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海外映画取材といえばこの人! 渡辺麻紀が見た聞いた! ハリウッド アノ人のホントの顔

アン・ハサウェイ

連載

第43回

20/11/25(水)

── 今回はアン・ハサウェイです。ロバート・ゼメキスが監督で、彼女が邪悪な魔女に扮した『魔女がいっぱい』が公開されます。

『魔女がいっぱい』 12月4日(金)より公開

渡辺 原作であるロアルド・ダールの児童書『魔女がいっぱい』は一度、ニコラス・ローグ監督&ジン・ヘンソンによるキャラクターで実写化(『ジム・ヘンソンのウィッチズ/大魔女をやっつけろ!』(90))されているんですが、それよりもこっちの方が強烈だし原作に近い。

さすがゼメキスなので、魔女の描写が原作より過激なくらい。子供は泣いちゃうんじゃないのって感じです。昼間が舞台になっているので大丈夫ですが、もし夜だったらホラー映画ですよ。そういう意味では大人の方が楽しめるんじゃないでしょうか。ゼメキスの皮肉とダールの辛口は結構、相性がいいんじゃないかと。

── なるほど。彼女はどんな役なんですか?

渡辺 アンは子供ぎらいのボス魔女を演じていて、美人女優としては捨て身的なビジュアルの連続です。その姿は3本のカギ爪、つま先のない足、スキンヘッド、ギザギザの歯、匂いを嗅ぐとき大きく開く鼻孔……美人女優的にはかなりチャレンジングなビジュアルなんですよ。

本人はとても気に入っていて、楽しんで演じたというコメントを出しているようですが、私はちょっと痛々しい感じがしました。おそらく、彼女のキャリアがオスカーを頂点に下降線を描いているように感じるからかもしれません。

── 『レ・ミゼラブル』(12)でアカデミー助演女優賞を獲得しましたね。

渡辺 その来日のときに会っているんですが、インタビューの前に彼女のパブリシストが、アンの撮影はワンポーズでやりなさいみたいなことを言うんです。つまり、座ったらそのまま、立っていたらそのままでポーズを変えないということ。だから撮影時間も1分ももらえず「はい、ストップ!」でしたね。

── そういうこと、あるんですか?

渡辺 私はあまり女優さんの単独インタビューの経験がないので、よく分からないんですけど、ないことはないでしょうね。私の印象では、インタビューはせっかちな感じでした。早く喋って早く終わらせたいのかなーって(笑)。とはいえ、テキトーに答えているわけではないです。

『レ・ミゼラブル』の彼女の出演時間は確か30分もないんですよ。にもかかわらず強烈な印象を残したのは、『夢やぶれて』を歌い上げるシーンのせい。この歌はオーディション時の課題になっていたのでみんなの前で歌ったというんです。

「オーディションではファンテーヌが逮捕されるシーン、彼女が死ぬシーン、そして『夢やぶれて』を歌い上げるシーンをやったわ。通常のオーディションよりも遥かに時間が長いんだけど、『夢やぶれて』を歌ったら監督のトム(・フーパー)が泣いたの。そして“この曲で初めて泣いたよ”と言ってくれた。これは最高の手応えだったわね」って。

髪をばっさり切ってファンテーヌを熱演した『レ・ミゼラブル』のアン・ハサウェイ。間違いなく飛躍の作品にはなったが……。

── あのシーンは映画のハイライトのひとつでしたからね。

渡辺 そういう人もいますよね。『レ・ミゼラブル』の撮影で話題になったのは、後で声を当てるのではなく同録したことでした。これはミュージカル映画としては初の試みで、役者自分の実力で勝負しないといけなかったんです。普通だと、ポストプロダクションのときに声のよく出ている部分だけをつなげ合わせることもできるけど、同録ではできませんからね。

これについては「最初は戸惑ったけど、シェイクスピアの詩編を朗読している感じに似ていることに気づいて、ちょっと落ち着いたの」と言っていました。彼女の名前はシェイクスピアの奥さん(アン・ハサウェイ)から取られているせいかなっと。

さらに「私はテイクを数えないの。“もう20テイクか”なんて感じちゃって、一気に気分がネガティブになっちゃうから」とも言っていましたね。確かにそうですよね。

── オスカーを獲得した後、“アン・ヘイター”なんて言葉をよく耳にしました。

渡辺 あの頃、すっごく嫌われてましたよね。理由は諸説あるようですが、私も来日したときのウワサ話をいろいろ聞いていて、濡れ衣だとは思わなかった。

『レ・ミゼラブル』でアカデミー賞助演女優賞を受賞したものの、演技がオスカーを狙いすぎだの、授賞式で着たドレスのバストトップが透けてるだの、受賞スピーチがわざとらしいだの、特大のヘイトを集めてしまうことに。

── どんなウワサですか?

