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FANTASTICS『Winding Road~未来へ~』でより深みのあるグループへ 歌とMVから伝わる、優しく包み込むような表現力

リアルサウンド

20/9/25(金) 6:00

 9月23日、FANTASTICS from EXILE TRIBE(以下、FANTASTICS)が6枚目となるニューシングル『Winding Road~未来へ~』をリリースした。今作の表題曲は、“未来にワクワクを”というテーマで書き下ろされたミディアムナンバー。さまざまな不安や葛藤と戦いながら、1歩1歩踏みしめながら進んできた、FANTASTICSの軌跡。そして、9人を次のステージへと導く希望の光が描かれている。

 FANTASTICSは、EXILEのパフォーマーである世界と佐藤大樹を中心に、EXPGから選出された澤本夏輝、瀬口黎弥、中尾翔太、堀夏喜、木村慧人による7人組のパフォーマー集団として2016年末に始動。その後、2017年に『VOCAL BATTLE AUDITION 5』の合格者であるボーカル八木勇征と中島颯太が加入。パフォーマー中尾との早すぎる別れに苦しむ中、2018年12月、9人組のダンス&ボーカルグループとしてメジャーデビューを果たした。デビュー当初は“パフォーマー集団”から始まったことを示すように、スタイリッシュかつ爽やかなダンスチューンを全面に出していた彼らだが、今では「Dear Destiny」のようなミディアムバラードも武器に。リーダーの世界と佐藤が俳優業に力を入れていることもあり、初の単独ホールツアー『FANTASTICS SOUND DRAMA 2019 FANTASTIC NINE』に演技パートを組み込むなど、EXILE TRIBEの中でも特に演技派なグループとして活躍の幅を広げてきた。今作「Winding Road~未来へ~」でも、その強みが存分に活かされている。

 まず、この曲における歌声の魅力から探っていこう。日頃からストイックに身体を鍛え上げている肉体派ボーカリスト八木は、歌詞のメッセージに説得力を持たせるパワフルな歌声から、“絶妙なかすれ”が艶っぽいファルセットまで、1曲の中で多彩に表情を変えていく振り幅が特徴。以前から曲の歌い始めを担当することの多かった彼だが、『Winding Road~未来へ~』でも、フワッと舞い込むようなイントロのピアノに続けて〈変わりゆく時間と 変わりゆく街の中に〉というAメロを歌っており、ややハスキーな低音が、曲の持つ温かさやセンチメンタルな世界観をより鮮明にリスナーに伝える。八木自身、完全に未経験の状態からアーティストの道へと進み、それまで知らなかったことを貪欲に吸収しながら、変わりゆく環境の中で進化してきた。だからこそ、彼が歌う最後の〈それでも LaLa 未来を歩いてる〉はとても頼もしく響いてくるのだろう。

 一方の中島は、少年のようなあどけなさを残した素朴な歌声や、そこにいるだけで輝きを放つ存在感に定評あり。八木の力強い歌声と比べると、やや声が細い印象があるが、清涼感のあるハイトーンや繊細な感情の揺らぎを表現することに長けている。「Winding Road~未来へ~」では、1番の歌い始めが八木だったのに対し、2番の歌い始めは中島が担当。歌詞には〈手にしたものさえ わからなくなるくらい〉と不安な心情が綴られているが、彼のクリアな声が、希望溢れるエンディングに向けてそっと光を灯すような役割を果たしている。過去作でいうと「Flying Fish」や「Hey, darlin’」もそうだが、2人の歌うパートが1番・2番で入れ替わることや、滑らかに歌い繋ぐ2人の掛け合いはFANTASTICSの大きな魅力と言えるだろう。中島も「個人的にはラストサビの掛け合いで、お互いが高め合って盛り上がる部分が気に入っています」(引用:FANTASTICS、『Winding Road~未来へ~』で挑んだ味わい深いパフォーマンス 配信ライブの手ごたえや新たなビジョンなど語る)と語っている通り、相乗効果で高まっていく歌声の連鎖は、もともとパフォーマー集団だったFANTASTICSに加入し、切磋琢磨してきたボーカル2人の関係を連想させる。

 MVも“二面性”をテーマとしたストーリー性のある映像となっている。1番のAメロ、Bメロでは椅子に座り、浮かない表情でうなだれるメンバー達の姿があるが、1番のサビでは彼らの前にもう1人の“ポジティブな自分”が現れる。ネガティブな思考にとらわれて立ち上がることができない自分を奮い立たせるように、時に情熱的に、時に少し肩の力を抜いて歌い踊る、もう1人の自分ーー。その姿に心動かされ、徐々に前向きになっていく様が描かれている。1人2役のダンスシーンは、シンメントリーながらも、自分との掛け合いを楽しみながら踊っている姿が見どころ。澤本曰く「悩んでいる自分と励ます自分の場面はそれぞれで考えていて、表情もひとりひとりのもどかしい思いが詰まっています」(引用:FANTASTICS、『Winding Road~未来へ~』で挑んだ味わい深いパフォーマンス 配信ライブの手ごたえや新たなビジョンなど語る)とのことで、ダンスはもちろん、メンバー全員が芝居を経験しているFANTASTICSならではの表情の作り方や仕草も、この曲をドラマティックに彩っている。

 なお、今回の振付は、MV(リード曲)での振付は初となる、最年少パフォーマーの木村慧人が担当。ボーカルが一言一言を丁寧に届けるように、パフォーマーも大振りかつストレートなダンスで歌詞を表現している。これまでのFANTASTICSの振付は世界がダンスリーダーとして監修していたそうだが、今回の振付は「世界さんが『FANTASTIC 9』で見やすい振付けをしていたので、そのイメージが今作にも表れていると思います」(引用:FANTASTICS、『Winding Road~未来へ~』で挑んだ味わい深いパフォーマンス 配信ライブの手ごたえや新たなビジョンなど語る)と語るように、木村が自ら学び、生み出したもの。もともとEXPG STUDIOのインストラクターをしていた世界と、その教え子だった木村という関係性があるだけに、グループ内で“FANTASTICSらしさ”が継承されていることも、ファンにとってはたまらないポイントではないだろうか。

FANTASTICS from EXILE TRIBE / Winding Road〜未来へ〜 (Music Video)

 さらにラストサビでは、統一されたモノトーンの衣装でパフォーマンスしている8人の背後に、個性豊かなメンバー達を象徴するような8パターンの椅子が登場。彼らの前には、かけがえのない9人目のメンバーのため、あるいはこの曲を受け取るリスナーのための1脚の椅子があり、そこに語りかけるように〈それでも LaLa 僕は歩いてる〉と告げる八木のアカペラが、心地良い余韻を残している。

 スタイリッシュでフレッシュなイメージが強かったデビューシングル『OVER DRIVE』から、約2年。FANTASTICSはなんて深みのあるグループになったのだろう。全力でパフォーマンスすることで見ている人に元気を与えていた時期を経て、言葉で、振付で、表情でしっかりと想いを届け、立ち止まっている人の手を引く。自分達が苦悩しながら夢を掴んできたからこそ、弱った心に優しく寄り添える。そんなFANTASTICSの深い愛情が『Winding Road~未来へ~』からは溢れている。

■斉藤碧
エンタメ系ライター。
ダンス&ヴォーカルグループ、アイドル、ロック、ヴィジュアル系、俳優などジャンルレスで執筆中。V系雑誌「Stuppy」では編集も担当。
Twitter:@stmdr38

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