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嵐、ファンと共に歩んだ20年 ビデオクリップ集『5×20』で振り返る“国民的アイドル”に至るまで

リアルサウンド

19/10/25(金) 7:00

 10月16日、嵐の20周年を記念したビデオクリップ集『5×20 All the BEST!! CLIPS 1999-2019』が発売されました。シングル表題曲のビデオクリップが63本、アルバム曲やカップリング曲のビデオクリップを収録した初回特典を合わせると、実に72本におよぶビデオクリップが収録されています。発売初日のオリコンDVDおよびBlu-rayデイリーランキングでも、それぞれ1位を獲得しました。先日、累計売上200万枚を達成したベストアルバム『5×20 All the BEST!! 1999-2019』同様、記録的な売上が期待されます。

(関連:嵐のMVに潜む謎 「Happiness」「Love so sweet」「Monster」の気になるシーンに注目

 嵐は、10周年の際にもビデオクリップ集『5×10 All the BEST! CLIPS 1999-2009』(以下、『5×10』)を発売しました。今回の『5×20 All the BEST!! CLIPS 1999-2019』(以下、『5×20』)でパッケージに描かれた絵は、『5×10』のパッケージで描かれていた自然の中を走るバスをモチーフにし、さらに曲がりくねった道を抜けて、虹のかかる高台までやってきたバスが描かれています。まさにこのパッケージの絵が示す通り、『5×10』にも収録されていたビデオクリップを含む形で、嵐20年分のビデオクリップが一気にまるごと楽しめる内容となっています。

 私も本作を通じて、63本のビデオクリップすべてを一気に鑑賞しました。朝の10時頃に「A・RA・SHI」から観はじめて、収録最新曲「君のうた」にたどり着く頃には時計が15時を示していました。Blu-ray本編ディスクだけで時間にして289分、初回特典ディスクを含むと327分に及びます。『5×10』も幾度となく鑑賞し、シングルやアルバムが発売されるたびに初回盤付録ビデオクリップも合わせて観てきた私にとっては、今作『5×20』収録のビデオクリップはどれも馴染みのあるものばかりです。しかし、20年分のビデオクリップを改めて順に1つ1つ観てみると、さまざまな喜びや発見がありました。自分でも驚くほど新鮮な気持ちで、時の経過を忘れる5時間余でした。

 鑑賞する中で、私自身の気持ちが高揚するポイントがいくつもありました。発売元がJ Stormに変わり、MVの演出も個人の魅力が大きくクローズアップされたことに気づいた「a Day in Our Life」。そして、あれだけ何度も、それこそ今ならYouTubeでも観たはずなのに、あの淡いパステルカラーのショーウィンドウとキラキラしたイントロが流れて来た瞬間に、愚直に心がときめいたことに驚いた「Love so sweet」。

 今作『5×20』から収録されている「Everything」に到達したとき、まだ31曲目で、実は全63本の半分にも達していないということに気づき、ここからの10年が本当に長かったんだな、と気づいたこと。「Monster」「ワイルド アット ハート」「Breathless」あたりの多種多様な曲を通じて、歌やダンスで1フレーズ1シーンの印象を残すことで、世の中のあらゆる雰囲気を映画やドラマや歌番組やバラエティで嵐は作ってきたんだな、と感じたこと。「誰も知らない」や「Sakura」のように、映像のハイレゾリューション化とともに、色彩鮮やかな演出が増え、ビデオクリップの楽しみがまた一段上がったこと。「愛を叫べ」や「夏疾風」には一般の方がビデオクリップに出ており、“国民的アイドル”と言われるようになってからこういうシチュエーションが本当に増えたな、そういえば『NHK紅白歌合戦』(NHK総合)で重要な役割を担うようになったのもこの10年だな、と考えが巡ったこと。

