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嵐、『Reborn Vol.1』に感じる未来への希望 今の5人だからこそ歌える生まれ変わった3曲

リアルサウンド

20/3/8(日) 6:00

 ‪今年いっぱいで活動を休止する嵐だが、彼らの勢いはまだまだ止まるところを知らないようだ。2月24日に突如発表されたデジタルEP『Reborn Vol.1』の配信。‬‪年始に先行配信され、大きな話題を呼んだ「A-RA-SHI:Reborn」に加え、「a Day in Our Life:Reborn」、「One Love:Reborn」も収録されている。実際に本作を聴いてみると、「A-RA-SHI:Reborn」はもちろんのこと、それぞれ今の嵐に合わせたアップデートが重ねられ文字通り「生まれ変わって」いる。‬‪Rebornという名前にふさわしく、新しく生まれ直す嵐、未来への希望が感じられる楽曲へと進化しているのだ。‬‪

(関連:嵐 大野智の歌声の特徴は? 「two」「Hung up on」……ソロ楽曲からみえるボーカリストとしての魅力

■A・RA・SHI‬ / A-RA-SHI:Reborn

 元々原曲の「A・RA・SHI」には目立ったパート割りはなく、ラップは櫻井翔、メインパートの要所要所で大野智のソロ、そのほか基本は全員で歌唱するという構成だ。これは、アイドルとしての王道であるともいえるだろう。‬

 ‪しかし、「Reborn」バージョンではソロパートを繋いでいく構成となり、それが逆に「一人一人全員が主役」である印象を持たせている。パートごとにメンバーの顔が浮かぶような、原曲とはまた別の意味で「全員で歌う」曲に生まれ変わった。

 櫻井のラップは原曲でもほとんどソロパート扱いだったため、特に成長が感じられる。原曲で溢れ出る少年感、まだヤンチャでフレッシュな歌声から一変、王者の風格を持った大人のRAPへとしっかりステップアップしているのだ。その他のメンバーもそれぞれ個性を確立。各人の持ち味が代わる代わるに味わえる贅沢な編成となっており、20年の月日を噛み締めて聴くのも良いだろう。‬

 メロディも大きなアレンジが加えられている。原曲は緩急のついたアグレッシブな楽曲で、多様なジャンルの要素が混ざり合っていた。一方、「Reborn」バージョンでは全体的に音のレイヤーが増えて華やかさを増しつつも統一感が与えられている。こうすることで、より5人が1つになった結束感が窺えるのだ。

 歌詞にも大きく改変が加えられている。なかでも特に大きな意識の変遷がみられるのがサビのラストだ。‬原曲では‬‪〈A・RA・SHI, A・RA・SHI for dream〉と結ばれる歌詞が、「Reborn」バージョンでは‬〈A-RA-SHI, A-RA-SHI ‬My dream〉‪に。

 ‬‪デビュー当時は「夢の為に嵐を巻き起こせ」だったものが、今では「“嵐”は俺たちの夢」と変わっていったのだろうか。‪かつては形容詞として(あるいは比喩として)、その言葉通りの意味として使われていた「嵐」が、20年の時を経て自分達自身を表す単語としての「嵐」へと意味合いを変えていったようにも感じとれる。‬

 さらに、‪その直前には‬‪原曲での〈巻き起こせ〉を〈You are the wind〉と再翻訳しているのだ。‬‪直訳するならば「君たちは風」である。‬

 この「君」は素直に受け取れば、嵐から私たちファンに向けての「君」であるともとれるし、あるいは嵐自身からメンバーに向けたともとれる。逆に私たちから見た「嵐」に向けてとも受け取れる。‬

 ‪「風」が吹くから「嵐」が起きる。‬

 ‪つまり「君」がいるから「俺たち“嵐”」がいる、というメッセージが込められているのではないか、と勝手に推測しては心躍ってしまう。‬だとしたら、‪なんと熱烈なファンサービスだろうか。‬常日頃からファンを思いやるメッセージを発信してくれている嵐らしい“Reborn”である。‬

■a Day in Our Life / a Day in Our Life:Reborn

 メロディにおいて、一番大きいギャップがあったのはこの曲ではないだろうか。

 少しワルそうなところがカッコいいヒップホップな原曲から一転、「Reborn」バージョンではキラキラと光が満ち、アップテンポなポップスに変わっている。イントロからすでに元の曲を思い出せないほどのアレンジが加えられていて、かなり新鮮だ。

 さらに、幻想的な電子音のイントロから間をおくことなく、松本・大野のメロディ隊から始まることにもなかなかの衝撃を受けた。というのももともとこの楽曲は「ラップ」に主軸を置いた楽曲であり、嵐で「ラップ」といえば「櫻井」だろう。松本・大野は原曲でもメロディパートを担当していたが、どちらかといえばコーラス的な役割だった。また、原曲のタイアップが櫻井出演の『木更津キャッツアイ』シリーズ(TBS系)であることから、ファンにも「櫻井メインの楽曲だ」という意識が染み付いているように思う。その強く染みついたイメージを、イントロから蹴破ってきたのだ。

