そういう部分は僕と似ているかもしれません。

——まもなく本格的に稽古も始まると伺いました。

橋本 そうなんです。先日、本読みをしたのですが、そこで皆さんの声を聞けたのはとても大きかったですね。この感覚を持ち帰って、それぞれが稽古までにどう作りあげてくるのか、楽しみでもあり、怖くもあります。実は7月ぐらいから台本はいただいていたんですよ。そこから準備をしてきたので、ようやく、という感じもしますね。

——本読みのときには他のキャストさんたちと、どのようなやりとりをされたんですか?

橋本 菅田くんやエリコンを演じる谷田歩さんと、休憩時間に「どうします?」「ここ難しいですね」というような話をしましたね。やっぱりみんな同じように苦戦している印象でした。登場人物はみんな、どこか掴みどころのない役なので。でもそこは全員で協力しながら答えを見つけていきたいと思っています。僕らなりの座組の答えがきっとあるはずなので。

——菅田さんとは、本作が初共演となりますね。

橋本 そうなんです。でも、お互いが出演している舞台を観たこともありましたし、共通の友人もいるので初めて会ったような感じがしなかったんですよね。だから初対面のときに、「会ったことないよね?」と、確かめてしまいました(笑)。

——橋本さんから見た菅田さんはどんな方ですか?

橋本 どんな役も憑依しているように見えるので、感覚でやっているように見られがちだけど、実は理論派なのかなって。頭の回転が早い人なんだろうというのは、ずっと思っていたんですけど、実際に会ってみてもその印象は変わらなかったですね。きっといろいろ深く見ている人なんだろうなと思いました。

本読みのときも、スイッチが入ってからの爆発力がすごかったんですよ。本当に素晴らしかった。このあとの稽古期間で、それが何段階も上がっていくと思うので、僕も負けないようにうまく絡んでいきたいと思っています。

——公式サイトの掲載コメントには、『カリギュラ』の原作を初めて読んだときと最近で捉え方が異なっていたとありました。

橋本 20代前半の頃に、蜷川幸雄さんが演出をされた『カリギュラ』を観ました。その後に原作も買って読んでいたのですが、とにかくよく分からなくて(笑)。でも今回、この作品に出演すると決まったときに、もう一度、腰を据えて読んでみたいと思ったんです。そして作品を理解するには、作者であるアルベール・カミュ自身のことも勉強しないといけないなって。

だから、哲学の成り立ちや、アリストテレス、ニーチェという哲学を紡いできた人たちのこと、そしてその中で、カミュがどの哲学に重きを置いて生きてきたのか、というところから追っていきました。

——原点から追っていくことで、作品への理解を深めていったんですね。

橋本 一見、とても難しそうな作品に感じますが、大枠としては昔から人間が抱えていることがテーマになっているんですよ。「人はなぜ生を受けて、生きて、死ぬのか」という。哲学とか、不条理とかという難しい言葉で形容するとつかめない感じがしますけど、例え話をしながら紐解いてあげれば、きっと若い人たちでもしっかりと理解できる内容なんだと思います。

——では、改めて『カリギュラ』を読んでみて、感じたことはなんですか?

橋本 僕も毎日生きていますけど、必死には生きていないなと思ってしまったんですよね。例えばですが、もし今、余命宣告を受けたら、きっともっと必死になるよなって。黒澤明監督の映画『生きる』みたいだなと思ったんです。その作品は、主人公が胃癌を宣告されてから、初めて生きた心地がしたというようなストーリーなのですが。

本作でも、きっとカリギュラが、漠然と生きている貴族たちに、自分が暴君になることによって「生きるとはなんなのか」というのを無理やり考えさせているのだなと、そう感じました。

——本作を経ることで、橋本さん自身が成長、変化するような期待はありますか?