 「GUTS!」を観て、『弱くても勝てます ~青志先生とへっぽこ高校球児の野望~』(日本テレビ系/二宮和也主演のドラマ)からもう5年が経つんだなあ、とか。「I seek」を観て、『世界一難しい恋』(日本テレビ系/大野智主演のドラマ)の恋模様がかわいかったなあ、とか。「Daylight」を観て、『99.9 -刑事専門弁護士-』(TBS系/松本潤主演のドラマ)の松潤のビジュアルが大好きだったなあ、とか。こんなに自分はドラマに思い出があるんだなあ、とか。ああ、そういえば当時は何となく観ていた『木更津キャッツアイ』シリーズも『花より男子』シリーズも『山田太郎ものがたり』(すべてTBS系)も、嵐を好きになってから見返して、それから「a Day in Our Life」も「Love so sweet」も「Happiness」もコンサートで観て、もっともっと嵐を好きになっていったなあ、とか。

 ファンでなくても、嵐の楽曲を何かしらで聞いたことのある方は、きっと多いでしょう。そんな方々それぞれにとっても、この『5×20』のビデオクリップ63本のどこかに、おそらく気持ちが高揚するポイントがあるはずです。それは、嵐そのものに対する思い出かもしれないし、その頃の自分自身の思い出かもしれません。ビデオクリップ63本を順に眺めるということは、自分と嵐の歴史を振り返る行為でもあります。その中で、ふと湧き上がる感情や思い出、頭をよぎるシーンが、人それぞれの嵐の歴史を物語ります。好きなビデオクリップをかいつまんで鑑賞するのももちろん楽しいですが、本作を通じて嵐との関わりを振り返ることで、20年という年月を絵巻物を広げるように見つめることができます。20年間コンスタントに作品を作り続けた嵐だからこそ、どのタイミングで好きになったにも関わらずできる楽しみ方です。

 改めて思えば、20年というのは実に長い年月だと思うのです。生まれた子供は成人します。卒業して入社した新人の多くが管理職になってもおかしくありません。私個人に当てはめてみると、1999年、嵐のデビューと同じ年に結婚した私は、嵐と同じく今年結婚20周年を迎えました。1999年生まれの赤ちゃんが20年を経て成人として社会に巣立つように、1999年入社の右も左もわからなかった新人が20年を経て会社を支える存在になるように、1999年に結婚して初めて知るお互いに驚いていた夫婦が20年を経て多くの生活習慣や価値観を共有するように、1999年にデビューした嵐は、誰よりも濃密な20年を経て、“国民的アイドル”と呼ばれるまでに至りました。

 『5×20』を再生し、最初に流れてきた「A・RA・SHI」を改めて観たとき、ふと印象に残ったのは、嵐5人のまだ余裕のない表情とがむしゃらに踊る姿でした。華々しかったものの、まだ何者でもなかった、そう感じました。それが、5時間かけて再生し終えた頃には、歌とダンスで人の心を躍らせ、私たちの多くの場面に関わり、すっかり威風堂々とした嵐になっていました。今や日本社会にとってこれだけ巨大な存在となった嵐ですが、『5×20』に収録された20年分のアウトプットを振り返ることは、なぜ嵐は国民的アイドルに至ったのか、ある意味その答え合わせとも言えます。

 20年という年月で、多くの人がさまざまな成長をします。嵐はその20年で、唯一無二の存在となりました。『5×20』に収録された5時間に及ぶビデオクリップの数々は、その軌跡であり証です。1回通して観たくらいでは到底紐解けない、それは膨大な証明です。

 来年2020年12月31日には、嵐は活動を休止します。しかし『5×20』を通じて、自分と嵐との関わりを振り返るだけでなく、嵐自身を振り返り探索することで、私たちは壮大な答え合わせをするという尽きない楽しみを得ました。振り返りと答え合わせによって、この先もずっと嵐は私たちの中に存在するのです。本作は、純粋に20年分のビデオクリップを余すところなく収録した作品です。しかしその作品の意味は、嵐がファンとともに、そして日本の社会とともに歩んできた20年の歴史と相まって、単なるビデオクリップ集以上の意味を持つ、そう私は考えます。

 『5×20』を通じて、その関わりの多少を問わず、嵐という存在が多くの方にとって、想像以上に身近な存在であったと感じるはずです。ぜひ一度『5×20』をご覧いただき、皆様の20年を、嵐の20年を、振り返っていただきたいです。(ジャニヲタおじさん)

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