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欅坂46、2度目の「不協和音」から感じた異常なほどの熱量 『紅白』パフォーマンスを振り返る

リアルサウンド

20/1/3(金) 8:00

 イントロで力強く右の拳を突き出した平手友梨奈。夏頃に負傷した右肘は完全に回復しているようだ。すぐにカメラは彼女の顔にフォーカスするが、髪で顔面が隠れているため表情が確認できない。と思いきや、次の瞬間に勢いよく前を向き、鋭い眼光を覗かせると、リズムに合わせて体を小刻みに揺らし始めた。

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 12月31日放送の『第70回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)にて欅坂46が披露した「不協和音」のパフォーマンスを見た。2年前に同曲を披露した時とはカメラワークが変わっている。2年前のイントロはもっと、メンバーの顔など確認できないような高い位置から映していた。2度目の「不協和音」ということで、どうしても視聴者には前回の出来事がよぎる。しかし、今年の欅坂46はひと味違うな、そう思わせる何かがあの表情にはあった。この2年間に様々のことを経験したことで、いわゆる”鋭い目”にも深みを感じる。獲物を狙う目なんてよく言われるが、筆者にはあの目が、これまでグループに向けられたすべての悪意に立ち向かう目に見えた。

 真っ赤に染め上がった衣装は攻撃的な印象を与える。だから、激しい曲がより激しく聞こえ、強い歌詞がより強く見えた。歌い始めたのはなんと2番の歌詞から。〈軍門に下る〉、〈理不尽〉、〈ねじ伏せられた怒り〉など、ポップミュージックではほとんど使われないような言葉がずらりと並ぶ。前回は時間の都合上カットした2番だが、今回は逆に1番をカット。そうすることで前回の続きのような構成を見せたのだ。

 緊張感の漂う状況で、不安を振り払うような田村保乃の〈僕は嫌だ〉が決まれば、今にも泣きそうな平手の〈僕は嫌だ〉も会場に大きく響き渡る。直後のホワイトアウトで画面が切り替わった後、ステージ上手側から下手へと至近距離で舐めていったカメラワークは、舞台上で繰り広げられるダンスの激しさをよく伝えていた(ここも前回は俯瞰映像だった)。はずれたイヤーモニターにも構わず踊り狂うセンター平手、必死に食らい付く2期生、一糸乱れぬ1期生、そしてラストに見せた平手の不敵な笑み……。画面から伝わる臨場感と異常なほどの熱量は、前回を軽く超えていただろう。

 それにしても濃い年末だった。デビュー以来、かつてこんなに濃い期間があっただろうか。11月の『ベストヒット歌謡祭2019』(日本テレビ系)に始まり、『ベストアーティスト2019』(日本テレビ系)と続き、12月に入ってからは『2019 FNS歌謡祭』(フジテレビ系)、『CDTVスペシャル!クリスマス音楽祭2019』(TBS系)、『MUSIC STATION ウルトラSUPERLIVE 2019』(テレビ朝日系)、『MelodiX! Plemium 年末スペシャル』(テレビ東京)、『日本レコード大賞』(TBS系)、そして最後は『NHK紅白歌合戦』……と地上波各局の音楽特番を総ざらい。しかも代表曲や新曲を繰り返し披露するわけでなく、まるでライブ終盤のセットリストを一歩ずつ進んでいくかのような流れ。さらにその間には国内最大の年越しフェス『COUNTDOWN JAPAN 19/20』にも出演し、まさに全速力で駆け抜けた怒涛の年末と言ってよいだろう。

 そんななかで挑戦した今回の「不協和音」は、その怒涛の年末を締めくくるに相応しいものだった。メンバーにフォーカスしたカメラワーク、色を反転させて攻撃的に見せた衣装、2番から始めたことで前回の続きのように見せた構成など、些細と思われがちな演出上の改変が効果的に機能していた。そして何よりも、そうしたアツい演出に負けないメンバーたちの気迫があった。どれだけ”見せる側”が意気込んでも、実際にステージに立つ本人たちのモチベーションと噛み合わなければ意味がない。

 パフォーマンスを終え、最後に「ありがとうございました」と呟く平手と、彼女の頭をメンバーが撫でるように優しく叩く様子が映ったとき、ある意味で今回の「不協和音」は、不協和音のその先にある”調和”を見せてくれたのだとしみじみ納得したのだった。(荻原梓)

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