橋本 やっぱりこの仕事は、人とどう関わっていくかが重要になると思います。たぶん稽古中は、毎日変わってくると思うんですよ。僕や相手の気持ちがちょっと変わるだけで、作品全体にも影響してくると思いますし。そういう相手の機微に、毎日どれだけ気づけるのかっていうのを大事にしていきたいです。感度高くアンテナを張って、人の心の揺れ動きを敏感に感じとっていきたいと思っています。

——そして来年2月に開幕する『泣くロミオと怒るジュリエット』では、桐山照史さん演じるロミオの親友・ベンヴォーリオを演じますね。

橋本 『カリギュラ』同様、ベンヴォーリオも冷静な性格の役ですね。元木聖也さん演じるマキューシオは鉄砲玉みたいな人なのですが、それを抑えるような、長男みたいなポジションです。

こちらも台本の初稿をすでにいただいているのですが、『ロミオとジュリエット』という有名な作品をベースに、作・演出の鄭義信さんがちょっとスパイスを加えていて、ベンヴォーリオは少しミステリアスでクセのある役どころになっているなという印象を受けました。

12月から稽古が始まりますが、きっと鄭さんも早く稽古をしたいんじゃないかな(笑)。稽古期間が1か月くらいあって、時間をかけてきっちりやれそうなので楽しみです。

——ロミオとジュリエットを演じる桐山さんと柄本時生さんとは初共演ですか?

橋本 そうなります。桐山さんとは少し接点があるので稽古で会うのが楽しみですし、時生くんとは、お互いの舞台を観て、楽屋で挨拶を交わした程度で。でも、仲良くなれるんじゃないかなと思っています。

——全編関西弁ということについては、いかがですか?

橋本 ドラマでは方言を話す役を演じたことがあるのですが、舞台では初めてなんです。だから『カリギュラ』の公演中に、菅田くんに習いたいなって(笑)。でも、話を聞くかぎりでは、現代の関西弁ともまた違うみたいで。もうちょっと濃いというか昔っぽい感じらしいんですよ。だから不安しかないですね(笑)。

——桐山さん、八嶋智人さんなど、関西出身のキャストの方も多いですね。

橋本 僕、関西の方のノリが好きなんですよ。たくさん話してくれる人の方がもともと好きなので。だからすぐ仲良くなれそうだし、稽古が楽しみです。

——改めて、本作はどんな作品になりそうですか?

橋本 桐山さん、時生くんの2人でロミオとジュリエットをやるっていうのが、まずすごくキャッチーですよね。また、他のシェイクスピア作品のセリフが小ネタで出てくるので、『ロミジュリ』以外の作品が好きな人も楽しめると思います。

『ロミオとジュリエット』って、大体の人は話の筋が分かるじゃないですか。その中に鄭さんならではのメッセージ性が入ってくるので、笑いあり、涙もありの人情劇になるんじゃないかなって思います。もしかしたら、前情報なしで『ロミオとジュリエット』だと思って観に来たほうが、より面白く感じるかもしれないです。関西弁ということで、漫才っぽいくだりもありますし。そういう表現が本当に鄭さんは素晴らしいので、この作品に出られることは光栄ですし幸せです。稽古も必死に頑張るので、ぜひ期待して劇場に来ていただけたらうれしいです。

撮影:八木英里奈、取材・文:榎本麻紀恵

<公演情報>

『カリギュラ』
作:アルベール・カミュ
翻訳:岩切正一郎
演出:栗山民也
出演者:
菅田将暉 高杉真宙 谷田 歩 橋本 淳 秋山菜津子
原 康義 石田圭祐 世古陽丸 櫻井章喜 俵 和也 野坂 弘 坂川慶成
石井 淳 石井英明 稲葉俊一 川澄透子 小谷真一 小比類巻諒介 西原やすあき 高草量平 原 一登 平野 亙 峰崎亮介 吉澤恒多

【東京公演】 2019年11月9日(土)〜11月24日(日)
新国立劇場 中劇場

【福岡公演】 2019年11月29日(金)〜12月1日(日)
久留米シティプラザ ザ・グランドホール

【兵庫公演】 2019年12月5日(木)〜12月8日(日)
神戸国際会館こくさいホール

【宮城公演】 2019年12月13日(金)〜12月15日(日)
仙台銀行ホールイズミティ21 大ホール

『泣くロミオと怒るジュリエット』
作・演出:鄭 義信
出演者:
桐山照史、柄本時生、橋本 淳、元木聖也、高橋 努、
岡田義徳、朴 勝哲、みのすけ、福田転球、八嶋智人、段田安則
岩男海史 白石惇也 鈴木幸二 砂原一輝 西村 聡 平岡 亮 ふじおあつや 水谷 悟
宗綱 弟 ワタナベケイスケ

【東京公演】2020年2月8日(土)〜3月4日(水)
会場:Bunkamuraシアターコクーン

【大阪公演】2020年3月8日(日)〜15日(日)
会場:森ノ宮ピロティホール

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