渡辺 某映画で来日したとき、ひとつのインタビューが終わる度に当時の恋人に電話をしていたので時間が押しまくり、結局、本人がもう疲れちゃったと言って、ずっと待っていた媒体さんを無視して部屋に戻ってしまったというんです。

(ベネディクト・)カンバーバッチのときも、彼のお喋りのせいで押しまくったんですが、2時間押しでもきっちりやってくれましたからね。ジョニー(・デップ)も本人の遅刻のせいで押しまくるんですが、ちゃんとやってくれる。しかも「お待たせして申し訳ない」と謝ってやってくれます。それに比べるとアンちゃんはかなりワガママですよ。映画宣伝マンは泣いたでしょうね。

── 確かに!

渡辺 そういう邪悪さって、みんな感じ取るのかなーって思いますよね。

私が彼女に初めてインタビューしたのは『アリス・イン・ワンダーランド』(10)だったんですが、監督のティム・バートンのことを褒めまくるんです。

「私は今、マスターと仕事をしているんだと思うとドキドキした」とか「ティムのこの映画に出られるんだったらキノコの役でもいいと思った」とか「ティムのワンダーランドは、私の想像を超えるワンダーランドだった」とか、誉め言葉を並べていましたが、どうも嘘っぽい(笑)。ウワサ話を聞いた後だったので、そういう色眼鏡で見ちゃったのかもしれないですが、なぜか邪悪さが漂っている。

ちなみにティムくんの映画で一番好きなのは『ビートルジュース』(88)と『アリス・イン・ワンダーランド』だそうです。『ビートルジュース』は素晴らしいけど『アリス…』はダメですよね(笑)。

『アリス・イン・ワンダーランド』1作めの際に“マスター”ことティム・バートンと。2016年の続編にも同じ白の女王役で出演。

── でも『アリス…』は世界中で大ヒットしましたよね。

渡辺 確かに成績は良かった。ワールドワイドでは10億ドルを超えてティム映画では最高のヒット作になったと記憶しています。このとき、アンはこんなことも言っていたんです。ティムくんの『バットマン リターンズ』(92)のキャットウーマンについてです。

「キャットウーマンは大好きだし、セリーナ・カイルは最高だと思う。とりわけティムの映画の中では輝いていたわ。演じたミシェル・ファイファーはスクリーン上の最もクールなキャラクターのひとりだと思う」って。

その後、クリストファー・ノーランの『ダークナイト ライジング』(12)で自分もキャットウーマンを演じましたから、このときすでに打診されていたのかもしれない。

── 『ダークナイト ライジング』の彼女、良かったですよね?

渡辺 そうなんです。とても良かった。かっこ良くて、ファイファー版とは異なる正統派のかっこ良さがあった。このときも取材をしていて「アクションをこなすために10カ月のトレーニングをして、本当にキツかった。単に強いだけじゃなく、キャットウーマンらしいスタイルで強さを見せなきゃいけなかったから。でも、屋上のファイトシーンを撮り終わったときは、女優になって一番の幸せを感じた瞬間だった」と熱く語っていました。

『ダークナイト ライジング』でのキャットウーマン姿。全身を締めつけるピッチピチのボンテージスーツでの演技にはかなり苦労したとか。

ノーランは彼女を気に入り、次の『インターステラー』(14)でも起用したんでしょうね。

── ああ、あの彼女も良かったですよ。

渡辺 そう、上手いし実力もある。みんなに気に入ってもらわなくても実力だけでやれる女優さんだと思いますよ。『ブロークバック・マウンテン』(05)や『ラブ&ドラッグ』(10)のときはヌードにもなっていて、脱ぎっぷりもいい。邪悪女優として開き直っちゃえばいいと思うんだけど、本人はネガティブなイメージを払拭したいみたいで、進んでヘンな役をやっている感じです。

自分が製作までした『シンクロナイズドモンスター』(16)は、自分がモンスターとシンクロしちゃう女性役ですからね。捨て身感が漂っていた。

なぜか巨大怪獣と動きがシンクロしてしまう、酒浸りのダメ女を演じた『シンクロナイズドモンスター』。プロデューサーとしても携わったアンは、本作の主人公を「最も自分らしいキャラクター」と語ったとか。

── ハリウッドで干されているわけじゃないんですよね?

渡辺 調べると、新作がズラリと並んでいるので、その点は大丈夫なのではと思います。

私が彼女の言葉の中で、いいなあと思ったのは、「私が毎回、難しい役にチャレンジしているのは、自分はなにもできないと思っているからなの。だからこそ挑戦するしかないのよ」。この言葉はいいなーと思いますよ。

言い換えれば“自分はなにも知らないということを知ること”ですよね。人生に対して前向きであると同時に真摯で、とてもいいと思いました。

こういうことをさらりと言える人は、しっかり生き延びるし、ちゃんとキャリアアップすると思います。アンちゃんには、“嫌われる自分を受け入れろ!”と言ってあげたいです(笑)。

※次回は12/8(火)に掲載予定です。

文:渡辺麻紀
Photo:AFLO
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