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『リモートで殺される』は『あなたの番です』に続く? 中田秀夫×秋元康のタッグが生む恐怖を予想

リアルサウンド

20/7/26(日) 10:00

 新型コロナウイルス感染拡大による“外出自粛”を受けて、ビジネスシーンから飲み会の代替ツールまでまたたく間に浸透したオンラインによるビデオ会議サービス。すでに斎藤工や上田慎一郎など多くのクリエイターたちがこのツールを活用した“リモート製作”による映像作品を発表するなど、その著しいまでの発展具合はここ数年のスマートフォンやYouTubeにも追随するほど。今後も低予算のインディペンデント系作品を中心に、“リモート製作”でのアイデアを絞った作品が続出することだろう。

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 そうしたなかで、『スマホを落としただけなのに』の大ヒットで『リング』直後にも匹敵する再ブレイクを果たした中田秀夫監督が、昨年社会現象を巻き起こした『あなたの番です』(日本テレビ系)を生み出した秋元康と『劇場霊』以来のタッグを組んだドラマ『リモートで殺される』(日本テレビ系)が7月26日に放送される。本田翼、新田真剣佑、前田敦子、齋藤飛鳥ら豪華キャストにも注目が集まっている本作は、こうした“リモート”ツールを駆使した映像作品の可能性をさらに拡げることになるかもしれない。

 物語は緊急事態宣言による自粛期間の最中に、高校時代の同級生6人がリモートで集まることから始まる。その中の1人、藤原太(柄本時生)は、彼らの高校時代の友人である古郡一馬について警察が訪ねてきたことを明かす。それをきっかけに6人は、高校時代に同級生の田村由美子(齋藤飛鳥)が自殺した時から共有してきたある秘密を思い出す。そんな中、古郡の部屋で火事が起きて焼死体が発見されたというニュースが流れる。古郡の消息と由美子の死の真相を追い始めた6人は、やがて連続殺人に巻き込まれていくことに。

 登場人物がパソコンなりスマートフォンなりのカメラの前に座り、ある程度視点が限定された複数の画面がひとつの画面に同時に集約されているのが“リモート”作品の特徴である。従来の映画で使われてきた、異なる場所で同時に起きる出来事を描く際に使われたスプリット・スクリーンの演出にも通じるこの特殊な画面は、“リアルタイム性”を高めるだけでなく、思うように視点が動かないことから生じるそこ知れぬ緊張感と閉塞感を生みだすわけだ。たとえばカメラの前に座った人物の奥に、何か映ってはいけないものが映った時に、他の人々の反応を即座に確認することができる。けれども視点は一定のまま、迫ることもなければ逃げることもできない。『アンフレンデッド』や『Search/サーチ』に代表されるように、視点限定型の画面は、ホラーやサスペンスなどととても相性の良い映像アイデアといえよう。

 とりわけ中田秀夫監督の作品といえば前述した2作品のようにその時代を象徴したツールを用いた時に驚異的な威力を発揮するのは言うまでもない。昨年公開された『貞子』でも動画配信サイトを恐怖の題材に選び、いわゆるホラーの文脈に則った恐怖と、サスペンスの文脈に則った恐怖の両面を巧みに往来させる。今回は“リモート”画面を使った恐怖を描くわけだが、予告映像を見る限りはそれぞれの部屋のシーンや高校時代の回想シーンも織り交ぜられていくようなスタイルが予想でき、どちらかといえばサスペンス寄りの恐怖を思わせるものがある。もちろんリモート画面と通常撮影による画面との使い分けがひとつのカギとなるのであろうが、そこにある種の“謎解き”的要素が加味されれば、まさに『あなたの番です』のような視聴者体験型の推理ドラマとして成立するはずだ。

 また、共有した“秘密”をきっかけにした恐怖体験というプロットの枠組み自体は、90年代に流行したアメリカの青春ホラー作品『ラストサマー』以降幾度となく使われてきたものであるが、近年ではすっかり日本の青春ミステリーにも定着しつつある。見せ方や語り口ひとつで、ミステリーからホラー、ひいてはシンプルな青春ドラマまで、あらゆるテイストに変容させることができるメリットを有しており、例えば『暗黒少女』では集まった登場人物たちの弱みや人間性までもが露わになる、ある種サイコサスペンス的な空気にまで広がりを見せた。他にも昨年人気を集めたテレビドラマ『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ系)も類似したプロット枠を持っている作品として挙げられるだろう。

 そして最大のポイントは、常に画面に映り続ける少ない登場人物たちの些細な表情の変化や仕草などが、物語を読み解くカギになるということだ。リモートで会話を繰り広げる6人は、本田と新田、前田、柄本、そして前野朋哉に早乙女太一。特殊な画面の中だからこそ、彼らの演技が極めて重要なものとなることは間違いない。とくに動きの激しいアクション作品で魅力を発揮してきた早乙女が、この限られたフレームの中でどんな演技を見せてくれるのかは注目しておきたいところだ。 (文=久保田和馬)

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