 その一方「櫻井がこの歌の立役者である」という旨味は尊重され生かされている。櫻井のラップパートでは、他のメンバーがラップのハモリやメロディ部分を交互に声を重ねて歌い上げ、櫻井ラップの魅力を引き出している。。「A-RA-SHI:Reborn」とは対照的に、ソロパートの旨みよりも混ざり合うハーモニーの美しさが際立っている印象だ。「櫻井メインの曲」というイメージから「5人で歌い継いできた曲」へと生まれ変わっており、グループとしての歴史と絆を感じられた。

 また「a Day in Our Life」も「A-RA-SHI:Reborn」と同様に原曲の日本語詞が大幅に英詞へと改変されている。ふと改めて原曲のクレジットを見返して気づいたが、当時はまだ“Sho Sakurai”の名前はない。この歌は彼がリリックに挑戦する前の歌なのだ(つまり今となってはお馴染みの原曲の冒頭にある〈A to da R A S H I〉というリリックは、当時は完全に櫻井のアドリブだったのだろう)。それが、「Reborn」バージョンではクレジットに名前が入り、正式な歌詞として採用されているのも感慨深い。

 かと思えば、大幅に改変された英詞を読み解くとどこか切ない哀愁の様なものが垣間見える。過ぎ去りし美しい思い出、砂の城のような君。一区切りが来る未来から目を背けて、過去の美しい思い出に浸っているようにさえ感じられる。だからこそ結びの歌詞が力強く響く。

〈Yeah, we will see each other again〉

 「きっといつかまた逢えるさ」、意訳するとそんなところだろうか。このフレーズで、ファンの間では屈指の名曲「Still…」を思い浮かべた人も多いだろう。

 「いつか笑ってまた再会 そう絶対」

 そんな風に語りかけてくれている気さえしてくる。

■One Love / One Love:Reborn

 先の2曲がメロディ的には明るく華やかなアップデートを積んだのに対して、こちらは逆にしっとりと落ち着いた一曲に生まれ変わったのが印象的だ。原曲は演奏隊も華やかで祝福に満ちた色とりどりの音が溢れているが、Rebornバージョンではあえてメロディをシンプルに、クリアにすることでメンバーの歌声をくっきりと浮かび上がらせている。ソロパートも多く、 3曲の中で最もメンバー一人一人の歌声が堪能できる曲と言えるかもしれない。

 また、先述した2曲が改変された英詞にメッセージ性を強く持たせているのに対して、“残した”日本語詞のチョイスにセンスが光る。

〈泣いた季節を 越えた僕らは/今とても輝いてるよ〉
〈すれ違いに傷ついた夜/それでもここまできたんだ〉

 まさに、苦悩を重ねてそれでも歩いてきた、嵐の軌跡に重なって響いてくる。

〈それぞれ描く/幸せのかたちは重なり/ 今 大きな愛になる〉
〈かけがえのない/出逢いは奇跡を繋いでく〉

 それでも、彼らは自分たちの絆を信じている。彼らの決断は愛になり、きっと奇跡を繋いでいく……そう思わせるフレーズが、今だからこそ改めて胸に強く響く。

 原曲は、松本の出世作『花より男子』(TBS系)の劇場版にあてられたラブソングだが、歌詞中で歌われている「大きな愛」はドラマの中の二人だけではなく、男女間の恋愛をも超えて、メンバー間の信頼や親愛、あるいはファンとメンバーとの愛情にも置き換えて聴くことができる。「Reborn」バージョンで、またこの曲の味わいが深まるだろう。

 もちろんこちらも、英詞部分にもにくい演出が詰まっている。特に震えてしまうのはラスサビに向けての流れだ。

〈I’ll be yours/Promise Yes, I do〉
(意訳するならば「僕は君のものだ、約束するよ、絶対に」となるだろうか)

 に続いて、大野以外のメンバーが一人ずつ

〈Yes, I do〉

 と「約束」を誓うように歌っていく。

 あれ? と思う間もなくそのままラスサビに入るのだが、大野は一人でコーラスを担当しており、他の4人のメンバーがメインパートを歌い上げる。そして最後に、ゆっくりと噛み締めるように、大野が〈Yes, I do〉と2回繰り返す。

 まるで4人が大野へ呼びかけ、それにしっかりとうなずき返す大野かのような構造は、メンバーの固い絆を感じざるを得ない。さらに、この曲中に「約束」はもう一箇所出てくる。

 原曲から引き継がれ、据え置かれた〈同じ明日約束しよう〉という日本語詞だ。改変された英詞の〈Promise〉は明らかにこの箇所を意識してのものだろう。加えてこの歌がウェディングソングとしてよく使われていることを鑑みると、まるで嵐からファンへの「誓いの言葉」のようにも聞こえてくる。

「同じ明日約束しよう」
「ここに誓います」

 そんな風に。

 たった3曲でもここまでのボリューム、進化、そして再生(Reborn)。このEPタイトルに“vol.1”とついているのが頼もしくて仕方ない。まだ告知さえされていないvol.2、3、それ以降に思いを馳せずにはいられないだろう。(佐久良夏生)

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