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YOASOBIに続くブレイク株に? 自作小説×音楽で注目の放課後爆音少女・みるきーうぇいとは

リアルサウンド

20/7/7(火) 12:00

 2020年の音楽シーンに大きな変化が生まれている。インターネットを軸としたアーティスト・YOASOBIの躍進だ。YOASOBIは、小説をモチーフに音楽を制作するクリエイターユニット。小説が持つ世界観を楽曲で相互補完することで相乗効果となり、さらに奥深いエンタメ体験を与えてくれる。

 そんな中、YOASOBIがブレイクする以前から歌詞が持つ言葉の可能性に着目し、自作小説×音楽×映像というスタイルで活動する、みるきーうぇいをご存知だろうか? 小説と音楽で制作者が分かれているYOASOBIとは異なり、みるきーうぇいはアーティスト自身が小説を執筆。自身の楽曲をモチーフにした半自伝小説『放課後爆音少女』は、小説投稿サイト『LINEノベル』にて月間ランキング1位を獲得するなど、音楽はもちろん、文学でもその才能を発揮している。

 そもそも、みるきーうぇいとは、“アッパー系メンヘラ”を表現するリアルと共感が魅力のロックバンドだ。メンバーは伊集院香織、ただ独り。しかし、ライブでは3人組として鮮烈な演奏を奏でる。作品の根幹にあるのは、伊集院香織の心にある“大人になるのはもうやめだ”という叫び。本人の実体験から生み出されるリアルな魂の叫びが高い文章力により実体化し、同じような経験のある若い世代を中心に絶大な支持を受けている。

みるきーうぇい『朝焼け』Music Video

 自身でショートストーリーを描き、それに主題歌を付けて発信する……“音楽と小説の融合”を生み出す新たなアーティスト像。伊集院香織名義で2019年に発表した『放課後爆音少女』は現在、『note』や『小説家になろう』、そして『カクヨム』、『エブリスタ』、『NOVEL DAYS』など主要小説投稿サイトへ投稿され、今も読者の輪を広げている。

 みるきーうぇいは、これまでインディペンデント精神を大事にバンド活動してきた知る人ぞ知る実力派バンドだった。伊集院の実体験である“いじめ”を題材としたセンセーショナルな楽曲「カセットテープとカッターナイフ」は、現在MVがYouTubeで50万回再生を突破。生々しい歌詞、コード感の美しいロックンロールサウンド、切ない歌声、そして校内で繰り広げられる緊迫感ある映像は早耳の音楽ファンから注目を集め、彼女の存在を知らしめる代表曲となった。なお、初の全国流通作品『カセットテープとカッターナイフ』(2016年)は、自主レーベル〈みるきーうぇい放課後レコーズ〉からカセットテープ(!)でリリースされた。完全自主制作でありながら、オリコンデイリーシングル・ランキング28位(インディーズウィークリーランキング5位)を記録している。

みるきーうぇい「カセットテープとカッターナイフ」Music Video

 その当時、ジャーナリストの津田大介氏が「人に裏切られて、でも信じたくて、不確かなつながりを求めて虚空に言葉を紡ぐーー。24時間365日周りの目が気になってしまうこんな時代だからこそ心の響く“生きる”ための鎮魂歌。」とメッセージを送っている。そのほか、ブレイク前に対バンしていたあいみょんや、先輩であるKANA-BOON・谷口鮪、ヤバイTシャツ屋さん(ボーカル・こやまたくやは寿司くん名義でみるきーうぇいのMVを制作)といったアーティストのほか、彼女を発掘したライブハウス南堀江knaveの倉坂直樹氏、そして日本ロックシーンを支えてきた新宿LOFTのブッキング担当・樋口寛子氏など、音楽仲間や現場からの評価も高い(参考:みるきーうぇい公式サイト)。

みるきーうぇい『SNSに殺されそう』Music Video

 みるきーうぇいが解き放つ言葉やパワーを持つ音楽に対して、尾崎豊やTHE BLUE HEARTSなどを重ねるリスナーも少なくない。未体験の方はYouTubeで公開されたばかりの人気曲「十代とエレキ」の歌詞をまず読んでみてほしい。伊集院香織は〈僕の音楽を壊すくらいなら死んだ方がマシだ〉と言い切る。みるきーうぇいは、これまでも多くのメジャーレーベルからの誘いを拒んできた過去を持つが、メジャーやインディーズ云々が問題ではなく、音楽を何よりも大事にしてきたカリスマ性を持つ表現者なのだ。

みるきーうぇい「十代とエレキ」Music Video

 初期衝動から生まれる張り詰めた言葉が輝き出すエモさ、暗闇から覗き出す朝日のようにあたたかく包み込んでくれるメロディの美しさ、今にも泣き出しそうな歌声に込められた思いの強さ、踊るように躍動するビートの気持ち良さ。みるきーうぇいの音楽性の幅は広く、ベランダから飛び降りたあの子を歌ったロックチューン「ほんとは生きるのとても辛い。」は、The Strokesのごとく流麗なるギターセンスを感じる。

みるきーうぇい「ほんとは生きるのとても辛い。」Music Video

 また、The La’sの名曲「There She Goes」を彷彿とさせるラブソング「CRAZY BEAUTIFUL BOY」が持つ、儚い切なさも聴き逃せない。温かくも優しい歌声、キラキラと輝くメロディやサウンドからは、“アッパー系メンヘラ”と一言で片付けることのできない無限大の可能性が感じられる。

みるきーうぇい『CRAZY BEAUTIFUL BOY』Music Video

 そんな伊集院香織によるみるきーうぇいが、七夕である7月7日、3枚目となる最新ミニアルバム『僕らの感情崩壊音』のリリースを発表した。そう、みるきーうぇいの日だ。タイトルは未定だが全6曲を収録、7月22日にはそこから1曲目のショートストーリーと楽曲、MVも公開するという。音楽と映像、小説がシンクロする表現、聴き手に強い没入感を与える作品のクオリティの高さ。コロナ禍が続く不安定な空気漂う今年の夏、みるきーうぇいが日本の音楽シーンに大きな刺激を与えてくれることは間違いなさそうだ。

みるきーうぇい【LIVE】-カセットテープとカッターナイフ

■ふくりゅう(音楽コンシェルジュ) 
Yahoo!ニュース、J-WAVE、NHK、Spotify、LINE MUSIC、AWA、ミュージックマガジンなどで書いたり喋ったり選曲したり考えたり。Spotifyで公式プレイリスト『キラキラポップ:ジャパン』を毎週火曜日更新で選曲中。

みるきーうぇい オフィシャルサイト

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