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石崎ひゅーい、新曲「Flowers」&菅田将暉への提供曲「虹」から感じる生々しい情感 愛と信頼によって仲間を増やす“人間力”

リアルサウンド

20/11/25(水) 12:00

「基本的に、石崎ひゅーい好きに悪い人はいないので」

 以前、菅田将暉にインタビューしたときに、彼がそんなことを言っていたのをよく覚えている。あいみょんと初めて出会って意気投合したきっかけが、「俺の方が好き」「私の方が好き」と主張しあって討論になるくらい石崎ひゅーいに惚れ込んでいるという共通点があったことだという。とても素敵なエピソードだと思う。

 そして、これまで様々な作品を共にしてきた映画監督の松居大悟、共演やコラボも多いクリープハイプの尾崎世界観や小山田壮平など親交の深いクリエイターやアーティストのパーソナリティを並べていくと、菅田将暉の言った「石崎ひゅーい好きに悪い人はいない」という意味、ジャンルやスタイルという表層的な部分ではないところでそれらの面々と通じ合っている石崎ひゅーいの音楽の持つ魅力が浮かび上がってくるように思う。

 それは、歌っていることに嘘がない、ということ。着飾ったり、とりつくろったりしない、生々しい人間性そのものが歌声の響きから放たれる。だからサウンドの幅は広くとも、その核の部分には切実な情感が宿る。

 そしてもう一つは、だからこそ、ドラマや映画の物語と深い部分で噛み合い相乗効果の“熱”を生み出す、ということ。フィクションであっても、そこを通して作家や脚本家や映画監督が描き出そうとした人間のやるせなさや愛しさや無様さや、さまざまな感情とシンクロする。なんなら、石崎ひゅーいの佇まい自体にそういう風情も醸し出されている。

 2012年7月にミニアルバム『第三惑星交響曲』でメジャーデビューを果たしてから8年。シンガーソングライターとして着実にキャリアを重ねつつ、作曲家として、俳優としても結果を残してきた。バイオグラフィだけ見れば「マルチに活躍」と言っていい経歴なのだけれど、器用な才覚という感じはあまりしない。むしろ、そうやって愛と信頼によって周囲に仲間が増えていった石崎ひゅーいの“人間力”のようなものを、改めて感じる。

 11月24日には、新曲「Flowers」が配信リリースされる。

石崎ひゅーい – Flowers

 映画『アンダードッグ』主題歌として書き下ろされたこの曲。森山未來主演、武正晴監督で11月27日に前後編同時公開されるこの映画は、ボクシングをモチーフにした物語だ。

 過去の栄光が忘れられず、スター候補生の練習相手に成り下がっても“かませ犬”としてリングに立ち続けている末永晃(森山未來)。天才として将来を嘱望されながらも過去に傷を抱える大村龍太(北村匠海)。大物俳優の二世タレントとして痛々しいギャグを連発しバラエティ番組の企画のためにボクシングをすることとなった宮木瞬(勝地涼)。登場する3人のボクサーは、それぞれの事情にがんじがらめになった負け犬(=アンダードッグ)たちだ。

 フレーズを畳み掛けるようなアグレッシブな曲調に乗せ〈わずかにくすぶる火花を あきらめきれずに握りしめたまま 焦げ付いた思い出たちを 振りほどくように歩いていく〉や〈いつか僕ら それぞれの咲き方で 誇らしく散れるなら それでいいと思った それがすべてだと思った〉といったフレーズを歌うこの曲。決して諦めない男たちの生き様を描いた映画に寄り添いつつ、石崎ひゅーいらしいひたむきさを感じさせるエモーショナルなナンバーだ。

 そして、11月25日には石崎ひゅーいが作詞作曲を手掛けた菅田将暉の新曲「虹」がリリースされる。映画『STAND BY ME ドラえもん 2』の主題歌だ。

 冒頭にも書いたとおり、菅田将暉と石崎ひゅーいは公私ともに交友関係にある仲だ。菅田将暉の代表曲「さよならエレジー」でもタッグを組み、今年8月に公開された映画『糸』では映画での初共演も実現し、両者は中島みゆきの「糸」をカバーもした。

 「虹」は昨年の夏に「ウエディングソングを作ってほしい」というオファーを受けた石崎ひゅーいが、試行錯誤を繰り返し約1年かけて完成した楽曲だという。石崎ひゅーいのウエディングソングと言えば、「花瓶の花」という曲もある。とても大事な曲だ。だからこそ「虹」は難産だったはずだろう。それでも菅田将暉の情熱的な歌声がとても映える、ゆったりとしたテンポと半径の大きなメロディを持ったバラードに仕上がっている。〈きつく結んだ目がほどけないように かたくつないだ手を離さないから〉というフレーズを高らかに歌い上げる、真っ直ぐにドラマティックな一曲だ。

 どちらの曲を聴いても、石崎ひゅーいの歌が持っている生々しい情感を感じる。聴き手を奮い立たせるような“熱”を持った「Flowers」。包み込むような優しさを持った「虹」。長い射程を持って、多くの人に共振していくような予感がする。

■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」Twitter

■リリース情報
「Flowers」
配信中
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